
「岩井さんが書いているのは、どんなジャンルの小説ですか?」
友人知人から数えきれないほど受けてきた質問だ。
「ミステリー? サスペンス? 青春小説? ヒューマンドラマ?」
どれもそうであり、どれも違うような気がする。どう答えても正解にならない感じがして、いつも「ノンジャンルというかジャンルレスというか……」というあいまいな答えでごまかしている。
だが、世の中にはどのジャンルにも当てはめられない小説が存在する。また、複数のジャンルにわたって作品を発表する作家も数多い。結局、作家がどのジャンルに属するかは大した問題ではないのかもしれない。真摯に作品を書いていれば、そこにおのずと作家性が表れてくるものだと思う。
昨年の八月一日から、私は専業作家になった。勤めていた会社を退職し、四年間の兼業作家生活に終止符を打ったのである。その時にTwitterに掲載した文章は、以下の通り。
開拓者を気取ったり、カッコつけているわけではなく、私は「岩井圭也」というジャンルを自称し続けるしかないのだろう。
前回に引き続きまたも美術館の話題になるが、昨年12月、東京都写真美術館で「見るは触れる 日本の新進作家vo.19」を観てきた(会期はすでに終了)。同館はウェブサイトで開催の意図を以下のように語っている。
〈写真・映像イメージの持つテクスチュア(手触り)を起点に、写されたイメージのみならず、イメージの支持体となるメディアそれ自体への考察をうながす、5名の新進作家の試みをご紹介します。〉
http://www.topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4282.html
私の撮影で恐縮だが、展示作品のいくつかを掲載する。(事前に撮影、掲載の許可はいただいている)
一般的な「写真」の概念には収まらない作品ばかりである。いずれも人間の感覚を新たな角度から掘り返し、その危うさを突き付けてくる。文字通り、既存の「フレーム」の外側に広がっている世界をまざまざと見せつけられたことで、勝手ながら私は励まされていた。
自分が何を面白いと思うか。その一点を頼りに、これからも胸を張って「岩井圭也」というジャンルを深化させていきたい。
2023年、卯年、年男。今年もどうぞよろしくお願いします。
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文豪未満

デビューしてから4年経った2022年夏。私は10年勤めた会社を辞めて専業作家になっ(てしまっ)た。妻も子どももいる。死に物狂いで書き続けるしかない。
そんな一作家が、七転八倒の日々の中で(願わくば)成長していくさまをお届けできればと思う。