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インカメ越しのネット世界

2016.11.28 公開 ツイート

私たち「ポストタラレバ娘世代」は、井の中の蛙を卒業して幸せになれるか りょかち

24歳、バリバリ働く女子が集まる食事会で必ず挙がる話題がある。それは「結婚」だ。

大人気漫画「東京タラレバ娘」はアラサーの恋愛がテーマになっている漫画だが、この漫画の影響力は、同じアラサーだけの範囲にとどまらない。私は自分たち(22歳〜28歳くらい)のことを「ポストタラレバ娘世代」と呼んでいて、むしろこの世代への影響力のほうが大きいのではないかとさえ思う。

私たち「ポストタラレバ娘世代」は、"まだ見ぬアラサー"の悲哀に震えに震えまくっている。

「このままアラサーになっても結婚できなかったらどうしよう?」
「結婚したくなったときにはもうイケてる男性は残っていないかもしれない…」
「仕事は楽しいけれど、このまま仕事を楽しんでいいの?本当はもっと恋愛しなきゃダメなのでは?」

後悔している先人たちはいつだって声がでかい。
「本当のイケメンたちはすでに大学時代の恋人と長い付き合いになっているものだ」
「25歳までにいい人に出会っていたほうが良い」
なんてことを無責任に言ってくる。
この間までキャリアのことで頭がいっぱいだったのに? 
バリバリ働く女性があんなにキラキラして見えていたのに?

大学時代に就活が終わり、就職が決まって働き始めたその瞬間から、私たちはまた社会人としての恋愛と慣れない仕事の間で思い悩むのである。

結婚はいわゆるカードゲーム?

結婚は、実に難しいゲームだと思う。今手元にあるカードでいつでもあがれるけれど、次に引くカードが自分にとって1番いいカードになるかもしれない。市場にはもっといいカードがあるかもしれない。隣のあの子はもっといいカードを持っているかもしれない……。

しかし、一方で、次のカードを引くには手元のカードをいくらか捨てなくてはならなくて、そう考えた瞬間に今手元にあるカードが1番いいように思えてくる。

そして、何も選べないまま世の中にあふれるアラサー記事やアラサー漫画を読んで、またもや震えに震えまくるのである。

マッチングアプリで幸せになれるの?

そんな不安が駆り立てるものがあるのか、本当に、本当に、ほんとうに、多くの人がマッチングアプリを使っている。「久々にこんなきれいな人を見た!!」という女性が、居酒屋でマッチングアプリの話をしていたり、いつもおとなしい友人が、「マッチングアプリに使いたいから、可愛い自撮りの撮り方教えて!」と言ってきたこともある。

たくさんの人が登録するマッチングアプリは出会いのハードルを下げている。人生でめったに会えないような高学歴や大企業の男性を、いとも簡単に見つけられてしまうし、あわよくば出会えてしまう。

異性のプロフィールはまさにカードそのもの。ルックス、身長、学歴、年収、勤務先でなんとなくの戦闘力が見える。私たちは、そのレアカードを狙ってLikeしては、運が良ければリアル世界に引き当てようとするのだ。

マッチングアプリは、世の中にはたくさんの男性がいることを教えてくれる。こんなに戦闘力が高い男性が世の中にいたのか! とも思うし、会う前から自分と話が合いそうな人も見つけられる。

一方で、それらの男性と実際にリアル世界で会えたとしても、うまくいかないことも経験する。というか、話を聞く限りそんなことばかりだ。多くの人は、出会いの試行錯誤を高スピードで繰り返す。

とある出会い系アプリに疲れた先輩が「出会うことに疲れた」と言った。これ以上「理想の人っぽい人」にがっかりしたくないし、されたくないと。

世の中に多くの人がいること、そのプロフィールが可視化されていることは私たちを不幸にしているのだろうか。「井の中の蛙大海を知らず」という言葉を用いて、よく蛙に大海を知らせようとする人がいるが、大海を知った後の蛙は幸せになれたの? むしろ何も知らずに井の中にいたほうが幸せだったのでは?

マッチングアプリを使う私たちに必要なのは、"自分に必要なものを見極める力"

先述の出会い系アプリに疲れた先輩は、「出会い系アプリなんてなかったら良かったのに」とも言った。私はなんとなくそれは違うような気がした。井の中の蛙が大海を知り、不幸になってしまったとしても、それは大海のせいではないのだ。

当たり前だがマッチングアプリを通して幸せになった人もいる。その人たちと、マッチングアプリを通してさらに「いつか王子様が」の「いつか」を延長ばかりしている人との違いでなんとなく感じるのは、自分たちのほしいものを知っているかどうかだと、私は思う。

マッチングアプリが一般的になった今、手元のカードをいくらでも更新できるような気持ちになる。市場に出ているカードは、引いても引いてももっといいカードがあるような気持ちがしてくる。

だけど、悪いのは無限にあるカードでは決して無い。豊富にカードがあることはむしろ良いことであるはずだ。いつだって、どのカードを捨てるべきかわからない自分に責任がある。種類の多いカードが引ける現代で私たちに必要なのは、"自分に必要なものを見極める力"なのかもしれない。

さらに、結婚とそのカードゲームの違いを言うならば、「あがったら終わりではないこと」である。強いカードを集めたら勝てるゲームではない。あがるカードを決めるところからすべてが始まる。もっと言うならば、私たちはこのゲームの中では、自分の好きな勝ち方を選べるのだ。

否応なく大海に放り出される私たち「ポストタラレバ娘世代」は、実を言えば「付き合う人を選び放題の世代」なのかもしれない。大海に飲まれて自分を見失い、仕事と恋愛の中で溺れかけた話も女子会では愉快なネタになること間違いなしだが、どうせならば「こないだ釣り上げた最強の魚」の話に花を咲かせたい。

■■■ひとこと自撮り奥義! ■■■

【今日の奥義:スマホはいつも前のめり】

今日はすぐにでも試せる自撮り奥義です。それは「自撮りのときはスマホを斜め30度手前に傾ける」こと。これをするだけで角度がつくので、"上から撮っている風"の自撮りができます。そして自然な上目遣いが完成。

無理に上から撮って、目つきが悪くなっちゃう……なんていう「上目遣いミス」とはもうサヨナラ。ナチュラルな上目遣いは、スマホの高さではなくスマホの角度でつくりましょう。

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某IT企業で働きながら、自撮ラー(自撮り女子)としてネットで人気急上昇中の「りょかち」が真面目にネット世界について語ります!

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りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、WEBサービスの企画開発・マーケティングに従事した後、独立。コラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。

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