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豆柴センパイはおばあちゃん ヨロリゆるゆる、今日もごきげん

2021.05.02 更新 ツイート

センパイ、トイレの自由化? 石黒由紀子

センパイは元気です。意外と? 見た目はヤングで「子犬ですか?」と尋ねられることもしばしば(柴犬だけに)。「いえ、15歳のおばあちゃんなんですよ」そう答えるとき、私の鼻の穴は膨らんでいることでしょう、若く見てもらえるのはうれしいです。前回書いた「サークルでのグル活」がトレーニングになっているのか、足取り軽く散歩もできています。

 

とはいえ、ゆるやかであっても登り坂では急にスピードダウンするし、下り坂でも勢いがついて小走りが過ぎると咳き込んだり。後ろ脚がだんだん弱ってきているのは素人の目にもあきらか、マンションの階段は登るのをやめにしました。
「高齢でもあるし、何かが起こったときには急激に変化すると思っていてくださいね」と獣医師からは言われていますが、幸いにも今のところは何も起きず、以前からの低空安定ゆるゆるな日々が続いています。

とはいえ、近頃ではトイレの自由化が著しくなってきました。
今となっては、子犬だったセンパイにトイレをどうしつけたか記憶はおぼろげ。ということはそれほど苦労もなかったということでしょう。「外でしかトイレをしないようにすると、天気が悪い日や体調を崩したときにつらいかも」と、リビングの隅にトイレシートを置き「おしっこはここでね」と教えました。それにより、室内外のどちらでも排泄ができる犬になりました。

散歩のときにチチチッとする場所もだいたい決まっていて、そこでするのも気持ちよさそうだったし、リビングの、テレビの陰を置き場所にしているトイレシートでもシャッとスマートに済ませていました。

何か思うところがあったのでしょうか、10歳を過ぎた頃から散歩中にトイレをしなくなり、うんちもおしっこも室内のシートでのみ。そして14歳を過ぎた頃にはときどきおしっこがシートからはみ出るように。

見ていると、脚はちゃんとシートの中に着いていてお尻だけがはみ出ちゃってる。「そっかー、ちゃんとやってるんだよね! 気持ちはわかるよ!」と理解を示しつつ後片付け(心で泣いた)。それでトイレシートの面積をどんどん広けて行きました。新聞紙サイズのシートが1枚から2枚、2枚から4枚……。ここ1年くらいは「松の廊下」と呼んでいるくらいの超ロングサイズのトイレになっていたのです。

ですが、最近はそういう問題では済まなくなってきました。気がつくと寝室の隅に直径10センチくらいの丸くて小さなしみ。こ、これは……。リビングやキッチン、玄関にも。見つけたらまず拭いて、ラグの下にトイレシートを敷き、ラグには水をたっぷり吸わせて繊維の奥に入ったおしっこをトントンと叩いてシートに落とし、染み込ませる。匂いも気になるので「動物病院でも使用されています」という強力消臭剤を買い込み、大量に吹きかけてアフターケア。

「私、なんだか一日中床を拭いているわ!」とシンデレラのような気分になって、「でも、おしっこが出ないと心配するよりはいいよね!」と気を取り直して。
コウハイのトイレに入っておしっこをしていることもありました。さすがに砂かけはしていなかったけど、どういう了見だったのでしょう。

ある朝、センパイはおねしょをしました。正確には、間に合わなかったというか。はじめてのことでショックでした(私が)。明け方にグル活をして、少し疲れたようだったので抱きかかえ、そのまま一緒に私のベッドで眠っていた朝のこと。マットや布団を干して、シーツとカバー、タオル類など洗えるものは全洗濯。そんなことが短期間に3度あり、めげました。
そこで紙おむつの導入を試みることに。実は、前々から考えてはいたのです。それで予習をしようと老犬介護の経験がある方たちに聞いてみると「案外、犬たちはすんなりと受け入れるよ」。

しかし私に抵抗がありました。それは私の母を介護した経験からのこと。母は68歳でアルツハイマー型認知症になり、5年間の闘病の末亡くなりました。同居はしていなかったので、すべてを介護したわけではありませんが、折に触れて世話をしながら母の様子を見ていました。

母の場合、発症から数年後に紙おむつを使用するようになったのですが「それにより認知症の症状が進んだ」と、家族は感じていたのです。紙おむつをきっかけに何かをあきらめてしまったのか、それまで母なりに葛藤しながらも何とか張っていた気持ちの糸がプツリと切れてしまったような……。感情は人間も動物も同じ、センパイもそうなるのではと危惧があったのです。

しかし、現実は残酷でそう言ってもいられなくなりました。勝手に作っていた心の厚い壁は、自分でどんどん崩していかないと老犬との日々に追いつかない。えいっ、センパイに紙おむつを買いました。

「なんでこんなの付けるの?」という顔のセンパイ。最初は違和感があったようですが、付けて3日目くらいから装着もスムーズになり、ストレスなく使えるようになりました。本犬は顔色ひとつ変えません。「前から使っていたよね?」という感じにも見えるし「この件に関しいては触れないで」というようにも。

今のところは早朝のごはんのあとの2度寝の前、おしこっこを促してもしないときだけ紙おむつを付けています。
食餌の後や散歩から戻ってきたらトイレに誘い、タイミングよくシートでおしっこしてくれたときは「やったー!」と思わず声が出ます。その達成感、幸福感たるや。老犬との日々は、こんな戸惑いと悲しみ、喜びとでできています。

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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