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子供がずっと欲しかった

2020.05.13 更新 ツイート

「私にとってのフェミニズムは、『自分の努力で変えられないこと』で差別されないこと」はあちゅう

花田菜々子様

こんにちは。今回もまた深いところまで切りこんだお返事をじっくり読ませて頂きました。

「結婚はお互いがお互いを一番深く愛しているていのロールプレイング」という私の言葉に花田さんはひっかかりを覚えたということですが、私はこの形を「仮面夫婦」とは思っていないんです。むしろ真逆です。ここに行き違いがあると思うので説明させてください。

夫のことは愛していますが、同時に、「愛って一体なんだろう?」という答えの出せない問いを常に抱えているんです。

嬉しい、幸せ、ムカつく、悲しい…感情は全て瞬間的なものです。なのに「愛する」は、瞬間ではなく、連続性・確信性と共に語られます。

「今この瞬間は楽しい、でも1時間後は悲しい」が成り立つのであれば、「今この瞬間は愛してる、でも明日はわからない」もありうるはず。

だけど、明日も明後日もずっと愛しているという前提でする「契約」が結婚ですよね。その愛の形は、「恋人」から始まるパターンがほとんどだと思います。

だから「2人の関係を終わらせよう」という結論に至らない限りは「愛しているていのロールプレイング」を続けるのが私にとっての結婚なんです。相手以外への恋愛感情を持って、「結婚生活を終わらせよう」と思った時は、「仮面夫婦」にはならずに、速やかに関係を終わらせると思います。

夫を愛してはいるもののやはり別の人間ですからわかりあえないこともありますし、長い人生の中で無条件に「愛してる」と思えない瞬間もあります。でも、夫婦であり結婚しているから、愛し合う努力をしながら共同生活を継続する。

その努力を続けられる限り「夫婦」でいることを選ぶ。それが私にとっての「結婚」です。

でも、きっと違う人もいるでしょうね。「結婚」という言葉に持つ印象やそれぞれが考える定義だけでも、無数にあるのだと思いました。

さらに言うなら、私は自分自身すら演じているな...と感じる時があって。本当の私なんて存在せず、自分を演じている自分がいる気がたまにします。だから「ロールプレイング」という言葉が出ました。

私にとっては、わからないなりに目の前にある愛情と関係を大切にして、愛し合っている体裁を取り続けるのが「誠実」だけど、花田さんは、他の人を好きになったら、それを伝えあうのが「誠実」と思っているわけで…捉え方が違うだけで、花田さんも私もそれぞれの理論の下で愛に対して誠実であるのだと思います。

それと、私は性的接触をそこまで大ごとに感じていないのかもしれません(だから夫の職業を受け入れられたのかも)。

性的な接触と恋愛感情は別ものだと思っていて、私は夫を愛しながら、他の人と恋愛感情抜きの性的接触を持てるタイプです。だから、性的接触の有無をいちいち結婚相手に打ち明ける必要はないと思っているんですよね。

ただ、性的接触が恋愛感情を伴ったり、別の相手が出来た、あるいは他の理由でも、夫との結婚生活を終わらせたいと思った場合はその旨を伝えて話し合うと思います。

花田さんは「ではここで。私は別の道に行きます」と言ったら、笑顔でお別れできるのがいいとおっしゃっていましたが、私は、場合によってはそれは無責任だと感じてしまいます。特に自分ではなくパートナーにいきなり「ではここで」と言われたら、裏切られた気持ちになってしまうかもしれません。

でも、この「責任」という言葉こそ花田さんが何より大切にしている「自由」と対極にあるものなのだと気付かされました。「責任」は誰かの「自由」を奪わないと成立しないのでしょうか。「自由」と「責任」を同時に成立させる方法はないのでしょうか。考えてみても答えは出ませんでした。

花田さんからのお手紙に「はあちゅうさんと私の生き方は、右に全振りするか左に全振りするかの違いだけで、意外と近いのかもしれないですね」とありましたが、私もやりとりを通じて同じことを思いました。

気持ちはとても似た場所にあるのに、発露の仕方が全然違いますね。この会話を対面の対談にしていたら表面的な違いにばかりスポットライトがあたり、ともすると記事として成立しやすい対立構造になっていたかもしれないので、こうやってお互いの考えを掘って探る形で進められて良かったです。

そうそう。フェミニズム本のことも聞かれていましたよね。上野千鶴子さん、田嶋陽子さんの著作なども読みましたが、せっかくなので、花田さんが読んだことがなければ読んでいただきたい本を3冊選びました。

1冊目は、幼少期に出会ってから大切に何度も読み返している『アリーテ姫の冒険』。王子様にたよらず、自分で自分の未来を切り開くお姫様の話です。

次に韓国で大ベストセラーになった『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による短編「ヒョンナムオッパへ」。支配的な恋人から逃れて自分の道を切り開こうとする主人公が描かれています。

そして最後に、フェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグが書いた『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』。以前読んだ時はピンとこなかったのですが妊娠、出産を経験し、育児の大変さを身を持って体感しながら読むと、まるで自分のための本のように思えてきて、再読中です。上記3冊の中に、まだ花田さんが読んだことのない本があれば嬉しく思います。

「はあちゅうさんにとってのフェミニズムとは」という質問も頂いていましたが、私は女性だけではなく全ての人が「自分の努力によって変えられないことで差別されず、不利益を被らない」ことだと思います。

専門的に学んでいる人が聞いたら浅はかな意見だと思われるかも知れませんが…!

花田さんにオススメしてもらった『スイートリトルライズ』は確かに読んだ記憶があるのにストーリーを思い出せないので、今、取寄中です。

来週届くので、花田さんから頂いた言葉を思い出しながらゆっくり読もうと思います。

さて。これが私からの最後の手紙になりますね。新刊の『子供がずっと欲しかった 』を書く過程で、結婚や夫婦関係についてとことん考えたつもりでしたが、今回の連載企画は、自分でも考えたことのない事柄や言葉の意味について考えを深めるきっかけになりました。
花田さんの言葉に反応する形で引き出してもらったものがたくさんありました。本当にありがとうございました。

まだまだ花田さんの考えを聞きたくて名残惜しいですが、お互いに文章を書く機会は今後もたくさんあるでしょうから、また次の作品を読める日を楽しみにしています!

*   *   *

花田菜々子さんからの最後のお手紙は5月18日公開予定です。

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はあちゅう『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』

ブロガーの妻、AV男優の夫。事実婚のまま、家族を作るのだ――。 「人生全部コンテンツ」を実践。その生きざまを赤裸々に綴る。

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子供がずっと欲しかった

4月16日発売『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』を紹介

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はあちゅう ブロガー・作家

ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部卒。電通コピーライター、トレンダーズを経てフリーに。「ネット時代の新たな作家」をスローガンに、媒体を横断した発信を続ける。2018年7月にAV男優・しみけん氏との事実婚を発表。2019年9月に第一子を出産。『仮想人生』『「自分」を仕事にする生き方』『恋が生まれるご飯のために』(すべて幻冬舎)、『旦那観察日記』(スクウェア・エニックス)、『半径5メートルの野望』『通りすがりのあなた』(ともに講談社)など著書多数。
ツイッター・インスタグラム:@ha_chu

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