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つらいことから書いてみようか

2020.07.15 公開 ツイート

「現在→過去→未来」の順序で書くと相手に伝わる文章になる 近藤勝重

メール、チャット、SNSなどの普及で、以前より「書く力」が求められるようになりました。何をどのように書けば、相手にきちんと伝わるのか。そして、相手の心を動かすことができるのか。そんなお悩みに優しく寄り添ってくれるのが、「魔法の授業」と呼ばれた90分を完全収録した『つらいことから書いてみようか』です。名コラムニストが、小学校5年生に語った文章の心得とは? 大人が読んでもためになる本書を一部、ご紹介します。

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これが文章の「基本」だ

良い文章とは、ということで「誰にもわかるように」ということが大切だと言いました。みんな、覚えているよね。では、どうすれば誰にもわかるような文章がつくれるのか

(写真:iStock.com/golubovy)

例えば、「気持ちが悪いんです」とA君が先生に訴えたとします。でも、どうして気持ちが悪くなったのか。さらにどうしてほしいのかを言わなければ、先生にはわかりません。以上のことを整理すると、こういうことになります。

気持ちが悪いというのは現在です。どうして気持ち悪くなったのかの原因は過去にあります。それでどうしたいのか、どうしてほしいのかの希望、訴えは未来です。

つまり出来事や物事は現在→過去→未来の順に書けば、また話せば、相手によく伝わる、わかってもらえるということです。

みんなに書いてもらったつらいことでは、現在のつらいことが中心でした。例えばピアノを習っているけど上手にならない。つらい。現在ですね。一年以上、毎週休まずに練習に行っているのにうまく弾けず、先生にいつも注意されている。これは過去をふくんでいます。つらい理由がそこにあるんですね。

お母さんは、もっと家でも練習すればうまくなるよと言う。練習あるのみって。それならこれからは毎日少しの時間でもピアノにふれよう。そうするとピアノも応えてくれるかもしれないと思う。これは未来ですね。

こんなふうに現在→過去→未来と順序よく押さえつつ書いていくと、まとまった文章になります。これは文章にする際の基本なんですね。人に言葉で何かを伝えるときも、その順で話すと、相手はよく理解できます。

「単語」で会話していませんか?

ところが家庭では、そういうことにもおかまいなく、単語だけで話をしがちなんですね。お父さんだって家ではそうかもしれませんね。会社から帰って来て、「風呂」「めし」なんて言ってないかな。

(写真:iStock.com/AntonioGuillem)

そうか、言ってるか。じゃ、「寝る」は? ……おー、手が挙がっているね。

じゃ、今度はみんなに質問です。ご飯を食べているとき、「水」「お茶」なんて言ってない? うなずいてるな。

水もお茶も一人で歩いて来ないよ。ほしいならちゃんとそう言わないと。「お母さん、お水を入れてください」「お母さん、おはしを取ってください」って。

こういう毎日の言葉の積み重ねがとても大事なんだよ。これはね、君たちとまわりの関係ばかりか、君たち自身をつくっていくことにもつながっていくからね。

今度、お父さんが「風呂」って言ったら、「お父さん、風呂だけじゃわからないよ」って言ってみたらどうだろうね。

そうすれば、「風呂に入りたいんだ。きょうは仕事で疲れたから、風呂に入って早く寝たいんだ」ってお父さんは言うかもしれない。こういう話だとよくわかるよね。お父さんの気持ちがよく伝わってくるでしょ。

物事は順序を経てこそ伝わる。そして自分が言っていることも相手にわかってもらえるんだということをぜひ覚えておいてください。

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近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

毎日新聞客員編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、夕刊編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)の大人気企画「近藤流健康川柳」や「サンデー毎日」の「ラブ YOU 川柳」の選者を務め、選評コラムを書いている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。長年MBS、TBSラジオの情報番組に出演する一方、早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースで「文章表現」を担当してきた。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」などにレギュラー出演中。

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