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西野亮廣の本

2023.02.11 公開 ツイート

西野亮廣さんは、なぜ今『夢と金』を書いたのか?~日本がとにかく今ヤバいんです! 幻冬舎編集部

幻冬舎営業局主催の、書店員さん向けのオンライン会議。2月1日に、キングコング西野亮廣さんをゲストとしてお呼びしました。
4月にビジネス書『夢と金』の刊行を控えている西野さん。書店員の皆さんに向けて、してくださったお話が評判だったので、こちらで、2度に分けて公開します!さっそく、前半戦。

日本の大人たちよ、お金のことを子供たちに教えられないまま、日本を滅ぼすつもりか!?

――ビジネス書のオファーが多数あったそうですが、なかなか西野さんの手が動かなかったご様子でした。それが、今、「書くぞ」となった理由を教えてください。

 

西野 3年半くらい、ビジネス書から離れちゃってましたが、ビジネス書を書くということに関しては、僕はオンラインサロンやっているので、ビジネス系の一番新しい情報は、そっちでバンバン出してるっていうのが一つです。その中で、自分にとってはガス抜きみたいなことができているので。

もう一つは、お仕事でいろんな国に行ったり来たりしてるうちに、日本の今の状況があんまりよろしくないってことに気づいたこと。日本人は、お金の知識が全くないっていうことが、大きな理由ですね。実際、子どもの時から社会に出るまで、僕らはお金の勉強をせずに社会人になりました。なので、お父さん、お母さん、学校の先生も、ちゃんとお金のことを教えられない。子供に対して、大人がお金の話を教えられないと、ここからどんどん苦しくなってくるなあってう、焦りが大きかったですね。僕は仕事柄、子どもと触れ合う機会が多いので、ここはやっぱり無視したくないなぁっていう……そんなところからです。

 

――新しいシステムや情報にも長けている西野さんが、今回、書籍という形をとって、ビジネス書を書こうと思ってくださいました。本に期待しているものがあるんでしょうか?

 

西野 本の意味合いも、いろいろ変わってきているなぁって感じます。“最新の情報”を仕入れるのであれば、有料のメディアなどを使えばいいと思うんですけど、じゃあ「本の意味って何なんだ」って考えたら、どちらかというと「機能性っていうよりも、お守りみたいになってきているな」って思うんですね。

“その情報はすでに仕入れているハズ”なのにもかかわらず、大切な本を目につくところに置いていたり、大切な本を鞄の中に入れてたりしますよね。あれはオンラインでは絶対に再現できないこと。「機能」っていうよりも「意味」として価値が上がってきているっていうのは、すごい面白いなと。あと、なんかこう、単純に物体が好きだっていう。“形が好きだ”っていうのもあります。はい。

 

10年前、20年前と同じ努力しても、シンプルに売り上げが下がっちゃう理由

――そうは言っても、本の売り上げってだんだん厳しくなっているっていう現実があります。西野さんの考える打ち手について教えてください。

 

西野 あ。それいい話ですね。今回の本にも書いたんですけれど……なんか、僕の話ばっかりしちゃって大丈夫ですか。そういう回ですか(笑)。それでいうと、これは僕に限らず、出版社さんにも限らず、書店員さんにも限らず、たぶんみんなが抱えている問題だと思うんですけど。

こと日本においては、「たくさん売る」っていうゲームがちょっと限界来てる。だって人口が減っちゃってるわけですから。10年前、20年前と同じ努力しても、シンプルに売り上げが下がっちゃうっていう。これは誰が悪いわけでも、誰がさぼってるわけでもなくて、仕方がないわけじゃないですか。

……って考えたときに、「たくさん売るっていうゲーム」から、「高く買ってもらうっていうゲーム」にどこかで変えていかないといけない。こういうことをちゃんと体系化していかなければいけない。…と思うんです。

例えば僕の場合だと、その動線を結構ちゃんと設計します。ビジネス書を出したらそれで終わりではなく、このビジネス書がフロントエンド~入り口になり、オンラインサロンへ人を流して、オンラインサロンでマネタイズするみたいな感じで。本自体をたくさん売るっていうより、この本を”起点”に売り上げを増やすっていうことを、日ごろから結構やってて。なんかこう、いろいろ“やりしろ”があるなっていう感じはしますね。

ーーオンラインサロンはこちら

 

西野 Voicyっていう音声メディアでもちょっとしゃべったんですが、新宿の紀伊國屋書店さんが、店頭でデジタルサイネージをやられたのは、本当にいい「打ち手」だなと思ってます。著者からすると、本を出すって、人生で何度もできることではないですから、自分の本がたくさんの人に見つかってほしいいっていう下心がある。……って考えると、各書店さんも、広告枠みたいなのを設けてくれたら、著者は絶対買うなあと思うんです。自分の本を宣伝するために。今までは、本屋さんがポップを作ってくださって、「こういう本ありますよ!」っていうのをやってくださってるじゃないですか。あれを、著者は普通にお金を出して買いたいなと思うんです。

ただ、それやりすぎると、書店さんの“キュレーションメディアとしての価値”は落ちてしまうから、やりすぎると絶対だめだとは思うんですよ。つまり、「うちの書店が押し出しているのはこれです」っていうのは、絶対ないといけない。

その一方で、本の売り上げだけでマネタイズするのではなく……カフェ併設したり、グッズ売ったりみたいな、打ち手はありましたが……広告費を著者に出させる、っていう打ち手。著者は喜んで出しますよ。たとえば「10万円とか20万円出せば、あの電光掲示板みたいなところに載れる」ってなったら、絶対出すんですよね。10万円の売り上げを作ろうってなったら、本を何冊売らなけりゃいけないか? 書店員さんがどれだけ稼働しなきゃいけないんだ? ていう話になってくるじゃないですか。

 

みたいな感じで、これは今回の本にも富裕層の話を書いたんですけど、「たくさん売る」から、「お金を取れるところから、お金を取る」っていう方へ。みんなからまんべんなくいただくのではなくて。――書店員さんに限らず、全サービス提供者が、そっちの方にちょっとずつシフトしていかないと、もう“もたない”というような感じです。

『夢と金』の大きな柱のひとつは「富裕層の生態系」。これを知らないと、マジで未来は無い!

――まさに、そういうことが今回の『夢と金』に書かれていますね。今回の本について、ちょっと簡単に説明させていただくと……第一章が「富裕層の生態系」。第二章で「コミュニティ」。第三章で「NFT」。大きな三つの軸で書かれています。
この第一章の「富裕層の生態系」というところで、日本人のお金の考え方が今、大転換期にきてるってことが説明されています。まさにさっきの話です。

 

西野 ぼくは、ライブなどで、何百円くらいのグッズも売ってきましたし、場合によっては、何百万円、何千万円という高額の商品、作品を販売することもあります。そのうえで、これはあくまでデータをとったわけではなく、ぼくらの肌感でしかないんですけど、2~3000円の商品を売るのがめっちゃ難しくなってきたなっていうのがありまして。

全員が若干貧しくなってきていて、2~3000円の商品を買うか買わないかを悩んでる層が、「買わない」という選択をし始めていると。ところが一方で、10万円とかの高額商品は、相変わらず売れるんです。

そこにポンってお金出す人は、ぼくらの肌感では全然減っていなくて、まだ余裕がある。それで、ここを取りにいかなきゃ、つらいなと。

 

――『夢と金』の前半でも、飛行機の座席を例に挙げて説明してますね。

 

西野 飛行機のビジネスモデルを、ちゃんと解剖しようと……。日本だと、値上げみたいなことをするとすぐ非難が起きちゃうとか、VIP席みたいなもの作っちゃうと「銭ゲバだ」「金の亡者だ」みたいに言われがちです。つまり、サービスの中に「えこひいき」みたいなものを作ってしまう、お客さんを差別・区別してしまうと、だいたい非難が起きちゃう。ですが、古くは、飛行機のモデルからそうだったんです。

(2020年8月頃のデータなので、ちょっと正確ではないですが、)JALのボーイング777の東京-ニューヨーク間の値段を調べてみたんです。全部で244席くらいあって、内訳が、エコノミー席147席、プレエコノミー席がたぶん40席ぐらい。で、ビジネスクラスが47席くらいで、ファーストクラスが8席……なんとなくこういう内訳。

じゃあ値段はそれぞれどれくらいかというと、東京-NY間の片道で、エコノミー席がだいたい20万円ちょっと。プレエコノミー……ちょっとエコノミーよりいい席が30万といくらか。で、ビジネスクラスが70万ちょっと。ファーストクラスになってくると150万くらいしちゃう。往復で車一台買えちゃうくらい。……これだけ値段の開きがあるわけです。

このチケットが全部売れたとしたら、だいたい1億円くらいになるんです。ってことは、どんぶり勘定で申し訳ないんですけど、飛行機を東京からNYに飛ばすのに、だいたいチケットの売り上げが1億円くらい必要であると。これが、「サービスに差別・区別がある世界」。もっと言うと、「VIP席を作っている世界」。

これを、日本人の価値観で「そんなのよくない」ってやっちゃったらどうなるか? っていうのを調べてみたんです。ボーイング777をすべてエコノミー席で敷き詰めると……ファーストクラスを全部抜き、場所をとるビジネスクラスも全部抜いて、そこにエコノミー席全部敷き詰めると、だいたい340席くらい置ける。つまり、「プラス100人多く乗せることができる」。

そこにエコノミー席の値段、20万ちょっとを、かけると、チケット全部売れたらだいたい7500万くらいになる。つまり、完売しても、2500万円くらいショートする。となると、この2500万円を、340席で追加で分担、負担しないといけない。1人頭の追加負担額はいくらかっていうと、プラス約7万円くらい。

間違った日本人の「優しさ感覚」が、結果的に、「優しくない世界」を作っている!

西野 何が言いたいかっていうと、僕たちがエコノミー席に座るときは、VIPの人たちが、(僕たちが払わらないといけなかった)約7万円分くらいを、負担してくれているっていうこと。つまりVIP席を作らなかったら、どういう世界が起きるかっていうと、「お金を持ってない人からお金を取る」っていう、めちゃくちゃ厳しい、商売するときに一番やりにくい、で、お客さんにまったく優しくない世界ができあがってしまうんだが、これを反対してるのはだれかっていうと、日本人であるっていう……。これはあんまりよろしくないなっていうことで。

僕たちがイベントするときは、絶対にVIP席を作るんですよ。7万円の席とか、10万円の席とか。去年、市川團十郎さんと歌舞伎をやったときに、「この歌舞伎のビジネスモデルは優しくない」って言って、SS席みたいなのを作ったんです。それが3万円だったんですけど、炎上したんですよ、「高い」って。(でも即完したので、つまり、買ってない人が批判してたんですけど)。

そのSS席を3万円で売ったことによって何が起きたかっていうと、B席の値段を通常より2000円くらい下げることができた。つまり歌舞伎座に、子どもたちが、ファミリーが来ることができた。新しい層を獲ることができた。

やっぱり、サービス提供者、というか日本人全員がそうなんだけど、富裕層みたいなものと向き合わなきゃいけない。で、自分たちのサービスの中に「高価格帯の商品」を作っておかないと、この先、日本で何かやろうと思ったら、厳しくなってくる。

だから本屋さんも、10万円の商品とかがあれば、そこで働かれている方も、本屋さんに通われるお客さんも、ちょっと救われるなと思うんです。

これはやっぱ、メンタルのブロックが大きいと思うんですよね。僕たちは生まれてこの方、“富裕層”っていう人たちと会ったことがないですから。「10万円の商品とか出していいんだっけ」みたいなブロックがあると。でも“あのブロックはだれも幸せにしていない”ということを、そろそろみんな……てか、ホントは小学校くらいから教えてあげたらいいのにな、とは思うんです。この辺がめっちゃ重要になってくるなと思うので。

 

――西野さんのお話の面白さっていうのは、全部一回、西野さんが実際動かしてみて、確実に手応えがあって、反響も感じて、ちゃんと自分の中で「正解だ」と思ったことをまとめてくださってるからですよね。それを、こうして本に書いてくださっています。→(後半へ続く)

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