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物理の4大定数

2021.03.11 更新 ツイート

相対性原理は電車で考えれば超カンタン 小谷太郎

光速c、電子の電荷の大きさe、重力定数G、プランク定数h。
宇宙を支配する物理の4大定数を、NASA元研究員の小谷太郎氏がやさしく解説。
アインシュタインが導き出した「相対性原理」は、電車の例で考えてみれば簡単に理解できる。

*   *   *

(画像:iStock.com/voyata)

光に近い速度の列車内では何が起こるか

さて話を1905年、奇跡の年に戻しましょう。
これからいよいよ特殊相対性理論の説明に入ります。
数式を使わない方針なので、そのぶん理屈っぽい抽象的な話が続きます。おそらくここが本連載のいちばん理解しにくい箇所です。

ここ(と次回)さえ越えればあとはラクだと思うんですが、話がちがうと思われたらお知らせください。

 

アインシュタインが子供のころから考え続けてきた問題、光に近い速度の列車のなかで何が起きるか、それを大人になったアインシュタインはどう解いたのでしょうか。
ごく簡単にその問題に答えると、

「光に近い速度の列車のなかで特に変わったことは起きません

列車の速度がどれほどであっても、列車が加速や減速もせず、線路がカーブもしていなければ、つまり等速直線運動をしていれば、車内の光景は停車しているときと変わりません

乗客はふつうに飲んだり食べたりおしゃべりしたり、科学解説の新書を読んだり、あらゆる行為を停車しているときと同様に楽しめます。(ただし話がややこしくなるので、車外との通話はおひかえください。)

このことは、普段みなさんが列車に乗るときに体感しているはずです。列車が時速100km以上のかなりの高速度で走っていても、車内の乗客は気にもとめません。

列車が高速度で走っていても、車内では停車時と同じように過ごせる。(写真:iStock.com/Smederevac)

たまによろめくことがあるのは、列車が揺れたとき、すなわち加速や減速をしたときです。がたごと振動するのは、やはり車体が細かい加速をするからです。等速直線運動をしているあいだは、停車と区別できません。

ここまでは誰もが観察することなのですが、アインシュタインの大胆な推論は、ここから特殊相対論を導きました。以下、その論理を(少々整理したかたちで)追ってみましょう。

止まっている列車内と走っている列車内の物理法則は同じ

列車が走っていても車内の様子がとくに変わらないことを、物理学の用語を使って表現すると、

「慣性系において物理法則は同じ(相対性原理その1)」

となります。
ここで「系」とは、列車や、中の乗客や物体、物差しや時計といった測定具などをまとめて呼ぶ言い方です。それらが慣性運動、つまり加速も減速もせず等速直線運動していると「慣性系」です。

その場合、列車内でどんな物理実験をしても、静止しているプラットホームのような別の慣性系での実験と同じ法則にしたがう、というのがここで述べていることです。

物理実験というと、科学者がメーターやレバーのついた大仰な装置を並べて行なう謎めいた行為を思い浮かべるかたがいるかもしれません(いないかな)。

しかしそんな特別なことをしなくても、私たちが飲んだり食べたりおしゃべりしたり何をしても、その行為は物理法則にしたがって行なわれるので、ある種の物理実験と呼べます。(重力のかかわる実験はちょっと理由があってここでは触れません。)

おしゃべりも一種の物理実験と呼べる。(写真:iStock.com/frantic00)

「相対性原理その1」は、飲んだり食べたりおしゃべりしたり何をしても、列車が止まっている場合と走っている場合でちがいはない、ということを表現したものです。

列車が動いているかどうかは、なにかと比べなければわからない

相対性原理その1からは、

「慣性系が運動しているかどうかは、他の慣性系と比べないとわからない(相対性原理その2)」

ことが結論されます。
どういうことかというと、走っている列車と止まっている列車で物理実験の結果が同じだと、列車が動いているかどうかが列車内の実験で判定できなくなってしまうのです。

自分の乗っている列車が動いているかどうかを知るには、窓の外を見るのが手っとり早いです。しかしこれは窓の外の系と列車系の運動を比べていることになるので、列車内の実験とはいえません。

列車の運転席の背後に貼りついて運転の様子をながめれば(楽しいですよね)、速度計から列車の速度が読みとれます。

速度計の原理はいろいろありますが、たとえば車輪の回転速度を測るものがあります。車輪はレールに合わせて回転し、レールは外の系の一部なので、やはりこの速度計も外の系を参照していることになります。

車輪はレールに合わせて回転し、レールは外の系の一部。車輪の速度計は外の系を参照していることになる。(写真:iStock.com/denisgo)

こうして考えていくと、列車が慣性運動をしているかどうか、運動しているとしてそれがどれくらいの速さなのか、列車内の実験だけから知ることはできないのです。
どの慣性系でも物理法則は同じなら、慣性系どうしの運動を比べないと、その慣性系の運動はわからないのです。

このように他と比べて決まる性質を「相対的」といいます。そこで、

「慣性系の運動は相対的である(相対性原理その3)」

といえます。これが相対性理論の教科書に載っている、相対性原理の(硬い)表現です。そしてここから導かれる物理学理論が「相対性理論」です。

つまり相対性原理とは、列車が走っているときも止まっているときも車内の様子が変わらないことを、言い換えたものなのです。(ここで、相対性原理簡単じゃん! と思っていただけると、話を続けやすいです。)

 

●次回は3/26の公開予定です。

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小谷太郎

博士(理学)。専門は宇宙物理学と観測装置開発。1967年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。理化学研究所、NASAゴダード宇宙飛行センター、東京工業大学、早稲田大学などの研究員を経て国際基督教大学ほかで教鞭を執るかたわら、科学のおもしろさを一般に広く伝える著作活動を展開している。『宇宙はどこまでわかっているのか』『言ってはいけない宇宙論』『理系あるある』『図解 見れば見るほど面白い「くらべる」雑学』、訳書『ゾンビ 対 数学』など著書多数。

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