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物理の4大定数

2021.05.11 更新 ツイート

あの超有名な数式がやってきた! 小谷太郎

光速c、電子の電荷の大きさe、重力定数G、プランク定数h。
宇宙を支配する物理の4大定数を、NASA元研究員の小谷太郎氏がやさしく解説。
今回は本連載で初めての数式、世界でもっとも有名なあの数式が登場する。

*   *   *

(写真:iStock.com/ALLVISIONN)
 

エネルギーは物体の元気を表す量

運動する物体はエネルギーを持っています。

ここで「エネルギー」とは何かという説明を始めても、それはそれで面白い話になるのですが、光速の話題に戻れなくなるので別の機会にします。

ここではエネルギーについて次のように簡単に述べておきます。

「運動している物体や、熱せられた物体や、ちぢんだバネや、充電されたバッテリーなどは、ほかのものを、ぶつかって運動させたり、接して熱したり、変形させたりすることができる。

物体がもつ、運動させたり、熱したり、変形させたりする能力をエネルギーという

どうしてここで熱やバネが出てくるのか混乱した方は、「エネルギーは物体の元気を表す量」とでもイメージして次に進みましょう。

(写真:iStock.com/sandsun)

運動する物体のもつエネルギー「運動エネルギー」は、運動が速いほど、また物体の質量が大きいほど、高くなります

静止している物体の運動エネルギーはゼロです。ここに運動エネルギーを与えると、物体は動き出します。

このとき、物体の質量はじつは増加しています

日常的な速度だとこの増加はごくごくわずかなので、ふつうの測定装置ではわかりません。

静止質量100トンの飛行機が300 m/sで飛んでも、質量は0.1 mgも増えません。

食卓塩と呼ばれる粉状の塩の小さめの粒が飛行機にくっつく程度の質量増加です。(日常的な速度における相対論効果はだいたいそんなレベルです。)

(写真:iStock.com/Sebalos)

けれども速度が光速に近いと、質量はがんがん増えます。与えられたエネルギーが速度の増加にほとんど使われず、質量の増加に使われる、とも表現できます。

数式初登場

与えられたエネルギーと、増えた質量の関係は、簡単な式で計算できます。

しかし数式というものは、いくら簡単でも、読者に恐怖と絶望をもたらし、それ以上読み進める気力を奪うといいます。

出版業界(おもに数式にうとい人たちで構成されます)では、本に数式が1行現れるごとに販売数が半分に減るといったりするそうです。

本書の目的は恐怖と絶望をもたらすことではなく、むしろ夢と希望に近い何かを与えたい、そしてついでに販売数にも夢と希望を託したいと考えておりますので、数式は1行だけ載せることをお許しください。

 

その式は

E=mc2

というものです。

(写真:iStock.com/Giggle)

Eは物体に与えたエネルギーm質量の増加分、そしてcはもちろん主人公の一人である光速です。

この式は、物体にエネルギーを与えて加速すると、それに応じて質量が増えることを示しています。c2はその比例定数です。

(スティーブン・ホーキング(1942-2018)の名著『ホーキング、宇宙を語る』にも、やはり唯一の数式として、この式が登場します。もしもホーキングがこの式を書き入れなかったら、あの世界的ベストセラーの売上がさらに2倍になっていたかもしれません。)

簡単だがとんでもない式

cは30万km/sというとんでもなく大きな数値なので、それを2乗するととんでもなさも2乗されて、9京m2/s2になります。90000000000000000 m2/s2です。

ほんの少量の質量でも、このようなとんでもなさの2乗を掛け算すると、左辺のエネルギーは莫大なものになります。

たとえば、0.05 mgという質量は食卓塩の小さめの粒くらいですが、これにc2をかけると、90億kg m2/s2=90億J(ジュール)というエネルギーになります。

このエネルギーは、100トンの飛行機を300 m/sで飛ばすことができます

このように、物体に運動エネルギーを与えると、質量が増えます。(ただし莫大なエネルギーを与えても、質量の増加はごくごくわずかです。そのため、日常的な速度では全然変化がわかりません。)

 

次は、じつは運動エネルギーにかぎらず、熱エネルギーでもバネの弾性エネルギーでも、どんなエネルギーも質量に等しい、という話をします。

 

●次回は5/26の公開予定です。

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小谷太郎

博士(理学)。専門は宇宙物理学と観測装置開発。1967年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。理化学研究所、NASAゴダード宇宙飛行センター、東京工業大学、早稲田大学などの研究員を経て国際基督教大学ほかで教鞭を執るかたわら、科学のおもしろさを一般に広く伝える著作活動を展開している。『宇宙はどこまでわかっているのか』『言ってはいけない宇宙論』『理系あるある』『図解 見れば見るほど面白い「くらべる」雑学』、訳書『ゾンビ 対 数学』など著書多数。

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