1. Home
  2. 生き方
  3. キリ番踏んだら私のターン
  4. 言い訳みたいな自己肯定をやめて、自分とタ...

キリ番踏んだら私のターン

2021.01.10 更新 ツイート

言い訳みたいな自己肯定をやめて、自分とタイマン張ってこ! 長井短

あけましておめでとうございま~す!! 2021年、みなさん順調に過ごしてますか? 私はこれを書いてる12月末現在、仕事始めがいつかわからないっていう地獄にいます! イェ~イ!!

新しい年になるたびに、「今年はこれを頑張ろう」とか「これをいい加減やろう」みたいに夢は広がって目標も掲げるけど、そんなものが達成されたことは……ない……それなのに懲りずに毎年目標を掲げてできなくて落ち込むっていうループがかれこれ20年は続いてます。今年もそうなんだろうなぁ……あ~あ~……とはいえ、それでも毎日頑張ってるし、偉い偉いって自分に言い聞かせる。それに、私は私のこと好きだしな!

 
年末に夫のカメシマくんが作ってくれたペペロンチーノ。「頼むから具を入れないで」って懇願して、念願の具なしパスタが完成した。

っていつもみたいに励ましたところで喉に小骨が引っかかってるみたいな違和感に気づきました。私って、いつから私のこと好きとか思い始めたんだろう? 好きとか思わなきゃ立っていられないんだっけ? と言うことで新年一発目は「自己肯定感ってなんだっけ?」ってお話です。自分を愛すの疲れてきたんだが~?

「自己肯定」で自分を支えるのにも限界がある

いつから耳なじみのある言葉になったのかも全く思い出せない「自己肯定感」。こいつの登場で世界の色はガラッと変わった。「ありのままの自分を愛そう」って言葉がそこら中に掲げられて、実際私も掲げて歩いている。自分のことが好きだ。それは良いところのことを指すんじゃなくて、このどうしようもないクソ人間である自分のことを丸ごと引き受けますよって意味。今より素敵な人間を目指して頑張る自分と、そうなれた自分、なれなかった自分、全部が私で、病める時も健やかなる時も愛し続けることを誓っている。そういう意味では私もgleeのスー・シルベスターと同じく自分と結婚しているのかもしれない。

自分を愛することは大事だ。自分のことを大切にできるし、自信もつく。ありのままの自分を肯定して、どんな時も自分の味方でいること。そうできたおかげでたぶん今の私がいて、その自分のことが好き。でも、いつでも自分を愛し続けるのはちょっと無理があるかもなって最近思った。

例えば、二日酔いで死んでいる日。水を飲むためにベッドと台所を往復して、トイレで吐いて夕方までベッドにいる。アルコールに浸かり切った体から出る汗はなんか変に油っぽくて臭いし、鏡を見ると人間ランキング最下位みたいなノペーとした女が突っ立っている。「ありのままの自分を愛する」と言う言葉をそのまま鵜呑みにして、本当に実行するなら、このランキング最下位の自分のことも愛するべきだ。

「二日酔いで地獄だけど、でも素敵だよ? 沢山飲んでぐったりするって人間らしくていいね」

こうやって、今そこにいる剥き出しの自分も肯定してあげたほうが良い。でもさ~? いや普通に考えて無理じゃない?! だって好きじゃないもん二日酔いの自分。気持ち悪いし体重いし最悪だよ。昨日飲みすぎた自分もマジでふざけんなよ許さねーからなって気持ちであります。でも! 私は自分のことが好きなので、そんな自分も受け入れます♡そういう日もあるよね♡

なんて甘やかせるわけねーだろ!!

自分の使いたい場面でだけ「ありのままの自分を愛する」って言うカードを出していたことに気がついた。雑に使われるせいでボロボロになったそのカードは実家のUNOみたいにしわくちゃで全然イケてない。その時気づいたのだ。「ありのままの自分を愛する」とか「自己肯定感」で自分を支えるターンはもう終わった。私は、次のフェーズに行ったほうが良い気がする。

好きじゃない自分をそのまま見つめるのってなんて難しいんだろう

じゃあ次ってどこにあるんだろう。右か左に行けばあるの? ていうかここはどこだよって立ち尽くしてしまうから、一度後ろを振り返ってみる。そこにいるのは「私は最高」ってお経を全身に書いた自分で、えっ怖っっっ!!

グロテスクな自分の姿にめちゃくちゃ引いた。耳なし芳一によると、お経を書いた部分って怨霊からは見えないからナイスらしいけど、現実の今ここではナイスじゃない。お経で武装したせいで、私の本当の姿が人間たちに見えないからだ。その人間には私も含まれていて、私も私のことがわからなくなっていたことに気づく。あちゃ~だね~。

本当の私を置いてけぼりに、外見だけが力強くなっていくのはそれなりに辛いことだ。だから、一回体を洗って、お経を全部落とそう。もしかしたらそのせいで、自分を愛せなくなって、自信がなくなって、泣いちゃったりするかもしれないけど、でもその姿は見えるのだ。見えれば誰かが助けてくれる。ゆっくりお風呂に浸かって、私は全身のお経を落とす。「私は最高」なんて祈りは込めない。

久しぶりに見に行けた演劇。本当に素晴らしかったし、開演前の真っ暗な劇場に大音量の音楽が響いただけで泣きそうになった。

マジでありのままの自分の体を見ると「太った」とか「ここの皮膚がザラザラ」とか不満がどんどん出てくる。嫌だなって思う。嫌だなっていうのは、シンプルに嫌だなっていう気持ちでしかなくて、そこに「でも私は私を好き」なんて気持ちが混ざらないように集中する。やってみるとこれが結構難しい。1つの気持ちだけを感じるように努めるのってかなり集中力が必要なことだった。

「お腹が空いた」と思う時って同時に「でも夜中だからやめといたほうがいいかな」って気持ちが生まれちゃう。「あれ欲しいな」って思う時は「でも今月ピンチだし」とか、「眠いな」って思っても「でも仕事あるし」みたいに、私たちは常に複数の感情とか考えを同時に抱えていて、それらを比べながら何かを決断している。「もうちょっと明るい人間だったらな」って思っても「でも私は今の自分が好きだし」って思うことでバランスを取って立っていて、まぁそれはそれでいいんだけどでもそうやってると私は私の本当の気持ちが全然見えないの。

本当に気に入っているのか、立っているために気に入っていることにしているのか。どっちなのかわからないから自分が見えないのだ。なら、1つの気持ちに集中して、その後についてくる言い訳みたいな自己肯定なんてやめようと思った。

自分に超集中したらもっとよくなれそうじゃない?

「でも自分のこと好き」って思わないようにすると、めちゃくちゃ自分に不満が募る。だけど気持ちは晴れやかだった。だって、自分の気持ちがわかるから。「あぁこれが嫌なんだ」とか「あれが羨ましいんだ」ってことが見えると、そりゃストレスは溜まるけど、今までみたいな肩こりはない。

自分のこと好きかどうかなんてどっちでもよくない? てかそんなん考える隙間は集中力で埋めてかない? って、今私は思うのです。集中したほうが結果的に自分を大切にできるはず。「好きだよ」なんてわかりやすい愛情よりも、見えにくいけど大きな愛情で私は私を包みたくて、それは私の私に向ける集中力なのだ。今年は「自己肯定感」なんて煩悩に振り回されずに、超集中して自分とタイマン張ろうと思います。

*  *  *

次回は2月10日公開予定です。

{ この記事をシェアする }

コメント

河本 昇吾/Shogo Kawamoto  自分の能力不足から、いつ間にか期待を裏切ってしまっていることがあるなぁと反省してる…。 言い訳って何度か言ってるうちに気にしなくなるタイミングがあるから、言葉は大事。 自分とタイマン張ってこ👊 https://t.co/596rIPBKDr 2日前 replyretweetfavorite

キリ番踏んだら私のターン

相手にとって都合よく「大人」にされたり「子供」にされたりする、平成生まれでビミョーなお年頃のリアルを描くエッセイ。「ゆとり世代扱いづらい」って思っている年上世代も、「おばさん何言ってんの?」って世代も、刮目して読んでくれ!

※「キリ番」とは「キリのいい番号」のこと。ホームページの訪問者数をカウントする数が「1000」や「2222」など、キリのいい数字になった人はなにかコメントをするなどリアクションをしなければならないことが多かった(ex.「キリ番踏み逃げ禁止」)。いにしえのインターネット儀式が2000年くらいにはあったのである。

バックナンバー

長井短

1993年9月27日生まれ、A型、東京都出身。

ニート、モデル、女優。

恋愛コラムメディア「AM」にて「長井短の内緒にしといて」を連載中。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP