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本屋の時間

2016.12.15 更新 ツイート

第2回

本屋は「動的平衡」辻山良雄

(photo:齋藤陽道)

 毎日、本屋にはその日発売の新刊が入ってきます。朝、新刊が入っている箱を開封し、取り出した本の大きさや表紙、手に持った感じなどを確かめながら、一つ一つその本の置き場所を決めていきます。Titleで売れそうな本、力を入れて売りたい本が入ってきた場合には、新入荷商品を置いている、入ってすぐの一番目立つ平台に置きます。

 

 その平台に置いている本は、内容が毎日少しずつ変わります。基本的には新刊が中心になりますが、Titleでずっと売れている本は一年前に出たものでも平台にありますし、社会的に大きな事件があった場合はそれに関する本を並べることもあります。大きい出版社から出た本もありますし、個人が自主製作したリトルプレスもあります。正解はその日によって違うのであり、店の中にある手持ちの本を眺めまわして、いまある本の中から最適な並びを考えます。あるべき姿に収まったなと思えるときは、自分でも気持ちいいですし、時間がなくて、決まらないまま開店時間を迎えてしまうこともあります。

 Titleには約一万冊の本が置いてありますが、その中でこの一年間に一回も売れていない本は、半数以上ではないかと思います。毎日入ってくる本が棚に収まらないときは、本棚から売れていない本を同時に抜き取り返品します(売れていなくても、そこにあるべき本だと判断したものは、ずっとそこにあります)。そうした入荷と返品を繰り返しているうちに、棚に置いている本も時間をかけて少しずつ変化していくのです。

 人間の身体を作っている細胞は、一説では60兆個ともいわれており、毎日たくさんの細胞が生まれ、古い細胞が死んでいきます。いま、ここにいる自分は昨日と同じ自分だと思うかもしれませんが、細胞レベルでは全く同じではありません。本屋も昨日と同じように見えたとしても、毎日違う本が、その場所を出入りしているのです。それぞれ本の行く先を考えているうちに、その店の本棚も成長していくかもしれない。本屋の仕事は、その繰り返しだと思います。

 

 今回のおすすめ本

 

 贈りものが何かと多くなる季節。本の贈りものであれば、この本を薦めております。世界中の、それぞれのことばだけにある気持ちを集めて、一冊にまとめたえほん。自分の気持ちが、いまのことばで表せないのなら、世界のことばで探してみてはいかがでしょう。それぞれが違っている世界とは、豊かなものです。

 

<お知らせ>

◯2020年1月31日(金)~ 2020年2月9日(日) Title 2階ギャラリー

 夏雨(ナツグレ)」加納千尋写真展
 写真集『夏雨』(Kite)刊行記念

 南西諸島の奄美大島に父方のルーツがある著者が、父を含む島出身の五人きょうだいに記憶をたずね、その言葉をたよりに現代の奄美大島を撮影した写真集「夏雨」。その東京での初個展。


◯2020年2月11日(火)~ 2020年2月27日(木) Title 2階ギャラリー

 詩人・山尾三省展~詩集・原稿・写真、そして画家nakabanの装画
 山尾三省詩集『新版 びろう葉帽子の下で』(野草社)刊行記念

 日常の中で非日常的な時をつづった詩人・山尾三省。彼の詩集新版刊行を記念し、過去の全著作、直筆原稿、アメリカの詩人ゲーリー・スナイダー氏との対談時に高野建三氏が撮影した写真、詩集『新版 びろう葉帽子の下で』の装画担当nakaban氏の作品原画などを展示。

ⓒKenzo Takano


◯2020年2月21日(金)19:30~ Title 1階特設スペース

 坊さん、本屋で語る。
『坊さん、ぼーっとする。~娘たち・仏典・先人と対話したり、しなかったり~』(ミシマ社)刊行記念 白川密成さんトークイベント

愛媛県・栄福寺住職の白川密成さんのお話を聞く。本書の題名にもなっている「ぼーっと待つ勇気」や「見る」「ほっとく」「子ども」といったテーマを中心に、ミッセイさんが日常の中で考え、感じている仏教の智慧をやさしくポップに語る。

 


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売されました

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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