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ライムスター宇多丸のお悩み相談室

2022.08.05 公開 ポスト

激しい「噛みつき合い」的なコミュニケーションが苦手なのですが、どうすればいいですか?宇多丸(ラッパー、ラジオパーソナリティ)/小林奈巳(女子部JAPAN)

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激しい“嚙み付き合い”的なコミュニケーションが苦手です……。
(2018年9月1日)

私は飲み会の席などで行われる、激しい“嚙み付き合い”的なコミュニケーションが苦手です。相手への暴言、挑発、からかいなどを通じてお互いむしろ仲良くなっちゃうアレです。

やってる本人たちはセリフこそ剣呑でも、あくまで「最後は両者笑顔」なことがほとんどで、そういう場で言われるのは口に出しても「コラーッ!(でも笑顔)」で済むような暴言であり、言われてるほうも「今度という今度は許さーん!(でも最後は笑顔)」が成り立つ相手同士がほとんどです。見ているとその手のコミュニケーションをする人は往々にしてバランス感覚が良く、空気も読めるので「言うと本気で洒落にならない暴言」は言わないし、私のような「仕掛けられると単に困っちゃう人」にはそういうことをしません。

頭では「仕掛けるほうの暴言は『私はこれだけキツイことを言ってもあなたとの関係が崩れないと信じていますし、私もあなたが私に対して同じように思っていると信じています。この信頼が通じていますか?』というコールであり、暴言への応戦は『私はあなたのメッセージをわかっているし、私もあなたと同じ気持ちです』というレスポンスである。これは信頼と親愛のなせる高度なコミュニケーションなのだ」と理解しています。

ただ現実に自分の知り合い同士や職場の人同士がガンガン嚙み付き合ったりするのは、なんだか嫌になっちゃうのです。

今では「当人同士が楽しくやっていることを傍で見て勝手に憂鬱になるなんて、気持ち悪いやっちゃな」とすら少し思い始めています。どうしたらよいのでしょう。(ハナハナ・26歳・千葉県・会社員)

こばなみ  これはお悩みというより自分の気持ちを整理したいという感じな気もしますが。
宇多丸さんは「激しい“嚙み付き合い”的なコミュニケーションが苦手」、じゃないですよね、きっと?

宇多丸   ていうか、まさにそれ型のコミュニケーションをちょいちょいやってしまってる側なので! ホント、申し訳ないの一言で……。

ただ、ハナハナさんも書かれているように、僕だってさすがに、そういう甘嚙みし合い相手というのはごくごく限られてて、当然ながら誰彼かまわず吹っかけてるわけじゃない。

僕の場合はほぼ、特定の友人2名限定です!「アトロク」を聴いてる人ならわかると思うんですが、コンバットRECと高橋ヨシキさん。

こばなみ  結局は楽しくてやってるんですよね?

宇多丸   そのときはそのときで多少ムカッとしてるかもだけど、トータルではもちろん、お互いそういうのが好きでやってますよ。

これはもう10年以上前の話だけど、新宿二丁目のど真ん中のカフェで、コンバットRECと、『のたり松太郎』と『どす恋ジゴロ』のどちらが優れた相撲漫画か? 朝まで生討論! みたいな。で、何時間にもわたって激しい議論を戦わせた末に、出た結論。
「どちらも違う良さがあるので、比べるべきではない!」

あと、これも同じくらいの時期だったと思うけど、ファミレスでコンバットRECと延々議論してるうちに、8時間後だか12時間後だかにはいつのまにかお互いの主張が180度入れ替わっちゃってて。それでも構わず言い合いを続けているのを見て、ずっと一緒にいた杉作J太郎さんが「ダメだこりゃ」と。ちなみにそのときのトピックは、「『ラブ&ポップ』は『エヴァンゲリオン』の続編と位置づけて良いか否か」でした。そんなの庵野さんに聞くしかないから!(笑) そもそも正解はないお題っていう。だから楽しいんだけどね。

対照的に高橋ヨシキさんとは、わりとちゃんとしたテーマについて、本来的な意味での「議論」をしている……つもりではある。

いずれにせよね、まさに僕は、ハナハナさんが言ってる「激しい“嚙み付き合い”的なコミュニケーション」の、常習犯なんですよね……お恥ずかしい限り。まぁ、近年はめっきり頻度も減りましたけど。

こばなみ  私がその場にいたら、退屈しちゃって「やれやれ(苦笑)」と同時に、うらやましいってのはあるかも……。そういう気持ち、ハナハナさんにもあるのかな?

宇多丸   うらやましいというか、2人で勝手にいちゃついてろよ! って感じにはなるでしょうね、はたから見てたら。

こばなみ  逆に宇多丸さんは別の人がそうなっていたら、嫌じゃないんですか?

宇多丸   仮にいたとしたら、仲良いね~とか言いながら、こっちはこっちで別の人と話したり、ですかね。目に余るようなら適当なところで帰りますよ。発展性がないから帰るわ、じゃあね~って(笑)。でもたぶん、そうなったらそうなったで、「え、なんで? さびしいじゃん! ごめんごめん、やめるやめる!」ってなると思うんだよね、僕らみたいな連中は。

こばなみ  2人きりだとやらないんですか? やっぱりオーディエンスが必要ってこと?

宇多丸   2人っきりだと……ひょっとしたらそこまで激しくはやり合わないかもね。要は、「痴話喧嘩露出プレイ」みたいなニュアンスもあるのかな……。ハナハナさんならずとも、周囲のみんなが「いいかげんにしろ!」ってなるのも当たり前ですね。ホント迷惑!

そのうえでハナハナさんは、当人同士が楽しんでるなら放っておけばいいのに、横で一方的に不快がってるのもどうなんだとは思う、みたいなところまで考え抜かれてる。まさしく大人です。その意味で今回は、ハナハナさんのお悩みそのものを、根本的に解決することはできないと思うんです。ただまぁ、ハナハナさんの悩みのタネ側、元凶どもの実態はこんな感じ、という一端はお伝えできたかと……トホホ。一応その……改めて言い訳しておきますと、最近はだいぶ減りました。だいぶやってないです。

こばなみ  なんでですか?

宇多丸   お互い忙しくなって会う機会もグッと減ったし、普通に年取って丸くなったのも確実にあると思う。まぁその、これはあくまで僕の場合の感じ方なんだけど、自分の考えや思ってることを、手加減抜きでばっこんばっこんぶつけられる友人がいる、というのを、やっぱり心底うれしく思っている、って部分はあるんですよね。そこまで行けるような相手と、一生のなかでそうそう出会えるもんでもないし……まして大人になると、普段はやっぱ、社会性というネットを一枚張ってコミュニケーションしてるわけじゃん? そういうのを取っ払って、思う存分やりとりできる喜び、というかね。なんつーか、セレブレーション! なところもあるんですよ、我々的には。

こばなみ  ほんと、仲良しですね(笑)。

宇多丸   あと、ライブのモッシュとかに近いところもあるかも。外野から見るとケンカしてるように見えるかもだし、実際ケガとかもするんだけど、その輪のなかは好きで来てる人ばっかで、どつき合いすることで発散してる、っていうね。

ただ、いろんな人もいるフェス的な場だったら、モッシュゾーンをはみ出て、横で平和にライブを楽しんでる人にぶつかったりするのは当然マナー違反だし。モッシュやる側も、いい年して歯を折るまでやっちゃダメでしょうとか(笑)。そういう線引きはできるはずだよね、どこかに。そんな感じで、僕個人に関しては今後はできるだけ、「モッシュゾーン」が明確な場でのみ、キャンキャンやるように気をつけますので……。ハナハナさん側も、「今ちょっとモッシュゾーン出てんぞお前!」的な苦情を直接言うのは、もちろんありだと思いますよ。

ここまで僕が言ってきた事例でおわかりのとおり、本人たちはいたってご機嫌で、周囲に不快に思ってらっしゃる方がいるということに想像力が働いてないだけでもあるので、ズバッと言われたら「そうだったんだ! ごめんすぐやめる!」ってなるんじゃないかなぁ、ある程度まともな大人なら。僕らがそうかは置いといて(笑)。なんにせよ、重ね重ね、これまで大変ご迷惑をおかけいたしました! これで、ちょっとでも気が晴れてくださればいいんだけども……。

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宇多丸 ラッパー、ラジオパーソナリティ

1969年東京都生まれ。早稲田大学在学中にMummy-Dと出会いヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」を結成。ジャパニーズ・ヒップホップシーンを開拓/牽引し、結成30年をこえた現在も、アーティストとして驚異的な活躍を続けている。2007年にはTBSラジオで『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』がスタート。09年に「ギャラクシー賞」ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞するなど、ラジオパーソナリティとしても活躍。同番組内の映画批評コーナーなどが人気を博す。18年4月からは、同局で月~金曜日18~21時の生放送ワイド番組『アフター6ジャンクション』でメインパーソナリティをつとめている。著書に『ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門』『森田芳光全映画』『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』などがある。

小林奈巳(女子部JAPAN)

愛称・こばなみ。株式会社都恋堂・代表取締役。出版物や広告コンテンツの編集業務を経て、2010年に「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ・メディア「女子部JAPAN」として、全国2万3千人の30~40代女性を対象に、ココロとカラダを元気にするためのコンテンツ&イベントを企画・実施中。仕事は好きだが、PCのデスクトップと部屋がどうしても片付けられないのが長年の悩み。

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