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礼はいらないよ

2020.12.11 更新 ツイート

「トランプ川」を探す旅に出てしまうと戻ってこられない ダースレイダー

Photo by Charles Deluvio on Unsplash

アメリカ大統領選挙の"不正"をめぐる世界

2020年、米大統領選挙が終わった。高投票率の中、大変な接戦を制して民主党候補のバイデン氏の勝利がほぼ確定した。事前の予想通り、郵便投票などの期日前投票の集計には州ごとの方針の違いもあり、結果が出るまで時間がかかった。僅差の場合の再集計も州ごとの規定に沿って行われて結果が出た。12月14日に選挙人の投票があっておしまい!……とはならない。

 

上記だけを見れば、たしかに接戦でそれは互いに支持者がいたのだから当然として(もともと現職有利とはいえ)、コロナ禍の中での選挙という観点から大々的に拡大した郵便投票もシステムとしてうまく機能し、実に安定してスムーズな選挙だった、といえる。

ところがトランプ大統領は選挙結果を受け入れず、敗北宣言もしない。政権移行の手続きにも非協力的だ。不正選挙だ! 選挙は盗まれたのだ! と主張し、法律チームを編成して各地で訴訟手続きに入った。

もちろん選挙は公正に行われるべきだ。しかも僅差の結果なら再集計もするべきだろう。だが……訴訟が始まってからもいっこうにトランプ陣営が主張する不正の証拠は出てこないのだ。

不正は“間違いなく”あった、ただし証拠はまだない。名前のない猫の話ではない。選挙という社会基盤を左右する行為に対しての不正の訴えがあり、しかも証拠はまだないというのだ。

僕は、時事ネタ芸人のプチ鹿島と毎週金曜の昼12時から「ヒルカラナンデス」という番組を配信している。ここでもトランプ大統領の不正選挙を巡る言動が話題になった。トランプ大統領は選挙が始まる前から郵便投票、期日前投票に関する不正があると主張していた(ちなみにトランプ氏本人もフロリダの郵便投票を利用している)。

その中でトランプと書かれた投票用紙が大量に廃棄された川がある! という主張があった。ヒルカラナンデスではこの川を「トランプ川」と名付けて、川口探検隊よろしくトランプ川を探せ! とぶち上げた。ジャングルをかき分けるとその先に……。

トランプ川。この川さえ実在すれば確かに選挙結果はひっくり返る。実際、トランプ陣営が訴訟戦略を進めるにあたって決定打になるはずだ。

ところが決定打は出ることなく、不正の証拠のほぼ提出できないまま訴訟は次々と棄却されたり敗訴されたりを重ねている。

トランプ陣営が訴訟費用を支持者に募ると、相当額の寄金が集まったという。だが、この募集メールをよく見ると集まった資金は必ずしも訴訟費用にのみ使われるわけではない。5,000ドル以下の寄金に関しては全額トランプ大統領のPACと共和党の資金に回されるという。不正の証拠も一般から募集されていた――つまり、そもそも証拠なかったというのか?

訴訟は大統領選挙が終わってもずっと続けられる。勝ち目がないような訴訟も大量に起こされている。これはトランプ川を探す旅なのか? ただ単に資金集めをしているのか?

訴訟戦略の最中、法律顧問のジュリアーニ氏がコロナに感染した。トランプ支持者にはそもそもコロナは大したことない、ただの風邪だ! と主張する人が多い。だが同時に、他国が持ち込んだウィルスだ! と主張する人も多い。果たして安全なのか? 危険なのか?

トランプ大統領本人もコロナに感染、早々に復帰したわけだが大したことがないと言ってしまった手前、この事態の評価も支持者には難しかったのかもしれない。

トランプ川が実在すると信じる人は実は世界中にいる。日本にもいる。大統領選挙の選挙権を持たない国の人々がなぜここまで熱狂的にトランプ氏を支持できるのか? 同じ熱量でバイデン氏を支持する人はほとんど見ない。

トランプ川に限らず、ドミニオン社のシステムによって票の削除があった、など次々と不正選挙を示唆すると“思われる”キーワードが登場する。裁判に耐える証拠はないが、一部の“ニュースサイト”は次々と告発する。

「メディア」は全て「フェイクニュース」だが、トランプ川やドミニオンを告発する「真実」を伝える”ニュースサイト”は信用できる。見たいものを探せば……ちゃんとある! 自分たちの信じるものはちゃんとネットで提供されているし、真実はそこにある。これを覆い隠す組織が策動し、真実を遠ざけ、メディアも選挙結果も操作している。そんな組織と闘っているからこそ世間からは嘲笑される。

でも、だからこそ、この闘いは尊いのだ! それに本当に小さくて全体の選挙結果には影響しないようなミスやエラーはあったじゃないか! だから全部不正に決まっているのだ。

トランプ川を探す旅に出てしまうと、なかなか戻ってはこられないだろう。旅は楽しく、苦難にも満ちているし、何よりこれだけの距離を来てしまったのだ。いまさら戻るなんて誰がいえる? それよりは前に進もう。ほら、きっとそこを曲がれば――。

先日、日本でもトランプ大統領を支持するデモが開催された。彼らもトランプ川を目指して終わることのない旅に出たのかもしれない。

今後はトランプ川が存在しない世界と存在する世界に分かれたまま、僕らは生きていくことになる。

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礼はいらないよ

You are welcome.礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが思考し、試行する、分断を超える作法。

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ダースレイダー ラッパー・トラックメイカー

1977年4⽉11⽇パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、浪⼈の時期に⽬覚めたラップ活動に傾倒し中退。2000年にMICADELICのメンバーとして本格デビューを果たし、注⽬を集める。⾃⾝のMCバトルの⼤会主催や講演の他に、⽇本のヒップホップでは初となるアーティスト主導のインディーズ・レーベルDa.Me.Recordsの設⽴など、若⼿ラッパーの育成にも尽⼒する。2010年6⽉、イベントのMCの間に脳梗塞で倒れ、さらに合併症で左⽬を失明するも、その後は眼帯をトレードマークに復帰。現在はThe Bassonsのボーカルの他、司会業や執筆業と様々な分野で活躍。著書に『『ダースレイダー自伝NO拘束』がある。

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