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編集部日記

2022.10.09 更新 ツイート

プリズン・サークル 竹村優子

10月8日(土)
午後、三鷹で坂上香監督のドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」を見る。上野千鶴子さんが理事のWANイベント。今作っている本に参考になりそうなこともあって、興味があった。

「プリズン・サークル」の舞台は、「島根あさひ」という官民共同運営の男性刑務所。そこでは、対話を通じて、過去の出来事や感情を掘り下げ、更生へと向かう日本で唯一のプログラム(TC)が実践されている。この「対話」のプロセスを丁寧に描き出した撮影の期間は2年間。日本で初めての刑務所の中の撮影で、その許可が出るまで6年かかったという。

 

受刑者は最初は自分のことを語れない。その前に過去を思い出さない。思い出せないだけでなく、思い出したくないという。それでも、聞いてくれる人がいるという安心感によって、少しずつ、「向き合いたくない」幼年時代の記憶や、事件への思いが言語化されていく。

語られはじめた過去は壮絶だ。親からの暴力、母親の家出、給食だけが頼りの食事、学校でのいじめ……。「自分はずっと被害者で、少しくらい罪を犯しても、自分のほうがもっと苦しいと思っていた」と吐露する受刑者もいた。社会の被害者だった、と。

虐待のニュースに対して、「助けを求めてくれればよかったのに」というコメントがあるが、被害者は、「どうせ誰も助けてくれない」という圧倒的な諦めの気持ちを大人にも社会にも持っていることを突き付けられた。暴力は連なっているし、加害と被害は混在している。

会場で購入した書籍『プリズン・サークル』の帯には、上間陽子さんが「私たちもまた、泣いているあの子を見捨てた加害者のひとりではなかったか?」をコメントを寄せられている。
 

抉られるばかりで苦しいのにのめりこんで読んだ

坂上監督は、「『プリズン・サークル』の舞台は刑務所だが、「これは刑務所の映画」ではない。語り合うこと(聴くこと/語ること)の可能性、そして沈黙を破ることの意味やその方法を考えるための映画だと思っている」と書かれている。

「沈黙」が大事なときもある。でもそれは自ら選んだ沈黙だろう。強要された沈黙、黙らされるとは、主体性を強奪されることなのだ。

やるせなさすぎて見終わったあと茫然とするし、DVD化されていない作品なので、気軽に何度も見れないのだけど、また上映会があったら行きたいと思う。

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幻冬舎plus編集部員の仕事と日々。

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竹村優子

幻冬舎plus編集長と単行本、新書、文庫の編集に携わる。手がけた本は、『世界一の美女になるダイエット』(エリカ・アンギャル)、『青天の霹靂』(劇団ひとり)、『職業としてのAV女優』(中村淳彦)、『大本営発表』(辻田真佐憲)、『弱いつながり』(東浩紀)、『赤い口紅があればいい』(野宮真貴)、『じっと手を見る』(窪美澄)、『銀河で一番静かな革命』(マヒトゥ・ザ・ピーポー)、『しらふで生きる』(町田康)、『往復書簡 限界から始まる』(上野千鶴子・鈴木涼美)など多数。

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