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子供がずっと欲しかった

2020.05.18 更新 ツイート

はあちゅう様へ「他の誰かと違う選択肢でも、お互い、自分が納得できる人生を歩きましょう」花田菜々子

はあちゅう様

 

お手紙ありがとうございました。

さて、さっそくですが、私もひとつ誤解をときたくて。はあちゅうさんご夫妻のことを「仮面夫婦」だとは思っていないですよ!私がイメージしていたのは、もっと家の中で一切会話がないとか、配偶者を気持ち悪いと感じたりしながらも、外向けには「いい夫婦」を演じているような人たちのことです。書き方がわかりづらくてごめんなさい。

たしかに、はあちゅうさんの言う通り、24時間相手への愛をずっと感じて生きるのはとても難しいと思います。特にいっしょに生活していればささやかな生活習慣の違いや金銭感覚のズレに始まり、瑣末なことでイライラしてしまう瞬間も多いですよね。夫婦や家族の「愛」は、瞬間的なワクワクやムカつきを測るものではなく、持続的なものを問われているように思います。夫婦の愛については、恋愛がふわふわとした無責任なものと捉えられるのに対し、家族はどっしりした、揺るがないものとして語られる。

そう考えると、恋愛と結婚は真逆の性質です。でも多くの場合は恋愛的交際を経て結婚し、家族という関係に移行するというパターンなのが矛盾であり、興味深いところだなあと思います。移行がうまくいくかどうかは、お互いを思いやったりお互いを知る努力ができるかどうかによるのでしょうか(もちろん、お互いが努力してもうまく行かない組み合わせや、離れた方が幸せになれるという結論に達する、というのもあると思いますが)。

恋愛と結婚が地続きでありながらさまざまな矛盾を抱えているように、恋愛とセックス、というふたつの事象も同じように地続きと矛盾が複雑に絡み合っているように思います。人によっては恋愛とセックスはほぼ同義語(好きだからセックスしたい、セックスする相手は好きな人以外考えられない)という人もいれば、まったく独立して存在する人もいるわけで(はあちゅうさんもどちらかというとこちらでしょうか)、相手も自分と同じ考えに違いない、とか同じであるべきだ、と思うことから多くの悲劇は発生するんですよね。

そして、はあちゅうさんが書かれているように「ではここで、と突然パートナーに別れを切り出されたら、裏切られた気持ちになってしまうかもしれない」ということも、とてもよくわかります。理屈では相手が離れることもいつかはあるかもしれない、と思っていても、感情はまた別ですよね。結局どんな道を選んでも矛盾はあるし、傷つかずに生きる方法なんて存在しないんじゃないかと思います。

私の場合は、「裏切られた」という言葉は、やっぱり恋愛や結婚、家族の問題においてあまり使いたくない言葉です。他者に期待していないというか。でも、十年後に激しい情愛に絡め取られて「あんさん、わてを裏切って許されると思うとるんか!!」とか言いながら包丁振り回している人生になっていたらそれはそれで楽しみだなと思ったりもするんですが(どういう時代設定・役設定なのかは自分でも謎です)。

 

「自由」と「責任」、この言葉もまた対義語のように見えて、ほんとうに真逆なのか、考えてみたくなる組み合わせです。確かに、私は自由であることを何よりも求めていて責任という言葉は苦手なので、はあちゅうさんの言うように対極にあるとも思えます。「自由」はしばし独身や子どもを持たないこととセットで語られ、「責任」は結婚や子どもを育てることとセットで語られますね。結婚は大人同士のことなのでまだしもですが、何についても一切の責任を持たないと宣言する人が子育てをしていたら、自分から見てもやっぱり不安です。

しかし、子育てにおいて、どこまでが親の責任といえるのでしょうか? 食事と寝床と学校に行く権利。これはまず異論の余地のないところだと思います。しかし、たとえば小中学生の犯罪やいじめ加害は、もちろん親が彼らのいちばんの関係者として叱るべきですが、やってしまったことはどこまで親の責任なのでしょうか。小中学生くらいであれば、「親の自分がしっかり見ているべきだった」はまだ何となく納得がいきますが、大きな事件では、逮捕された30代〜40代の犯人の高齢の親がテレビカメラの前で謝罪をすることもありますし、自殺してしまうケースもありますよね。そう考えると、責任という言葉はときに外側の人々を納得させるために使われているようなところもあり、「無責任」な言葉だなあとも思ってしまうのです。それに、パートナーの子どもたちと接していて、親でなくても責任をもって接しなければいけないと思うことはたびたびあります。ならば、子どもと関わるすべての大人には責任が生じているとも言える気がします。

夫婦や恋人のあいだでの責任については、自分のまったくの苦手ジャンルで、正直想像がつかないです。はあちゅうさんの言う「愛し合う努力をしながら、共同生活を継続する努力をする」ということが、きっと責任に近いことなのでしょうね。私のまわりにも、相手を大切に思い、支え合っているように見える素敵な夫婦は何組か存在しますが、彼らも責任について考えているのかな? 今度聞いてみようと思います。

 

フェミニズムの本についても、たくさん教えてくださってありがとうございます。

そう、本に詳しそうな人に本を勧めるのって「全部知ってたらつまらないな」って思いますよね。心配させてしまってすみません、でも安心してください(笑)!

『アリーテ姫の冒険』、これはまったく知らない本でした。しかもはあちゅうさんのとっておきの1冊ということで、大事に読ませていただこうと思います。ベストセラーでなく、このような隠れた作品を知ることができてとてもうれしいです。

そして『82年生まれ、キム・ジヨン』はとても面白く読んだのですが、「ヒョンナム・オッパへ」の方は未読でした。キム・ジヨンもそうでしたが、韓国文学における女性って、日本と同じような状況にありながら怒りがはっきりしていて、実用書のように学ぶところも多くて興味深いです。

そして、『LEAN IN』! 私もまったく同じなのでびっくりしました。以前手に取ったときはそんなにピンと来なくて。でもフェミニズムのことや家族のことについてたびたび考えるようになってから手に取り直したら、まったくちがう輝きを放っていました。はあちゅうさんからお話を聞いて、また読みたくなっています。本は、読む時期や精神状態によってほんとうに受け取り方が変わるので面白いですよね。

そうそう、私もはあちゅうさんが未読だったらおすすめしたい本が1冊あります。『説教したがる男たち』という《マンスプレイニング》という現象を扱った本です。マンスプレイニングというのは、もしかしたらすでにご存じかもしれませんが、男性が、女性は自分よりもものを知らないはずだと考え、女性に上から目線で教えてあげようとしたりアドバイスをしてあげようとすることです。私自身読み進めるうちに「あるある」と思わずうなずいてしまい、笑いながらも、なぜ今まで気づかなかったのだろう?と怒りが湧いてきたり。でも勇気と自信をくれる1冊です。はあちゅうさんはネットなどでもそのようなお説教をされることがたびたびあるのかな?と勝手ながら思い、おすすめしてみました。

 

フェミニズムの定義も、難しい質問なのに明確に答えていただきありがとうございます。なぜそんな質問をしたのかというと、最近の私のお気に入りのフェミニズム本、上野千鶴子さんと田房永子さんの共著『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』の中にあった「自分の中のミソジニーと戦い続けてきた人をフェミニストと呼ぶ」という一文に、すごく感銘を受けてしまって。差別しない人や差別をなくそうとしている人、ではなくて、自分のミソジニーと戦う、というところが心に刺さりました。それからいろんな人に「あなたにとってのフェミニズムとは何ですか?」という質問をしたくなってしまっているのです。正解や不正解はなくて、はあちゅうさんの定義もとても素敵だなと思います。フェミニズムが進むことで楽になる男性もいっぱいいますよね。

はあちゅうさんとの文通、とても濃密で楽しい時間でした。普通だったら「こうだと決まっているからだよ」となかなか話を深めてもらえないような話をたくさんやりとりできた気がしています。

結婚や家族の話を軸にしながら、私とはあちゅうさんで、「結婚」「家族」「愛」「自由」「責任」そして「フェミニズム」まで、日常で何の疑いもなく使っているワードを、自分の納得のいくまで再定義し直す試みだったようにも思います。

お互いに、他の誰かと違う選択肢になったとしても、自分が納得できる道を歩めますように。迷いながら傷つきながらも我が道をゆくはあちゅうさんのこれからの人生、心から応援しています!

 

花田菜々子『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』

付き合うって何? 結婚する意味って? 私たち、家族になったほうがいいの? 菜々子、38歳。職業、書店員。出会い系サイトで会った70人に本をすすめまくって、いまは独身。子どもを持つつもりもな…かったはずが?! あの感動を呼んだベストセラー『出会い系サイトで70人と実際に会って本をすすめまくった1年間のこと』から2年。衝撃の実録私小説第2弾!

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はあちゅう『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』

ブロガーの妻、AV男優の夫。事実婚のまま、家族を作るのだ――。 「人生全部コンテンツ」を実践。その生きざまを赤裸々に綴る。

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4月16日発売『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』を紹介

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花田菜々子

1979年、東京都生まれ。書籍と雑貨の店「ヴィレッジヴァンガード」に12年勤めたのち、「二子玉川蔦屋家電」ブックコンシェルジュ、「パン屋の本屋」店長を経て、現在は「HMV & BOOKS HIBIYA COTTAGE」の店長を務める。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』、『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』(ともに河出書房新社)、編著書に『まだまだ知らない夢の本屋ガイド』(朝日出版社)がある。

 

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