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編集部日記

2020.05.23 更新 ツイート

緊急事態の生活と仕事7竹村優子

5月18日
太田信吾さんの新連載「住所不定」が始まる。太田さんは、「解放区」や「わたしたちに許された特別な時間の終わり」を撮った映画監督であり、俳優。定住先はない。その理由は、親友の自殺を通じて「同じ場所に暮らし、同じ人と過ごすなかで、価値観が凝り固まってゆく危険」を感じたからだという。よくわかる。人間は、環境が作る。どれだけ客観性を意識していても、その環境にあわせた偏りが出てくる。今読んでいる遺伝子の本からもそのことを受け取る。

はあちゅうさんと花田菜々子さんの往復書簡も最終回。お二人は、会ったことがないまま、正直な言葉で自分をさらけ出しながら、語り合ってくださった。最後の「お互いに、他の誰かと違う選択肢になったとしても、自分が納得できる道を歩めますように。」がすがすがしい。はあちゅうさんと花田さんも対面していないけれど、私も太田さんとはまだお会いしていない。

夕方、オンライン打ち合わせひとつ。

雨で夜の散歩に行けない。

 


5月19日
午後の取材のための準備。苦手な理系分野なのでぎりぎりまで資料を読みこむ。

取材はとてもおもしろかった! 初対面の方へのオンライン取材ははじめてだったけれど、質問事項を事前に送っていたこともあって、わりにスムーズだった。話を聞きながら、人間てすごい。生きてるってすごいと感動する。差異を差異として認めつつ共存し、その多様性によってつながってきた生命。遺伝子というのは基本、親から子への垂直移動だけど、ウィルスが遺伝子の個体間の水平移動を可能にし、生物の進化の原動力になったという。人間の遺伝子の約半分は過去に大暴れしたウィルスの残滓。取材のあとにたまたま手に取って開いた、『感染症の世界史』には、そんなことも書いてあった。偶然性はリスクでもあるけれど、可能性を広げもする。

今日も雨で歩けない。明日の英会話レッスンの宿題と予習をする。

5月20日
夜散歩ができないストレスを解消するために公園で朝ごはんを食べる。でもものすごく寒い。早々に家に帰る。

今日も午後から初対面の方へのオンライン取材。ぎりぎりまで準備し、本番へ。2時間ほどの取材のあと、来月から始めるつもりの新連載原稿を受け取る。厳しさと優しさの入り混じる文章。はじまりの緊迫感。不安は尽きないけれど、ちゃんとここで告知ができるところまでもっていきたい。

チェコのハナさんとオンライン英会話。チェコはストリクトなロックダウンが少し緩んできたそう。レストランも外の席だったら食べられるようになった、とか。宿題だったジェフリー・チョーサー「カンタベリ物語」のひとつのあらすじを説明したり、編集した本についてプレゼンしたりの一時間。

黒川検事長の賭け麻雀のニュース。

今日も夜の散歩に行けない。


5月21日
plusの定例会議オンライン版。黒川氏辞任の背景を陰謀論的にいろいろ考えてしまうけれども、そこに誘惑されすぎないように、とも思う。出来事は、そんなに簡単な話でもないと思うから。

少し仕事をしてから会社へ。新連載の入稿。ゲラ発送。オンライン打ち合わせ。打ち合わせ室でひとりパソコンに向き合いたかったけれど、Wi-Fi接続がうまくできず、仕方なく有線の自分の机で行う。みながいるフロアでモニターに話しかけるのは恥ずかしい。迷惑だとも思う。近くの席の人たちが出社してなくて助かった。

帰りは小雨のなか表参道まで歩く。一度家に帰り、食事してから今度は後楽園まで歩く。3日ぶりの夜散歩。
 


5月22日
いくつかメールを書き、矢吹透さんの人生相談記事を登録してから会社へ。

できるかぎり歩きたいので、南北線の東大前駅から四谷駅へ。そして新宿通りを紀伊國屋書店新宿本店まで歩く。4月初旬以来の大型書店。混んでる。日常がだいぶ戻ってきているのだなと思う。東京都の「新しい日常」へ戻るためのロードマップも発表される。

会社に行って、「#こんな時だから読みたい本」社員リレー27人目のプレビューづくりなど。帰りも歩いて四谷駅へ。

20時半~22時は、坂口孝則さんの「つながれない時代のビジネスを『弱いつながり』から考える」オンライントーク。手がかりにする、思想家・東浩紀さんの著書『弱いつながり 検索ワードを探す旅』は、人生が動くのは、固定された関係や環境ではなく、偶然性にこそある、と説く哲学エッセイ。ネットは自分が見たいものしか見ることができない。それを打破するには、新しい検索ワードを手に入れる必要があり、そのためには弱い絆や、無責任な観光客としての旅が有効、といったことが書いてある。久しぶりに読んでも刺激的。偶然性に身をさらすことの大事さは、最近集中して勉強している、生物の生存戦略にも通じる。それにしても、コロナ禍の自粛で、「不要不急」と言われたものは、まさにこの「弱いつながり」だったんだな。

来週には、緊急事態宣言も解除されるだろうか。強い絆と固定された環境に置かれた身体を少しずつ解放していきたい。
 

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竹村優子

幻冬舎plus編集長と単行本、新書、文庫の編集に携わる。手がけた本は、『世界一の美女になるダイエット』(エリカ・アンギャル)、『青天の霹靂』(劇団ひとり)、『職業としてのAV女優』(中村淳彦)、『快楽上等!』(上野千鶴子・湯山玲子)、『大本営発表』(辻田真佐憲)、『弱いつながり』(東浩紀)、『赤い口紅があればいい』(野宮真貴)、『じっと手を見る』(窪美澄)、『銀河で一番静かな革命』(マヒトゥ・ザ・ピーポー)、『しらふで生きる』(町田康)など多数。

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