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子供がずっと欲しかった

2020.05.05 公開 ツイート

花田菜々子様へ「私たち夫婦は相手以外への恋愛感情をお互い明かさない気がします」 はあちゅう

花田菜々子様

こんにちは。お返事とても楽しく読ませて頂きました。最近はオンライン対談イベントをたくさん見かけるので、相手の顔を見ずにコミュニケーションを取り、それを読者が見守るこの形式を逆に新鮮に感じます。

(※読者の方のために補足しておくと、私と花田さんはお互いの本を読んではいるものの、実際にお会いしたことはなく、この連載を始めるにあたってご挨拶もしていません。ここで公開されている文章だけでやりとりしています)

花田さんが書かれていた「『ありのままを書く』ことが一番難しい」に関してですが、大好きな作家さんが「文章を書く時はまずサービス精神」「相手に内臓まで見せるつもりで書く」とおっしゃっていて、影響を受けています。お金や時間を頂くからには、普段は人に隠している部分や自分でも目を背けたい醜い部分を出す覚悟が必要というその作家さんの教えが、頭にいつもあるんです。怯(ひる)むことはありますが、正直であるよう心がけているので、魅力と言っていただけてとても嬉しいです。

そして、花田さんから頂いた質問。人間の深い部分を探るのが好きだとおっしゃる花田さんが、私に対して踏み込んだ質問をしたい時にどんなコミュニケーションが理想かということですが、私はこの問いに明確な答えをもっています。

それは、「こういうことを質問して、もし失礼だったらすみません」と一言付け加えてもらうことです。

たとえば私は、初対面の人やネット上で、夫との性生活についてよく聞かれます。ここに関してもまた旦那の職業にまつわるイメージから「AV男優の妻だから、そういう話題もオッケーだろう」と思われていたり、上記のように「ありのまま」を意識したキャラクターのせいかもしれませんが、私はこの話題に関して、自分のことを事細かに話すのは嫌なんです。下品にならない程度の下ネタやセクシーな話題は好きなんですが、自分の体験談は嫌で。

だから、「きっと答えてくれるはず」という前提で質問されると、研いだばかりのスパイクで心の中に踏み込まれた気持ちになります。でも、相手が一言「こういうことを聞いて、嫌だったらごめんなさい」とか「もし失礼にあたったらすみません」と言ってくれたら、スパイクはふかふかのブーツに変わります。これが出てくるかどうかは、気持ちの軸が相手にあるか自分にあるかの違いだと思っていて……軸が相手にある場合は、「相手を理解したい」という気持ちから質問が出ます。そういう時に、嫌な気持ちになることはありません。反対に、気持ちの軸が自分にある人は、頭の中に湧いた疑問を相手にぶつけて、自分がスッキリしたいだけに思えるんです。だから乱暴に感じ、心のシャッターを閉じたくなるのだと思います。

ただ難しいのは、私が彼らにも「理解されたい」と思っていることです。だから、「なるべく答えなければ」と思ってしまうし、理解し合うことを前提に、最低限の礼儀や敬意を持ってほしいと思い、それがないと裏切られた気持ちになる。これって勝手に負荷を増やして、自分を苦しめているだけかもしれません。質問なんて適当に答えればいい、理解されなくていいと思っていたら、もっと楽にやり過ごせる気がします。

花田さんのお手紙にあった「どこからが浮気か?」。最近のインタビューでも答えた記憶があります。よくある質問ですよね、これ。みんな自分の基準に迷っていて、人の意見を聞きながら自分の基準を決めたいから、つい聞いてしまうんだろうと思います。

自分に明確な基準があればそれを貫き通し、パートナー以外の人と「浮気の定義」をすり合わす必要はないはずですが、人の基準が気になってしょうがない。これが日本人特有の「空気を読む」ってことでしょうね。色んな人の意見と照らし合わせて、自分が「世間」から大きく外れていないかを確かめたいのだと思います。宗教的基準がない日本では、「みんなの基準」が重視され、「基準」を決める議論が日々起きています。以前友人が、「日本人は無宗教なんかじゃない。日本人の宗教は『世間体』だ」と言っていたのに深く同意したのですが、「どこからが浮気か」という質問は、「世間体」をあぶり出すための踏み絵なのかもしれません。

私たち夫婦は浮気の定義に関して、これまでもお互いに伝える機会があったし、夫婦でそういう取材に答えたりしていますが、あらたまって確認し合ったことはありません。彼も私ももし恋愛感情を持つ相手が他に出来ても相手に明かさない気がします。「結婚」は「お互いがお互いを一番深く愛しているていのロールプレイング」だと私は思っており、その考えに夫も賛成のようです。なので、一緒に生活している限りは相手以外への恋愛感情をお互いに明かすことはないはずです。この先、ルールは変わるかも知れませんが、今のところはそんな感じです。

「家族に関して、私が今意識していること」へのお答えですが、自分が育った「家庭」像を基準や理想にしてしまいがちなことです。たとえばうちの夫は、毎朝11時前後に起床するので朝ごはんを食べません。早起きの私と夫は生活リズムが違うため、食事がバラバラな時もあります。私が育った家庭は朝ごはんをしっかり食べ、家族が家にいる時は全員で一緒に食卓を囲うのがルールだったので、それを私はあるべき「家族」の形だと感じてしまいます。交際初期はこの問題が「この人とは結婚できない」と思う理由になりましたし、今も「息子と夫が一緒に朝ごはんを食べることはないのかしら…」と寂しく思ったりします。

今後、事情が変わることも有りえますが、家族のスタイルは家族の数だけあっていいと思っていても、自分の中に「相手の性格やライフスタイルとは違う理想」があり、理想と現実の折り合いについて、よく考えます。

それは、花田さんがいう「こうなってほしいという期待が膨らんで相手を支配してしまうかもしれない」という恐れと似ているかもしれません。ただ、ここが私と花田さんの違いだと感じたのですが、私は「自分の人生に相手を巻き込み、相手の人生に自分が巻き込まれる。それが家族」だと思っています。花田さんは、相手の人生に巻き込まれたいと思うことはゼロですか? たとえば、彼氏のトンちゃんのお子さんのミナトちゃん、マルちゃんとの交流は、トンちゃんの人生に巻き込まれていることには入りませんか? どういったことを「巻き込み」と感じて、どういうことは「巻き込みではない」になるのでしょうか? もしよければ、教えて下さい。

 

はあちゅう

*   *   *

花田菜々子さんからのお返事は、5月9日公開予定です。

 

花田菜々子『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』

付き合うって何? 結婚する意味って? 私たち、家族になったほうがいいの? 菜々子、38歳。職業、書店員。出会い系サイトで会った70人に本をすすめまくって、いまは独身。子どもを持つつもりもな…かったはずが?! あの感動を呼んだベストセラー『出会い系サイトで70人と実際に会って本をすすめまくった1年間のこと』から2年。衝撃の実録私小説第2弾!

関連書籍

はあちゅう『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』

ブロガーの妻、AV男優の夫。事実婚のまま、家族を作るのだ――。 「人生全部コンテンツ」を実践。その生きざまを赤裸々に綴る。

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子供がずっと欲しかった

4月16日発売『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』を紹介

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はあちゅう ブロガー・作家

ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部卒。電通コピーライター、トレンダーズを経てフリーに。「ネット時代の新たな作家」をスローガンに、媒体を横断した発信を続ける。2018年7月にAV男優・しみけん氏との事実婚を発表。2019年9月に第一子を出産。『仮想人生』『「自分」を仕事にする生き方』『恋が生まれるご飯のために』(すべて幻冬舎)、『旦那観察日記』(スクウェア・エニックス)、『半径5メートルの野望』『通りすがりのあなた』(ともに講談社)など著書多数。
ツイッター・インスタグラム:@ha_chu

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