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礼はいらないよ

2024.01.19 公開 ツイート

「投票率70%超!台湾の選挙はすごい!」総統選のエネルギーを支える“複雑な地域”で暮らす人々の落ち着き ダースレイダー

2024年1月13日に投開票が行なわれた、台湾の総統選。「#ヒルカラナンデス」コンビのダースレイダーさんとプチ鹿島さんは現地へと向かったようです。
 

集会でも食堂で実感する台湾が実践する民主主義

2024年1月10日、プチ鹿島さんとロフトグループの宮原塁くんと一緒に台湾に行った。4年に一度の総統選挙を見に行くためだ。台湾の選挙はすごい。そんな話を多くの人から聞いていた。

 

Netflixのオリジナルドラマ「選挙の人々」はそんな台湾総統選挙を題材にしたドラマで、候補や選挙スタッフ、そして台湾の有権者たちの姿をコミカルに、時にシリアスに、エモーショナルに描く傑作だ。テーマは死刑問題や同性カップル、環境問題、働き方、SNSと多岐にわたるが全てが実は生活に直結している。そしてその生活を自分たち有権者が決めて作っていくこと、民主社会を自分たちで維持していくことこそがモチベーションとなって選挙という祭りに結実していくというストーリーでもある。

 

ドラマで描かれる盛り上がりもすごいものがあったが、実際に現地に行ってみるとドラマの画面程度ではとても収まらないとてつもないエネルギーが大爆発していた。正直、圧倒された。選挙最終盤の各党の集会は人、人、人、人。総統府前や大運動場などの集会に集まった人数はそれぞれの主催者発表で20万人、30万人と桁外れの人数が飛び出してきて、どうやって数えたのかはさておき、中にいると見渡す限り人の群れで候補のいるステージも見えなければ前後左右どこを向いても人だらけなのだ。元旦の明治神宮参拝を思い出してしまうような密ぶり。

集会は各党ごとにある程度の趣向はあるが大ステージに司会があがり、コール&レスポンスを繰り返しながら次々と候補や応援ゲストが登壇して最後に総統候補に繋げる構成だ。途中、歌やダンスなどの時間もある。メインの司会は3党とも女性で、3時間以上のステージを一人で仕切っている。しかも絶叫に近い煽りも混ぜながらのハイテンションパフォーマンスで喉の強さだけでも相当だ。

大型モニターが何台も用意され、大型スピーカーも何発も置かれて映像も音響もバッチリだ。支持者たちは政党の旗を振りながら盛り上がる。中には政党や候補の応援ジャケットを着たり、フェイスペイントを決めたりしている人もいる。各候補の政策を熱心に追う人もいれば、候補の人柄で信頼できるかを判断する人もいる。お祭りの雰囲気を楽しんでいるだけの人もいるだろう。

共通するのは皆が生活者、台湾という国際社会の中でもかなり複雑な地域で日常生活を送る生活者であるという意識だと思う。

台湾の人は朝から外食することが多いという。食堂はあらゆる通りに存在し、メニューも多種多様だ。多くの店では軒先で調理をして美味しそうな香や煙を道に向けて放っている。大きな餡をこねて薬味のネギを塗したり、肉や魚、野菜をバンバン切ったり、茹でたり、煮たり、焼いたり。忙しく働く店の人の姿を見ているだけでエネルギーに当てられて腹が減ってくる。人気の店には行列が出来る。活気は溢れているが人々は落ち着いてもいる。おとなしく並んで順番を待つ。
 

台湾の人はバイクに乗る。混雑時には道路にバイク集団が溢れかえる。交差点に次々と雪崩れ込んでくるバイク集団の絵面はなかなか壮観だ。でも落ち着いてもいる。バイクは整然と流れて行く。これが台湾の日常の一つの風景だ。僕は10年ぶりに来た上に今回も数日の滞在だが、この活気と落ち着きのバランスは非常に心地よかった。選挙集会の時はとにかくテンションが高く、人が集まっているが同時に落ち着きも保たれている。人が座るための椅子だったり飲用水が、次々とバケツリレーの如く運ばれてくるのだ。

台湾の民意を語る時に、特に中国との関係を念頭に”現状維持”という言葉が語られる。だが、この民意が指す現状はこの活気と落ち着きの絶妙なバランスで保たれているものと地続きだと感じるのだ。

台湾の総選挙は世界中のメディアで報道されている。日本でもかなりの量だったと思う。中国との関係は国際的なテーマとして注目されると思うし、この政党を支持する! とか危惧する! と言ったことを他国の人が話すのは簡単だとも思う。ただ、台湾の民主主義が決定しているのは彼らがどう生活して行くのか? という道筋だ。

駅前の混雑した定食屋で魯肉飯を食べながら、ふとこの店内にいる人の10人に7人が選挙に行くんだなと考えた時に台湾の民主主義の価値が少しわかった気がした。そして日本の定食屋ではどうだろうか? とも。
 

関連書籍

ダースレイダー『武器としてのヒップホップ』

ヒップホップは逆転現象だ。病、貧困、劣等感……。パワーの絶対値だけを力に変える! 自らも脳梗塞、余命5年の宣告をヒップホップによって救われた、博学の現役ラッパーが鮮やかに紐解く、その哲学、使い道。/構造の外に出ろ! それしか選択肢がないと思うから構造が続く。 ならば別の選択肢を思い付け。 「言葉を演奏する」という途方もない選択肢に気付いたヒップホップは「外の選択肢」を示し続ける。 まさに社会のハッキング。 現役ラッパーがアジテートする! ――宮台真司(社会学者) / 混乱こそ当たり前の世の中で「お前は誰だ?」に答えるために"新しい動き"を身につける。 ――植本一子(写真家) / あるものを使い倒せ。 楽器がないなら武器を取れ。進歩と踊る足を止めない為に。 イズムの<差異>より、同じ世界の<裏表>を繋ぐリズムを感じろ。 ――荘子it (Dos Monos) / この本を読み、全ては表裏一体だと気付いた私は向かう"確かな未知へ"。 ――なみちえ(ラッパー) / ヒップホップの教科書はいっぱいある。 でもヒップホップ精神(スピリット)の教科書はこの一冊でいい。 ――都築響一(編集者)

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礼はいらないよ

You are welcome.礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが思考し、試行する、分断を超える作法。

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ダースレイダー ラッパー・トラックメイカー

1977年4⽉11⽇パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、浪⼈の時期に⽬覚めたラップ活動に傾倒し中退。2000年にMICADELICのメンバーとして本格デビューを果たし、注⽬を集める。⾃⾝のMCバトルの⼤会主催や講演の他に、⽇本のヒップホップでは初となるアーティスト主導のインディーズ・レーベルDa.Me.Recordsの設⽴など、若⼿ラッパーの育成にも尽⼒する。2010年6⽉、イベントのMCの間に脳梗塞で倒れ、さらに合併症で左⽬を失明するも、その後は眼帯をトレードマークに復帰。現在はThe Bassonsのボーカルの他、司会業や執筆業と様々な分野で活躍。著書に『『ダースレイダー自伝NO拘束』がある。

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