
とある作品の構想している。そして悩んでいる。
その作品はオリジナルで、他の作品と比べると私の描きたいように描かせてもらえるものだ。やはり原作のある作品やプロデューサーがやりたいことがしっかりとあって強い想いを持っているところでは、そういうわけにはいかない。当然だ。
オリジナル作品でなければ、決められたものの中で如何にお力添えをできるかという感覚で取り組む。描かなければならないことが絶対的にある作品を創るのは、自分が望むことを描ける作品とはまた違った脳を使う。良い意味で、縛られた中で描いていくことはとても刺激的で、楽しんで執筆させてもらっている。
いま悩んでいるオリジナル作品のシチュエーションや、どんな出来事を起こすかは決めている。ああいう場所でこういうことが起こって、あんな人があーしてこうしてアレしようかな…と考えはまとまり始めている。
では何を悩んでいるのかというと、とある役の心の中にあるモノだ。そのとある役が抱えているトラウマを、いま私が思い浮かんでいるモノにするかどうかということを悩んでいる。
そのとある役のトラウマは作品にとってとても大切な部分になるだろうし、伝えたいメッセージにも関わってくることになるだろう。
しかし私は、ひたすら悩んでいる。

悩んでいる理由は、私が幼少期に実際に経験したことに関係しているからである。
つまり、私はそのトラウマに自ら触れたくないのだ。数十年そのトラウマで起こった感情に蓋をして生きてきた。思い出したくない昔の嫌な記憶だ。
もちろん私が経験したまま描くわけはなく、かなりデフォルメをして実像と視点を変え、起こった出来事も違う形で創っていく。しかし、そのトラウマを用いれば、そこに立ち向かう役の根底に流れる感情は私が触れたくない場所なので、呼び起こしたくない昔の記憶を使うことになってしまう。
私は、個人的にはできれば触れずに逃げたい。
しかし、そのトラウマを抱え葛藤をしている役が登場することで作品は良くなるのだ、きっと。
良くというのは、偽物の世界が本当みたいな表情をもち、観た人の心に強く残り、創作した意義をもち深くなるということ。
私は物書きとして、作品が良くなるために個人的に触れたくない感情を使う必要がある。しかし、立ち向かい、乗り越えるのは役なのだ。
あー、描くのか。なんか、描くみたいな流れで締めくくろうとしているが。
描きたくないな。使いたくないな、あの引き出しは…。
まあ、もう少し考えて悩んで迷おうと思う。
こんな、作家なら誰しもが抱えているであろう想いを恥ずかしげもなく書いている自分がバカらしくカッコ悪く思える。この未熟さをさらけ出すことも、またひとつ物書きとして存在するには必要なことなのだと思い込み、ここに書いてみる。
なんでも書く。思ったこと感じたことをなりふり構わず目の前の原稿に全てぶつける。それが大事なはず。
自分の好きに書いていいこのエッセイ。この場所が私の中で大切な場所になってきている。
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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。
21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!
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