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インカメ越しのネット世界

2017.01.31 公開 ポスト

2017年、女子の「カワイイ」にまつわる戦略についてりょかち

「カワイイ」は女の必殺技だ。

だからソレには飛距離がある。

私は男女問わないドルヲタで、幅広くアイドルをYouTubeで見ては幸せな気分になるのが作業中の癒しのひとときだが、アイドルたちを見ていると本当にそう思う。

例えば「遠距離戦に強い"カワイイ"」について。これはいわゆる、"スタイルがいい(モデル体型・巨乳とか)"、"明らかに顔がカワイイ(万人受けする顔)"みたいなことを言っている。アイドルであれば、TVで見かけたら一発でカワイくて目に留めてしまう子がいるし、あるいは一般女子で言うならば街中や会社や学校内を歩いているだけで目立ってしまう、みたいな友人がみんな一人はいるのではないだろうか。こういう人たちは、遠くにいる、ほぼ接触のない人に対しても「カワイイ」で攻撃することが出来る。

一方「近距離戦に強い"カワイイ"」について。これは一般人の例がわかりやすいかもしれない。別に容姿が優れているわけじゃないんだけど、一緒にいて楽しい、安心する、みたいな女の子のことを言っている。そういう人は、仕草がカワイかったり、言動がカワイかったりするものである。アイドルで言うならば、昔であればLIVEだけで見せる素の表情や何曲も連続して一生懸命踊ったり歌ったりする姿がぐっとくる子のことを言うのかもしれない。さらに言うならば「超近距離」を取り入れたのがAKB48で、握手会で"神対応"することで人気をあげた柏木由紀なんかは、"近距離カワイイ"のプロではないかと思う。こういう人たちは、自分に接触のあった人に対して、「カワイイいなあ」と思わせる何かを持っている。

2016年年末に見た、セルフプロデュース「カワイイ」の快挙

アイドルの話題が続くが、2016年年末の紅白歌合戦で、AKBが「1人1票」がルールの人気ランキングを放送中に発表して話題になった。そして、1位になった山本彩に続き上位に食い込んだのが、同じくNMB48の吉田朱里だった。彼女はいわゆるYouTuberで、「アカリンの女子力動画」と称して、メイクやヘアアレンジなどの動画を定期的に配信している。

今や、アイドルもSNSをうまく活用してコミュニケーションをとる時代である。新たなSNSが登場する度、一般人と同様に、アイドルとファンの新たなコミュニケーションも生まれた。古くは「ブログ」や「メルマガ」から、「ぐぐたす」と呼ばれたGoogle+、最近はSHOWROOMなんかの動画SNSもアイドルの使用が活発だ。

SNSで可能になった自由度の高い「カワイイ」戦略

アイドルにとってのSNSは、「球数・飛距離ともに調整可能な"カワイイ"量産システム」だと思う。

「球数」というのはもちろん、「カワイイ」を発信する数である。昔のアイドルなら、マスメディアに出るまでが大変だったと想像する。限られた打席で、多くの人に自分の存在をPRせねばならなかっただろう。SNSを活用するなら、アカウントを作るのもいつだって可能。発信だっていつだって可能だ。先述の吉田朱里は、2015年6月にブログで「本気でシングルセンター目指す」と語り、「チャンスは自分で作らなきゃ」と語った。今はアイドルでさえ、直接私たちに「カワイイ」を届けられる時代。チャンスは自分で無限に作り出すことが出来る。

そして、「飛距離」。例えば吉田朱里はYouTubeでメイクの動画を配信しているが、これは"吉田朱里"というキーワード、つまりはコミュニティに「カワイイ」情報を発信するとともに、"YouTubeユーザー"や"メイク好きなユーザー"などそれぞれのコミュニティにも「カワイイ」を届けている。新しいフックを作ることで、飛距離はいくらでも調整出来る。新しいトピックやプラットフォームを開拓する度、そこにいるコミュニティを巻き込んだ発信が出来るのだ。

SNSを利用して、自由に、だがしかし地道に、「カワイイ」を連射する。アイドルにとって、これはあくまで小さな活動に見えるかもしれない。しかし、それらを地道に続けたアイドルが、着々とマスメディアにも見える形で結果を出していることが垣間見えつつある2017年に、私はワクワクする。ここでは割愛するが、「カワイイ」を自らの力だけで発信し続けたアイドルとして「菅本裕子(ゆうこす)」の存在も忘れてはいけない。彼女もYouTubeやSNSを利用して自ら「カワイイ」を発信し、「2017年注目の人」となりつつある。彼女の躍進もまた、SNS時代のアイドルを語る上で欠かせないと思う。

世はSNSという小型武器をアイドルが自ら持つ、まさにSNSアイドル戦国時代だ。「カワイイ」をPRする表現がSNSが生まれる度に更新される。

2017年、一般女子の「カワイイ」戦略論

さて、SNSとともに生まれた新しい「カワイイ」について書いてきたが、これはもちろんアイドルに限った話ではない。サービスの広告なんかもこの考え方にあてはまるかもしれないし、私たち一般人も似たようなものだ。

昔は自分とリアルに出会った人にしか「カワイイ」をアピールできなかった。しかしそれがメールで個人間のやりとりをテキストメッセージで送れるようになり、それが高速化してLINEでchatも出来るようになった。「カワイイ」の表現はどんどんと多様化している。

そして同時にSNSによって、その飛距離も多様化しているのだ。TwitterやInstagram、Snapchatは自分の日常やキャラクターを不特定多数に投稿出来る。皆に見せているように見えて、誰か特定の相手に自分をアピールすることも可能だ。

特にSnapchatはこの情報の「飛距離」を革新したサービスだったかもしれない。不特定多数に送れるstories機能の他に、複数人選んで自分のなんてことない日常を誰かに送るコミュニケーションを発明した。"見せるけど返さなくていい"、"全員じゃないけど、あなただけに送っているわけではない"、"返事を要求しない、ただの日常を誰かに送る"。この不思議な距離感に当初戸惑う人も多かったと思うが、これは新しい飛距離を持つコミュニケーションだったように思う。

アイドルと同じように、私たちも特定の誰かに「カワイイ」を自由な頻度で、自由な飛距離で届けることが出来る。相手がどこにいて、そこまで自分のどんな情報を届けるかは自分次第だ。

繰り返し繰り返しアピールして、相手のHPをじわじわ削っていく戦法をとるか、クリティカルヒットで一発KOを目指すか。私たちの「カワイイ」戦略には無限の可能性がある。

 

【必殺自撮り奥義!:カワイイ自撮りの法則】

「カワイイ」と思われる自撮りを撮るために。目が大きく見える!などのビジュアルは勿論なのですが、同時に必要なのが「ベタなシチュエーション」。

マフラーに顔を埋もれさせる、浴衣姿、振り向きショットなど、ドラマで見るような一瞬が、結局いちばんかわいいのです。(だからこそ鉄板になる)そんな、DNAに埋め込まれた、思わずカワイイと思ってしまうシチュエーションを、うまく活用して自撮りを撮影してみてください。きっとみんなを悶えさせるショットが撮れるはず。

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某IT企業で働きながら、自撮ラー(自撮り女子)としてネットで人気急上昇中の「りょかち」が真面目にネット世界について語ります!

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りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、WEBサービスの企画開発・マーケティングに従事した後、独立。コラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。

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