
You are welcome. 礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが探る分断を超える作法。連載コラムスタート。
ヒップホップにこそワグナーの精神は宿る?
2019年11月30日、僕はベルリンから特急に乗り、フランフルト中央駅に降り立った。演出家、高山明によるワグナープロジェクトに参加するためだ。
19世紀のドイツの作曲家、ワグナーのオペラ「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を現代において読み解くならば、シンガーはラッパーであり、歌合戦はMCバトルなのではないか? ストリートから生まれたヒップホップにこそワグナーが描いていたビジョンが宿るのではないか? 高山さんがワグナーを再解釈するプロジェクトの1回目は2017年、神奈川芸術劇場で開催された。
劇場はストリートに作り変えられ、初日のオーディションで選ばれたラッパー候補「ワグナークルー」の面々が毎日、ワークショップイやライブという形で催される「ストリートで起こる様々な出来事」を体験していく。こうした出来事はストリートと化した劇場のあちこちで同時多発的に発生し、その模様はライブ配信されたり、ラジオのような形で放送されたりする。そして最終日には、クルーメンバーによるライブが行われる。観客は「ストリートを行きかう様々な人たち」として、初日から好きな時間に見に来ることが出来るし、ワークショップやライブなどに参加することも出来る。
こうして多くの要素が互いに影響を与えながら、日を重ねていく中でストリート、街自体が生き物のように蠢(うごめ)いていき、最終日に「なんらかのなにか」が現出するのだ。僕はオーディションの審査、バンドによるライブ、MCバトルの司会、そして言葉について考えるワークショップを担当した。
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礼はいらないよ

You are welcome.礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが思考し、試行する、分断を超える作法。