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私は演劇に沼っている

2026.04.27 公開 ポスト

明け方にしか眠れない私、ゴルフを始める私オム(脚本・演出家)

私は夜に眠れない。

どれだけ朝早く起きても眠くなるのは午前4時や午前5時で、外が少し明るくなり始めてから眠りにつく。起きている時間がどれだけ長くても、夜に眠たくならない。

酒を飲んでも眠たくなるわけではなく、私は夜に眠れないことを苦しんでいる。

睡眠導入剤に手を出すと、薬がないと眠れない体になってしまうのではないかと怖くて手を出してこなかった。

朝に起きても夜に眠れない人間の私は、どうにかして夜に眠って朝に起きる人間になりたい。眠れないから仕方なく深夜に仕事をしている。

深夜に静まり返った部屋で、外からも何の物音もしないなかの執筆作業はとても寂しい。世界に私しか生きていないのではないかと思ってしまう。

そんな寂しくて心細い時間にある生き物との接触は、飲み物のおかわりを入れにキッチンに向かう際にリビングで眠っている犬との接触だけだ。

時計を読めるのかと疑ってしまうほど決まった時間に眠っている犬が、私をギロっと睨みつけてくる。眠りを妨げられて、「こんな時間まで何してんだ人間」とすごく鬱陶しそうな目をしているが、その目が、私はひとりじゃないと教えてくれる。少し頭を撫でると「ウウ」と小さく唸る。それもまた生き物が自分以外にいると教えてくれてありがたい。

眠れない原因が仕事柄不規則な生活で体のサイクルがおかしくなってしまっているからとか、深夜まで執筆をしているから夜型の体質になってしまったとかではないとわかっている。

原因はとてもシンプルで、私が体を全く使わないからである。この一択しかない。

体が微塵も疲れていないので体が睡眠を必要としていないのだ。眠って回復することが必要な部位がなく、体が睡眠を求めていないのだ。朝方まで起きてようやく脳が疲れたことを認めてくれて、眠らせてくれる。

体を使わないのは脚本家だからではなく、昔からずっと運動をしない選択を続けてきていた。疲れることが大嫌いで、学生時代から運動することから逃げてきた。

その結果、私の体力は皆無となり、運動したくてもする体力がなくなった。

もし私が格闘ゲームのキャラになったら体力ゲージはゼロなので、バトル開始の瞬間に死ぬだろう。それほど運動から距離をおいて生きてきた。

そんな私が最近ゴルフを始めた。比較的運動量が少ないスポーツなので、何とかやれている。ゴルフをした日は夜にぐっすり眠れる。体がしっかり疲れて「ご苦労様」と体を休めることを脳が許してくれる。

しかし問題はゴルフの前日である。

ゴルフは朝が早い。午前5時に起きなければならない。午前5時とは私が眠る時間だ。眠らずにゴルフに行くわけにはいかない。なぜならばゴルフ場はすべて遠い場所にあるため、車で行かなければならないからだ。バカになった体内時計が運転中に働いてしまっては、ゲームではなく本当に死んでしまう。

それを避けるために私は前回のゴルフの前日に睡眠導入剤を飲んだ。

手を出したくなかった薬だが、薬に頼らねば居眠り運転を回避できないと思い苦渋の決断を下したのだ。

人生初の睡眠導入剤はどうなるか分からないので、助手席に座って行ける日に体にぶち込むことにしたが、安易に薬に頼りたくないので、できるだけ己の力で眠ろうと頑張った。

結果、薬を飲んだのが午前3時ごろ。行き道の車内、眠気に耐えられずきれいに落ちてしまった。申し訳ない。

(起こしてしまって申し訳ない)

私はもう睡眠導入剤を飲まない。やはり薬は怖い。

もう少し運動をしようと思う。たったそれだけで様々なことが解決するのだと思う。

健康面でも運転面でも死なない確率が上がる。

何より犬に睨まれないで済む。本当はそれが一番辛い。

 

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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。

21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!

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私オム 脚本・演出家

1989年生まれ。大阪府出身。代表作は女優の水野美紀氏との共同演出作品「されど、」や映画製作予定の「忘華~ぼけ~」や朗読劇「探偵ガリレオ」などがある。身近に感じる日常にドラマを生み出し、笑いを挟み込みながら会話劇で展開する作風は各テレビ局関係者からの評価も高い。また、10代の頃から国内や海外を放浪していた経験を持ち、様々な角度から人物を描き、人間の悩みや苦悩葛藤を経ての成長に至る描写を得意とする。近年では原作のある作品の脚本演出のオファーが相次いでいる中、自身のオリジナル作品の上演を定期的に行い、多くの関係者が観劇に訪れている。

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