1. Home
  2. 生き方
  3. 彼方からの手紙
  4. 面白い人たいがいケチ説

彼方からの手紙

2026.10.28 公開 ポスト

面白い人たいがいケチ説清水ミチコ/光浦靖子

光浦さんの率直さよ、笑ってしまいました。普段から呆れるほど正直者の光浦さんですが、検便のスリリングさは格別なものがありますなあ。身につまされるからかな。何に対してもすぐ飽きる現代の社会にあって、検便とかウンチ、お尻などどうしてシモの話は長年ずうっと鉄板の可笑しみがあるのでしょうか。考えてみたら不思議です。そして世界中の子どもがわれ先にとどっと笑う。言葉の壁がない。下ネタには争いがないんですよね。下ネタはハトよりも平和の象徴。言い過ぎ。

チャットGPTに聞いてみたところ、こう説明されました。「ウンチやオナラは、みんな知ってるのに普段は堂々と話しにくい。そんな暗黙のルールをちょっとだけ破る快感から笑いが生じます」。ちなみに「この笑いの快感を知ると何度も言いたくなる」とも書いてありました。

子供のしつこさはここに集約されてるのかもしれないですね。かつ「人間はくだらないものを笑うのではなく、くだらないことを笑ってしまう自分まで含めて、笑っているのです」とのこと。大人にも大きなガスぬきになるのでしょうか。

いま日本では「我々は宇宙人」というアニメ映画が大ヒット中なんだけど、そっちでも観られるかな? こないだ映画を観たら、ここでも小学生のあのしつこさがものすごくなつかしかった。それが友情のアダになって自分が傷ついてしまう、なんてことも含めて、幼かった頃の自分とかぶりました。私もウケるとしつこかったよなあ。何度も何度も同じこと言ったりしてたよなあ、なんて。

今はしつこい芸人はあんまりいなくなったけど、昔はそんな芸風の人もたくさんいましたっけ。小学生の頃は、ドリフとかコント55号とか、(また同じこと何度もリピートして欲しい!)と祈るように見てたくらい。実際しつこかったし、しつこさを求められていました。そしてさらにしつこいよりも、おっかないってのが先にあった。

横山やすしさんや立川談志さんなんて本当にスリリングで、ご自分でも(怒りが爆発する)という瞬間を待ってらっしゃるんじゃ? なんて疑ってしまうほど「さあ来るぞ」みたいな爆発寸前の構えを見たことがあります。大きな声で怒鳴られるだけで、普通の人間は即座に従ってしまう図式は、田舎でも都会でも同じなんだとわかりました。

大声って生命体としてなんだか「勝つ」ようにできてるものなんですよね。どんな正義より、でかい声がハバを効かせる。パワハラといえばパワハラなんだけど、その時代はそういうものだったので、ビビりはしますが珍しくはなかったものです。それゆえ当人がちょっとでも上機嫌だと、それだけでこっちは逆になんとも嬉しくなります。いつも笑っててくれないかな、幸せになってくれないかな、なんて思ってしまうのは、DVの彼氏を持つ人がそうらしいですよね。(別れたいのに、今度こそ暴力やめてくれるんじゃないか、だって今日はこんなに笑顔で優しいんだから)なんての。よろしくないですよ。あなた、彼を信じてるなんてのは綺麗ごとで、結局自分を騙してるんですから。他人の性格はまず治りません。今すぐ別れましょう。

話がすっかりそれてしまいました。お悩み相談員の椅子に座ってました。戻します。起立。芸人気質の話ですよ。着席。同じ芸能界にいるようで、芸能人と芸人は実は明らかに違いがあるんですよね。私が思うに、世間から守られているという感覚をまとっているのが芸能人。そして常に裸一貫、世間が守ってくれるわけはない、と泥水の中むき身でヒリヒリしながら生きてるのが芸人。今は違うかもだけど。

また芸能人は完璧を目指しますが、芸人系は欠点や惨めな姿をさっとさらけ出せます。これは誰に教わるものでもなくて、生まれつきだってとこが面白いですよね。学ぶもんじゃなくてなぜか備わってるという。私はこういう人の「傾向」というものが大好きで、いろいろ知りたい人なのです。ついでに早食いの人はなぜか面白いヤツに多いとも昔から言われてますね。ご飯が早く終わってしまう人。大食いじゃないですよ。大食いの人は面白いというより明朗豪快なタイプな気がします。

ついでにいつか光浦さんは「机の上が汚い人はだいたい面白い」タイプが多いとサラッと言ってましたが、確かに部屋や机の上がキチンとしてない人は、脚本家でも教授でもなんか人柄が面白い。何かに頭が没頭してる人生だからでしょうか。

私が編み出したのは「面白い人はたいがいケチ説」です。贅沢好きな社長の冗談ってなんでこんなにつまらないんだ? そしてでかく笑う? から考え始め、ひもといてたどりついた結論です。芸人系はたとえ大金持ちになっても関係ない。身についたケチ癖。ヘキというのかケチ好みというのか、細かなことに気がつきやすタチだからなんでしょうね。だいたい私もそうです。賞味期限とは見ない、気がつかないもの。胃酸信じてる。(← 明日を信じてるの言い方)

下ネタの話から始まってしまいましたが、性的な下ネタとなるとよほどうまくないと滑った時は地獄ですよね。こないだ、たまたま宝塚を見たのですが、海外の作品のもので、一瞬やや下品な下ネタのセリフがありました。あちらではウケそうですが、日本の上品な客層は一同、シーン。波を打つとはこのことか。私は自分までいたたまれなくなりそうでしたが、こう思いました。「プロってすごい。」というのは、すべる覚悟がすでにご本人にあったらしく、毅然となさってたからなのです。スベリ上等。毅然とした態度はスベりに勝つのです。というわけで今回の論点、大声は正義に勝つ、下ネタはハトより平和、スベリは毅然で勝つ。以上を今回のテーマとさせていただきました。

【シミチコNEWS】11月からライブツアー。架空のスター・轟寿々帆のアクスタを制作中です!

 

関連書籍

清水ミチコ『カニカマ人生論』

すぐに「気負け」して泣いてしまう少女の頃の笑えて切ない思い出。永六輔さん、タモリさんはじめたくさんの大切な人たちとの巡り逢い。自分の弱さやセコさにぶち当たりながらも、日常の些細な面白みを慈しみつつ、「若い頃よりクヨクヨしなくなった」と思えるようになるまでの様々な出来事。武道館を沸かせる国民の叔母(自称)の、自伝エッセイ。

{ この記事をシェアする }

彼方からの手紙

清水ミチコさんと光浦靖子さんが月1回手紙を送りあうリレーエッセイ

バックナンバー

清水ミチコ

岐阜県高山市出身。1986年渋谷ジァンジァンにて初ライブ。1987年『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビュー、同年12月発売『幸せの骨頂』でCDデビュー。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作等、幅広い分野で活躍中。著書に『主婦と演芸』『「芸」と「能」』(共に幻冬舎)、『顔マネ辞典』(宝島社)、CDに『趣味の演芸』(ソニーミュージック)、DVDに『私という他人』(ソニーミュージック)などがある。

光浦靖子

1971年生まれ。愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と「オアシズ」を結成。テレビやラジオで活躍する一方、手芸作家、文筆家としても活動。著書に『ようやくカレッジに行きまして』『ようやくカナダに行きまして』『50歳になりまして』『お前より私のほうが繊細だぞ!』『傷なめクラブ』など多数。2021年8月よりカナダに留学。現在は、就労ビザを取得し、カナダで生活を続けている。(写真:山崎智世)

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP