1. Home
  2. 読書
  3. マンガ停留所
  4. ああ、続きが読みたい……スケールの大きな...

マンガ停留所

2020.07.13 更新 ツイート

ああ、続きが読みたい……スケールの大きな奇想の歴史空間。主人公は、なんと主婦!都留泰作『竜女戦記1』(平凡社)中条省平

世の中にはいろいろと変わった経歴をもつマンガ家がいますが、この『竜女戦記』の作者・都留泰作ほど変わった経歴のマンガ家もめったにいないでしょう。

なにしろ、この人はマンガ家で、文化人類学者なのです。

 

京都大学の大学院の出身で、主な研究対象はアフリカの民族文化。カメルーンなどでフィールドワークをおこない、バカ・ピグミーについて調査研究をおこなっているというのです。

「バカ」といってももちろん固有名詞ですよ。ピグミーの一種族とのこと。

しかし、都留泰作の名前が一躍マンガファンに認知された一代の奇作『ムシヌユン』を読んだことがある人は、この人の学者としての真面目さをどこまで信用していいのか、ちょっと不安になることも事実です。

それくらい、『ムシヌユン』という作品はトンデモない奇想SF(?)でした、シモネタ満載の。

それが今回は一転して、『竜女戦記』という壮大きわまる歴史ファンタジーで、出版社も真面目なことで有名なあの平凡社です。

まだ1巻が出たばかりですが、全6巻の予定ということなので、いまだ作品の全貌はつかめないながら、仮想歴史ものとしての骨格の確かさ、スケールの大きさと、作者の暴走しかねない奇想の奔逸ぶりとが、とても具合よくバランスがとれて、この先に大きな期待をつないでいます。

舞台は、古代中国とも近世日本ともとれるような印象の歴史的時空間。

ある王朝の奴隷反乱で大虐殺が起きて国が滅びます。そして、その王朝の皇帝の3人の公子が、龍となって空に逃げ、はるか西方で、陀国という不毛の地に落ちて、北陀州と中竜陀州と南陀州という3つの国を作ります。この3つの国が、冷戦的安定状態から、たがいの領土と人民と富を狙って緊張状態に移りつつある、一種の戦国時代が舞台となります。

主人公は、主婦(!)のたか。

北陀州を統べる白蛇家の息子が軍を率いて、中竜陀州に攻めこんだため、中竜陀州に暮らしていたたかは、夫とともに3人の子供を連れて、中竜陀州の首都・桜都まで逃げのびてきます。

ここで、たかは魔仏の夢を見て、3人の子供を犠牲にすれば、天下を取らせてやる、とのお告げを受けるのです。

もちろん、たかは即座に拒否しますが、すでに運命がたかの天下取りの物語にむかって始動していることは明々白々です。

この先どうなる? この強烈な興味が読者を引きずって放しません。

物語に都留泰作らしいトンデモないドライブがかかるのは、股間を丸出しにした全裸の老いた行者が出現するあたりからです。この老人がじつは……。

早くも、ただの主婦のたかは恐るべき試練に直面しますが、第1巻はそこで終わり。ああ、先が読みたい!

関連キーワード

関連書籍

{ この記事をシェアする }

マンガ停留所

バックナンバー

中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP