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私は演劇に沼っている

2025.01.26 公開 ポスト

「神様的な事柄」と私のちょうどいい距離感私オム(脚本・演出家)

2025年になった。今年は巳年。私は年男である。

ネットで巳年の運勢を調べてみると、「2025年の干支である「巳」は成長と再生、そして財運を象徴する特別な年です。この一年を通じて、新しいことに挑戦し、内面を磨きながら自分を成長させるチャンスにしてみてください。巳年の象徴でもある蛇のように、しなやかで柔軟な姿勢を持ちながら、新たなステージに向けて一歩を踏み出しましょう」と書かれていた。

 

なんか、良さそうだ。しかし、しっかり読むと「チャンスにしてみてください」や「新たなステージに向けて一歩を踏み出しましょう」という、結果が保証されているような言葉ではない。結局は自分次第といったところだろうか。

私は占いなどは、ほどよく信じるようにしている。60%ぐらいで信じるという感じではなく、100%薄っすら信じるという具合だ。全てを「そうなんだ~」という感じで信じている。引っ越すなと言われた年には引っ越さないようにするし、出会いの年と言われたら出会いに敏感になる。が、家の更新月がきたら引っ越すし、引き篭もって執筆したい時は誰とも会わない。常に占いを意識して生きるが、絶対に言付けを守るというわけではない。占いやお参りなどの神様的な事柄とは自分なりのいい距離で関わっている。

「神様的な事柄」ってなんだろう。自分で書いて頭を傾げている。

私は小さい数珠をひとつだけ持っている。仕事の時につけるようにしている。芸能に関して御利益があると云われている神社で買ったものだ。その数珠に何が宿っていて、どんな意味があるのかはあまり分かっていない。しかし、私はその数珠がとても大切なのである。つけて仕事をしていると身が引き締まり、良い作品を作れている気がする。

なぜ、その数珠の効力も知らないのに毎現場つけていき、良い作品を作れている気がするのか。理由は分かっている。それは、その数珠を定本楓馬(さだもとふうま)という役者と一緒に買ったからだ。

私は定本楓馬という役者がとても好きだ。芝居に真摯に向き合い、どこまでも一つの役のことを探求し続ける姿に毎度感心する。「楓馬はサボらない」私は何度も定本楓馬とお芝居を作ってそう思っている。だから、何の効力があるのか分からない数珠を付けていても身が引き締まるのだ。楓馬はどこかで懸命にお芝居をしていると数珠を見るたびに思う。私の「こんなもんでいっか」という邪念を打ち消してくれる。すぐにサボって楽をしてしまう私の戒めのようなもので、とても大切にしている数珠だ。

私の執筆をするデスクには、楓馬数珠の他に、「宮下柄杓」と「安里札」と名付けた神様関連グッズがある。

「宮下柄杓」は共にプロデュース公演を行う宮下貴浩(みやしたたかひろ)という役者が、どこか遠い神社で買ってきてくれた、産み落とす系のご利益がある柄杓だ。安産がどうのとか宮下さんが言っていた。良い作品を産み落とすようにと、宮下さんからの想いがあるから大切にしている。何も思い浮かばず執筆が進まない時に、たまに自分の頭上で柄杓をすくってパソコンにかけてみたりしている。その行為で何か思い浮かんだことはまだない。あ、逆なのか。何か適当な場所をすくって、自分の頭にかけないといけないのか…?今度悩んだ時にやってみる。

「安里札」というのは、公私共に良くしてくれている安里勇哉(あさとゆうや)という役者とご縁にまつわる神社に行った時に買った札だ。安里さんが大切にしている、人と人の縁を私も意識して生きてみようと思い、数年前に一緒に買ってから大切にしている。この札のお陰でどんなご縁に恵まれたのかは分からない。こういった縁起物は明確に「このお陰だ!」とはならない。なので、私は全てをこの札のお陰だと、とりあえず思うようにしている。この札を買ってから今日まで出会った人全て、この「安里札」の力だ。感謝感謝。

(我が家にある神様グッズ)

これらのように、私はお守りやお札などが持つ効力よりも、誰とそれらの物を買ったのか、誰との想いがその札や数珠、柄杓にあるのかが重要なのである。

自分ひとりで買った物だと、どんなに良い物であろうと、どこかで想いが薄れてしまうと思う。買い替えたりもするだろう。もちろん、それでいいと思うし、そういう物だと思う。神様や占いごとに対しての考え方はルールはあるが正解はない。

十人十色の向き合い方があり、私の場合は誰と得た物かということを大切にしている。

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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。

21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!

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私オム 脚本・演出家

1989年生まれ。大阪府出身。代表作は女優の水野美紀氏との共同演出作品「されど、」や映画製作予定の「忘華~ぼけ~」や朗読劇「探偵ガリレオ」などがある。身近に感じる日常にドラマを生み出し、笑いを挟み込みながら会話劇で展開する作風は各テレビ局関係者からの評価も高い。また、10代の頃から国内や海外を放浪していた経験を持ち、様々な角度から人物を描き、人間の悩みや苦悩葛藤を経ての成長に至る描写を得意とする。近年では原作のある作品の脚本演出のオファーが相次いでいる中、自身のオリジナル作品の上演を定期的に行い、多くの関係者が観劇に訪れている。

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