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ライムスター宇多丸のお悩み相談室

2022.10.07 公開 ツイート

片付けられなさ過ぎて、自宅にいてもまったく癒されません。どうすればいいでしょうか…!? 宇多丸/小林奈巳(女子部JAPAN)

ラッパー、ラジオパーソナリティとして縦横無尽に活躍し続けているライムスター・宇多丸さんの人生相談本『ライムスター宇多丸のお悩み相談室』がついに刊行です!女子部JAPANで長年続けてきた連載からぎゅっと厳選&加筆修正してお届けする1冊。仕事や恋愛、人間関係のお悩みから女性差別まで、とことん考え答え続けた名回答の数々、ぜひお楽しみください!

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私は片付けられない女。自宅にいてもまったく癒されません……。(2014年6月28日)

私は片付けられません。汚い部屋が気にならないわけでもありませんし、先日、必要に迫られてかなりのモノを処分しましたが、まだまだ雑多な部屋です。貧乏性な性格は変えられないんでしょうか? 自宅にいてもまったく癒されません。(さおち・広島県)

宇多丸   僕も完全に同類ですから、相談する相手を間違えてるんじゃないのかな……。とりあえず、さおちさんの相談で印象的なのは、自分だって部屋が汚いことが平気なわけではない、むしろ不快ですらあるっていう心情を明らかにしているところですよね。これこそまさに、僕らタイプの汚部屋魔が抱えている問題なんですよ!「あそこ、片付けなきゃな」とは思ってるのに、何もしない。問題の存在も自覚してるし、その解決法だってわかっているのに、実際に行動する面倒くささのほうが、放置しておく不快感にまさっちゃってるっていう。「今そこにある危機」をついつい見て見ぬフリしてしまう体質。それこそが汚部屋的な病み=闇への第一歩なんだよな……。

こばなみ  私も汚部屋魔ですが、会社では年末に机まわりを断捨離しました。ただ、自分の意志だけではできないので、後輩に「迷ったらゴミ」「使わなきゃゴミ」「思い出の品を捨てても思い出は消えない」「過去を捨てなくては未来の場所がない」とか片付けの格言を読み上げてもらいながらやって。かなりキレイになって気持ちよかったです。だけどこれ、会社だからできたことで、自宅となると、やっぱりちょっと違うかな。そのときにずいぶん昔に宇多丸さんを取材したTOKYO FMのフリーペーパー「80」を発掘して、ついつい読んだら、大笑いしてしまいましたよ。原チャリ免許の試験に落ちた話とか(笑)。そうやって捨てられないものってやっぱりありますね。

宇多丸   わかる! いいかげん整理しようと思ってモノの山を片付け始めたら、すっかり忘れてた自分の昔の仕事とか、懐かしい資料とかがちょいちょい出てきてさぁ、つい読み始めたらこれがまた面白くって、いつしか作業の手が完全に止まっちゃう。あげく、やっぱこれは捨てられないよなぁってことになって、結局たいして山の分量は減ってないっていうね。だいたいそういう面白懐かしいモノって、それ以前にも不要品整理の波を生き残っていたりするんだよね。すでに選抜されているメンバーなんだからさ、そりゃ実力はあるに決まってるよ! っていう。なかなか捨てらんないよなぁ、やっぱこういうのは。そりゃあね、1年に一回は読み返すか? っつったら、まずないですよ。でも、5年に一回でもいいよ。たまに読んだらほぼ確実に楽しませてもらって。あぁ取っといてよかったとか思ったりするわけでしょ。

こばなみ  そうそう。

宇多丸   こばなみに取材されたフリーペーパーなんて、一度捨てちゃったら、あとから買おうったってそうはいかないモノの典型でもあるしさ。そういうのはもう、よしとしようよ! ま、これぞまさしくモノを溜め込む人間の典型的思考法ってことですが……。

それより僕の場合、一番の問題は「服」かもしれない。とにかく困るのがライブTシャツね。だって、自分たちのワンマンとかだけじゃなく、誰かのライブにゲスト出演したり、大きめのフェスに出たりするたびに、ほぼ必ずと言っていいくらい記念のライブTシャツっていうのをもらって帰ることになるわけだからさ。これだけ長く活動してれば、そりゃもう、とんでもない量になるわけですよ。ライムスターのTシャツなんてさ、僕自身は普段は絶対に着れないわけじゃん! 街なかで自分のTシャツ着て歩いてるミュージシャンとかって、ねぇ?(笑) それでいて、無造作に捨てる気にはどうしてもなれないっていう。思い出のフライヤーとかに近い感覚なのかな。

もっと困るのが、ステージ用にオリジナルでつくった衣装。そんなもん、たぶん二度と着ることもないのに。かといって捨てるわけにもいかないじゃん! あとはCDもやっぱり、何かといただけてしまうことが多いぶん、常に家の収納力をオーバーしている状態ではあるよね。でも、それこそちょっと前までの日本語ラップとかって、ネットに音源が上がってるわけでもなく、一度捨てたら二度と手に入らないものが多いからさ。やっぱり簡単には捨てられない。もちろん片っ端からデータ化していくのも手ではあるんだけど……。

こばなみ  本もたくさん積まれてるんですよね?

宇多丸   引っ越した当初は、なんとか本棚に入るぶんに保とうと思ってたんですけどね……。「本タワー」があちこちにできるのはわりと早かった。僕の場合、最悪なのは、買ったのに読んでない本がどっぷり溜まってるってこと。それを捨てるわけにいかんだろう、なにせまだ読んでないんだから!

こばなみ  雑誌なんかは「自炊」している人もいますけどね。iPadユーザーでそうしている人、何人かいましたけど、私はやっぱり、持ち歩くのは重いけど雑誌は雑誌としてページをめくって読みたい派です。

宇多丸   僕の自慢の70~80年代『POPEYE』コレクションも、「モノ」として揃ってることに意味があるわけだからね。あの紙質とか込みで時代感だからなぁ。パソコンの画面でいくら眺めても、ピンとこない気がする。でも、そういうふうに自分のなかでの価値がはっきりしてるものは捨てる必要ないんだよ。そういうんじゃない、自分でも捨てたほうがいいと思ってるようなガラクタが日常生活のスペースを侵食してるのが問題なんだよね。

こばなみ  生活スペースを侵食してるものだけまずは片付けるとか?

宇多丸   以前にラジオで言ったことがあるんだけど、前に一回頑張って大掃除したときに、Tシャツでもなんでも、捨てるかどうか迷うような境界線上のものは後回しにして、まずははっきり捨てるのが惜しいもの、自分のなかでランクがかなり上のものから思いきってゴミ袋に入れちゃうんですよ。いきなり神7から切ってく、みたいな。そうすると、それより全然ランク的には下の雑魚が残ってるのとか、むしろ腹立たしくなってくるんですよ。神7級を捨てるのがつらければつらいほど、「お前ごときが残れるわけがないだろう! バカか!」となって、即決できる範囲が大幅に広がる。

こばなみ  それ、すごくいい方法ですね! 独自で編み出したんですか?

宇多丸   そうそう。で、捨てちゃった神7級とかも、なきゃないでまったく困らないっていうか、とくに後悔したりもしないんだなぁってことに気づいたりして。だからこの方法はホント、おすすめですよ。Tシャツはこれで相当捨てました。それに、もともと普通にお店で売られてたようなソフト類は、本でもビデオでも、たとえ絶版になってたとしても、ぶっちゃけお金さえ出せば、大抵また手に入るわけじゃん? 今はネットもあるし。だから、ホントに必要になったらそのときに買い戻せばいいんだよね。

まぁ、僕の場合は仕事が仕事なんで、資料が家ですぐに見つけられる利点はやっぱり大きいんだけど……。僕んちのビデオコレクション、まわりからは「UTAYA」って呼ばれてますけど、けっこうなんでも揃ってるなぁ! とか、自分でも感心することあるし。

ちなみに、前に一人暮らしをしてたときは、何か必要な本やビデオがあって、それを自分が持ってることも、部屋のどのへんにあるかってこともわかっていながら、あまりにうずたかくモノが積まれすぎてて、単純に「取れない」、だから買い直したほうが早い! なんてアホすぎることを年中繰り返してましたよ。それからするとやっぱり、今は大進歩しましたよね! とはいえ、もっと本気でキレイに暮らすってことを考えるなら、「溜まったら捨てる」みたいなサイクルは、実は根本的な解決にはなってないんだけどね。

こばなみ「捨てる」も難しいけど「溜めないようにする」もできないんですよね。ダ~メだ~!

宇多丸   僕の友人で一番厳格に部屋をキレイに保ってる人は、「できるだけ、モノを置くことで生じるデコボコをつくらないようにする」って言ってましたね。要するに、なんでも必ず収納具にしまう。そこに入らないような量のモノはそもそも持たないようにする。何かが増えたら、そのぶん、何かを捨てる。確かに人の暮らし方としてものすごく正しいんだろうけど……、まぁなかなか難しいよね。こばなみだって、あとからあとから、たとえば仕事の資料とか溜まってくるわけでしょ? 片付いたそばから捨ててる?

こばなみ  データがあるので、紙は大抵捨てますけど、データはパソコン上に残ってますね。ちなみにパソコンのデスクトップはすごく汚いです。

宇多丸   なんで整理しないの? 仕事に支障をきたすでしょ?

こばなみ  だいたい何がどこにあるかはわかってるので大丈夫です。あとは検索すれば見つかるし!

宇多丸   それ、汚部屋の人がする言い訳と同じだよ! 検索って手間も余計にかかってるし……。どう考えても能率悪いだろ! せめて仕事の種類ごとにフォルダにまとめて「整頓」とか、ホントの掃除より全然ラクなのに、なんでしないの?

こばなみ  今はキレイなほうなんですよ。もっといっぱいになっちゃうと「◯月◯日デスクトップ」っていうフォルダをつくって、すべて放り込むんです。それを定期的にやってる(笑)。

宇多丸   僕はフォルダのアイコンを変更するのが好きで、全部、『2001年宇宙の旅』で揃えてますよ。壁紙も。新しいパソコン買ったら、まずそういう作業をしますけどね。楽しいじゃん。……だってさ、コンピュータは現実の部屋と違って、ほぼ無制限に収納することができるんだよ。最悪、とりあえずどんどん見えないところにデータを入れていけばいいわけで、少なくともデスクトップ上はいくらでもキレイにできるじゃん。こばなみのデスクトップなんて、見てるだけでイライラしてくる! さおちさんのデスクトップは大丈夫でしょうか? デスクトップすらキレイにできないヤツが、現実世界の整頓なんてできるわけがない!

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関連書籍

宇多丸/小林奈巳(女子部JAPAN)『ライムスター宇多丸のお悩み相談室』

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宇多丸 ラッパー、ラジオパーソナリティ

1969年東京都生まれ。早稲田大学在学中にMummy-Dと出会いヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」を結成。ジャパニーズ・ヒップホップシーンを開拓/牽引し、結成30年をこえた現在も、アーティストとして驚異的な活躍を続けている。2007年にはTBSラジオで『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』がスタート。09年に「ギャラクシー賞」ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞するなど、ラジオパーソナリティとしても活躍。同番組内の映画批評コーナーなどが人気を博す。18年4月からは、同局で月~金曜日18~21時の生放送ワイド番組『アフター6ジャンクション』でメインパーソナリティをつとめている。著書に『ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門』『森田芳光全映画』『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』などがある。

小林奈巳(女子部JAPAN)

愛称・こばなみ。株式会社都恋堂・代表取締役。出版物や広告コンテンツの編集業務を経て、2010年に「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ・メディア「女子部JAPAN」として、全国2万3千人の30~40代女性を対象に、ココロとカラダを元気にするためのコンテンツ&イベントを企画・実施中。仕事は好きだが、PCのデスクトップと部屋がどうしても片付けられないのが長年の悩み。

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