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本屋の時間

2017.01.03 更新 ツイート

第3回

コーヒーの香りと本棚と 辻山良雄

(photo : 齋藤陽道)

 あけましておめでとうございます。今年も「本屋の時間」をよろしくお願いします。

 正月の本屋には、普段よりは少しゆったりとした時間が流れています。そんな気分を反映してか、時間がある時に読みたくなるような少し厚めの本や、シリーズものがまとめて買われるのも、この時期の特徴です。以前、書店に勤めていた時には「この時期には普段と違う本が売れる」と言われてきましたが、それはゆっくりとした気持ちでいるお客さまが、棚に置いている商品を、いつもより念入りにご覧になっているからではないでしょうか。

 正月ではなくても、Titleは都心より少し離れた荻窪にあり、しかも駅からは少し歩いたところにあるので、普段から店の中で急いでいる人はあまり見かけません。

 

 お客さまに店内でゆっくりとくつろいだ気分になっていただくためには、そうした環境を整える必要があります。店主の視線を感じないレイアウト、BGM、室温、並べている本に違和感がないこと……。本を選び、本と出合うのはお客さまなので、店としては主張をせず、その出合いを邪魔しないように心がけています。

 Titleにカフェがあることも、店内の時間を落ち着いたものにさせていると思います。本を探したあと、カフェの中でその本をゆっくりと読む人も多いですが、最近では先にカフェで落ち着いてから本を探す人も増えてきました。温かいコーヒーを飲んで緊張がほぐれたあと、ゆっくりと本棚を見ると、本がまた違うように、心に直接語りかけてくるような気にもなるでしょう。そうして自分の五感を頼りにして出合った本を連れて帰っていただく。レジに本をお持ちになるほころんだ顔を見ることが、本屋の喜びでもあります。

 

 今回のおすすめ本

『中谷宇吉郎 雪を作る話』(平凡社STANDARD BOOKS)

「雪は天から送られた手紙である」という有名な一節は、聞いたことがある人も多いと思います。中谷自身は探求心に溢れた科学者で、そのまなざしは常に、真理を獲得することに対して向けられていました。その真っすぐで透明な視線が、詩情に満ちた言葉を生むことになったということが面白いと思います。中谷のエッセンスがわかる一冊。


 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年9月12日(土)~ 2020年9月29日(火) Title2階ギャラリー

西淑作品集 刊行記念巡回展 “WORKS” 2020

西淑作品集「Shuku Nishi WORKS」、「DRAWINGS」の刊行記念巡回展。これまで、西淑が手掛けてきた装幀の原画作品を中心に、新たに描き下ろした作品も展示販売します。

 

◯ 2020年10月3日(土)~ 2020年10月4日(日)Title 2階ギャラリー

第6回「家族製本」展示 | 宮本恵理子+キッチンミノル
取材体験でつくる、家族のための時間。 完全オーダーメイド&オールハンドメイドの本づくり。

家族が永遠に残したい言葉と写真の表現をプロがお手伝いし、世界で1冊の本に仕立てる「家族のためのものづくりプロジェクト」。ライターによるインタビューと、カメラマンによる写真撮影を、ご家族で一緒に体験してみませんか?

 

◯かみのたね『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』書評/辻山良雄 2020.8.27



◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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