
本読みのアルパカ内田さんと、幻冬舎作品を誰より愛する営業部のコグマ部長。
2人が、幻冬舎の新刊の中からお気に入りを選んで、おススメしあう、本コーナー!
今月のコグマ部長のおすすめはこちら。
(あわせて、アルパカさんがコグマさんにおススメした作品についても、お楽しみください)
【幻冬舎営業部 コグマ部長から、
アルパカ内田さんへオススメ返し】
伊東潤『鋼鉄の城塞ヤマトブジシンスイス』

航空主兵主義へと時代が移ろうなか、
最高軍事機密とされた世界最大最強の
「戦艦大和」の建造が始まる。
絶対不可能と目され、54名の殉職者を生んだ
大プロジェクトに、若き造船士官たちが
夢見たものとはいったい……?
一方こちらは、この夏にふさわしい1冊。誰もが知る「戦艦大和」の建造にまつわる知られざる物語だ。
昭和9年(1934年)、京都帝大を出たばかりの海軍中尉・占部は戦艦大和の建造担当を拝命。これは欧米列強に伍するための軍事力強化策の一環だが、全長260メートル、3000人もの乗組員、射程距離40キロと未曽有の巨大艦。まさに「鋼鉄の城塞」なのだが、その検討から設計、建造、進水までの工程すべてを手探りのまま、しかも極秘裏に行なわなければならない。この難ミッションを遂行する占部ら造船士官の奮闘はまさにもう一つの戦争でもある。
手に汗握るその顛末はぜひ本編を読まれたいところだが、作者の巧みさは、前代未聞の国家プロジェクトを丹念に描きながらも、襲い掛かる反政府主義者の妨害や、すべてにおいて軍隊が優先された当時の空気、翻弄される市民の日常も描き、より重層的なストーリーに仕上げたところにある。そして、当時の上層部が現場で苦悶する占部たちの声を聞き入れようとせず、どんどん暴走していく有り様には改めて怒りを覚える読者も多いに違いない。
ただひたすら戦争は愚かである。今年は占部が建造した大和が沈んでから80年。涙無くして読めないまぎれもない傑作が生まれた。
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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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