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つらいことから書いてみようか

2020.07.14 公開 ポスト

自分のことより「人」「物」「自然」について書いてみよう近藤勝重(コラムニスト、ジャーナリスト)

メール、チャット、SNSなどの普及で、以前より「書く力」が求められるようになりました。何をどのように書けば、相手にきちんと伝わるのか。そして、相手の心を動かすことができるのか。そんなお悩みに優しく寄り添ってくれるのが、「魔法の授業」と呼ばれた90分を完全収録した『つらいことから書いてみようか』です。名コラムニストが、小学校5年生に語った文章の心得とは? 大人が読んでもためになる本書を一部、ご紹介します。

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どんなときに心が動くのか?

心が動かされることって、ほかにもいろいろあると思います。僕は大きくは人、物、自然の三つにとりわけ心が動く気がしています。

(写真:iStock.com/MissTuni)

人との関係では、一日のことを思い出してみてもいろいろ思い浮かぶ。家ではお母さんやお父さんの一言、隣のおばさんにかけられた一言。学校へ行けば、先生、友だち。好きな子の一言なんて特別だよね

物はどうだろう。僕らの子どもの頃は、まだ世の中が貧しかったから、服でも靴でも、お母さんが新しく買ってきてくれた物はみんなうれしかった。

どなたの作だったか、「ハモニカが欲しかった日のいわし雲」という俳句がありますが、僕は小学生の頃、土手に寝転んで空を見上げてはグローブがほしいなあと思っていました。そんなある日、中学校の先生をしていた兄さんが、野球部で使われなくなった古いグローブを持って帰ってくれたんだよね。

古いけどまだ使える。うれしくてね。枕元に置いて寝ましたよ。いまのみんながうれしくて枕元に置いて寝るってどんな物なんだろう。手に入って感動した物、とても大切にしている物って、何だろう。書いてほしいなあ。

それから自然ですが、僕は子どもの頃、夏休みになると山のふもとの川で来る日も来る日も遊んでいました。毎日がどうしてこんなに楽しいんだろうと思っていましたから、すぐ書けそうです。

「感動」が文章の出発点になる

ここで少し話を整理しておきます。体験。その中でも感動体験はよく覚えているので、作文を書くには良い題材になります。何よりもその体験と自分が深くかかわっているので、自分自身のことを書くのにもいいんですね。

(写真:iStock.com/Hakase_)

作文をはじめ、文章というのは結局のところ自分と人、物、自然との関係を描くことなんですね。自分のまわりにいる人とか、自分が大切にしている物、自分がふれた数々の自然。そんなことを感じ取ったまま描くと、場面がいいぐあいに浮かび上がり、自分の心の動き方なども一緒に描くことができます。

すると読んだ人にもよく伝わり、共感してもらえる。みんなも、ああ、書いてよかったなあって思える。人、物、自然とのつながりの中で、あっと思ったこと、大事にしてくださいね。

ちなみに夏目漱石の『虞美人草』には次のような言葉が出てきます。

「あっと驚く時、始めて生きているなと気が付く」

日本の近代批評の創始者、小林秀雄氏は『学生との対話』の中でこんなこともおっしゃっています。

「感動している時には、世界はなくなって、自分一つになれる。(略)感動している正体こそが個性ということです」

そして、こう続けています。

「僕の書くものはいつでも感動から始めました」

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つらいことから書いてみようか

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近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

毎日新聞客員編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、夕刊編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)の大人気企画「近藤流健康川柳」や「サンデー毎日」の「ラブ YOU 川柳」の選者を務め、選評コラムを書いている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。長年MBS、TBSラジオの情報番組に出演する一方、早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースで「文章表現」を担当してきた。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」などにレギュラー出演中。

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