1. Home
  2. 生き方
  3. 本屋の時間
  4. お客さまは知床や与那国島からも

本屋の時間

2017.01.15 更新 ツイート

第4回

お客さまは知床や与那国島からも 辻山良雄

(photo : 齋藤陽道)

 Titleは先日の1月10日、開店一周年を迎えました。この一年の間には近所の方はもちろんですが、北は北海道の知床から、南は沖縄の与那国島まで、さまざまな地域の方にもお越しいただきました。

 遠方よりお越しのお客さまとお話しした際には、「近所にTitleのような本屋があると嬉しいのだけど……」ということを言っていただくことが数多くありました。ありがたく嬉しい言葉ですが、同時に本をめぐる厳しい状況のことが思い起こされて、複雑な気持ちにもなりました。

 

 本屋は少し前までは、どこに住んでいても身近にある存在だったように思います。しかし後継者不足や売上の減少による閉店で店の数が減り始め、いまや家の近所に気軽に立ち寄れる本屋がある街の方が、珍しくなっているのではないでしょうか。

 そうした時代では、本の買われ方が従来とは変わってきます。お客さまを見ていると、漠然とした気持ちで本を眺めながら、その場から気に入ったものを選ぶというよりは、SNSやマスメディアなどで知った情報をもとに、特定の本を求めるというかたが増えているように思います。様々な種類の本を気軽に手に取れる状況がなければ、本との出合いに偏りが出てしまうのは仕方がないことでしょう。

 しかし悲観するだけでは、本もこの時代から取り残されてしまいます。店が売りたい本を積極的に紹介し、それをお客さまに購入していただくという機会は、いまの方がより広がっているように思います。これは何も特別なことではなく、魚屋さんがその日に入った新鮮な魚を紹介して、その魚が売れていくのと同じことです。

 本屋はこれまで身近にある存在だったがゆえに、多くの店が届いた本をただ並べて、あとはお客さまに選んでいただくというスタンスでした。Titleでは入荷した本を、ツイッターなどを通じて紹介しており、WEB SHOPでも本を販売しておりますが、全国からご注文いただく本の多くは、Titleで紹介したことのある本です。近所に住んでいる顔の見えるお客さまと同様に、顔は見えなくても、遠くに住んでいる人とも、同じ価値観を共有しながら繋がることができる、そんな新しい時代に生きていることを実感しながら、毎日本を並べています。

 

今回のおすすめ本

『本屋、はじめました』(苦楽堂)

 自分のことで恐縮ですが、この度Titleに関する本を書きました。Titleが出来るまでと開店してからのこと、前職の大型書店のこと……。本を売ること、一つの店を作ることに関して、とにかく具体的に書いていますが、本の仕事をしていない方にも、どこか共感できる箇所があると思います。
 1月10日よりTitleで先行発売、全国の書店に並ぶのは25日頃からです。Titleの店頭かWEBSHOPでご購入のお客さまには「2016年の毎日のほん」という小冊子を特典として差し上げます。 


 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年9月12日(土)~ 2020年9月29日(火) Title2階ギャラリー

西淑作品集 刊行記念巡回展 “WORKS” 2020

西淑作品集「Shuku Nishi WORKS」、「DRAWINGS」の刊行記念巡回展。これまで、西淑が手掛けてきた装幀の原画作品を中心に、新たに描き下ろした作品も展示販売します。

 

◯ 2020年10月3日(土)~ 2020年10月4日(日)Title 2階ギャラリー

第6回「家族製本」展示 | 宮本恵理子+キッチンミノル
取材体験でつくる、家族のための時間。 完全オーダーメイド&オールハンドメイドの本づくり。

家族が永遠に残したい言葉と写真の表現をプロがお手伝いし、世界で1冊の本に仕立てる「家族のためのものづくりプロジェクト」。ライターによるインタビューと、カメラマンによる写真撮影を、ご家族で一緒に体験してみませんか?

 

◯かみのたね『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』書評/辻山良雄 2020.8.27



◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

{ この記事をシェアする }

本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

バックナンバー

辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP