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副作用あります!?人生おたすけ処方本

2019.09.29 更新 ツイート

#2 ひとめぼれしたときに読む本三宅香帆

厳しい現実社会を生き抜く私たちには、悩みが尽きません。そんな私たちにオススメなのが、ズバリ「読書」なのです!
9月19日刊行、三宅香帆さんの『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』は、人生のお悩みに合わせて「よく効く本」を処方してくれます。本書から、こんなときにはこの名著、というお話を少し、ご紹介いたします。

 

*   *   *

 

ひとめぼれしたときに読む本:浅田彰『構造と力 記号論を超えて』(勁草書房)

効く一言:人間を狂った生物とする考え方がある。実際、有機体が、確定的な生の方向=意味(サンス)に従って、プログラムされたコースを歩んでいくとすれば、方向=意味(サンス)の過剰を自然史的アプリオリとする人間は、放っておけばどちらを向いて走り出すかわからない、大変厄介な存在である。

 
(iStock.com/R-DESIGN)

残念ながら、恋より楽しい学問は存在する。
って今ふと思ったんですけど、ほんとですかね。どうなんだろう。人によるとしか言いようがねえな。
でもねえ、今回「ひとめぼれしたときに読む本」なんでねえ。正直、きみがしているひとめぼれの恋よりも学問が面白い自信はない……。
でもでも! ひとめぼれするってことは、たぶんきみは今ガッツがある状態だ! と思う! ので、ガッツがあるときに読んでほしい本を処方するよ!『構造と力』(浅田彰)って本だよ!

はい、私も引きずられてハイテンションモードになっておりました。『構造と力』って、タイトルは有名なんですが、聞いたことありますか? 浅田彰が1983年に刊行したデビュー作、フランス哲学を題材に現代思想をまとめて、彼自身の見方――解釈といってもいいんですけど――を綴った本です。
読んでみるとたぶん「難し! 何言ってるかわからん!」ってまずは思うかもしれないんですけど、でも36年前にはこの本がベストセラーになったわけですよ。ニュー・アカデミズムという、日本のアカデミック界でもだいぶ「何言ってるかわからん!」な口調でものを書く風潮が流行した時代です。ニュー・アカデミズムは『構造と力』の出版から始まった、って言われてるんですよね。
で、私も大学入って数年経った当初、とりあえず文学部に入ってるしここはひとつ『構造と力』の一冊でも読まねば、と思って(まじめだったのでね)、手にとったんですけど。何を言ってるか、まったく、分からなかった……。難しいんだよね! 浅田彰。
でも今再読してみると、要は「むかしはがっつり社会で構造が決まっていて、自分はそれに沿って生きるだけだったけど、いまは構造がどんどんなくなって自己選択してかなきゃならん。大変だ」って話と、「なら未来では、だれかが自分に合った何かを決めてくれる社会にならないかな~」って話を書いている……んだと思います。こんなにざっくり要約しちゃうと怒られそうですが。でもこの話を今読むと、おおGoogleとかAmazonのリコメンド機能ってだいぶ浅田彰のポストモダン設定に近いのでは、とかわくわくしちゃいますね。

で、ですよ! 私が言いたいのは、「とりあえず読んどく」ことの大切さ、ってもんですよ!
難しい古典とか学術書とか、「わ、わけ分からない~」って思うときこそ、一度読んどくのがいいんじゃないかなあ、と私は思うんです。なぜならば、自分がむかしわけ分からんと思いつつ一度でも手にとった本って、もう一度読むのも、そこまで億劫じゃないから。
だってほら、一度も手にしたことのない難しそーな本よりは、一度は手にした難しかった本のほうが、年齢を重ねてから「そういえば今なら読めるかな~読んでみるか~」って思えることないですか? 親近感が、ちがうよ!
でも難しそうな本を「とりあえず読もう」って思えるのって、たぶん人生ですごく短い期間だけなんですよ。要は、難しい本を読んで背伸びをするモチベーションがあるときしか読めない。
だったら、ひとめぼれくらいしてテンションが高いうちに、「もっといい人間になりたい! ハッ浅田彰の一冊でも読んどかないと! 彼・彼女と対等になんかなれない!」って思えるんじゃないか……と……。思えない!?

まあ、ひとめぼれした時じゃなくても、ぜひ一度『構造と力』は読んでみてほしいです。日本の思想史や人文系の本の年表をつくるとしたら、必ず入る本なので。基礎みたいなもんです。
分かりやすい本ばっかり読んでるよりは、分かりにくい本を読んで、難しいなーでもかっこいいなーと思える大人のほうが、魅力的だと思いませんか?

処方:頭を冷やそう。嘘です。ひとめぼれなんて楽しいことしてる時に本読む暇ありますか⁉ それでも読みたい奇特なあなたには、「人生でテンションの高いうちに読んでほしい本」こと『構造と力』を読んでください。世の中にはガッツがあるうちに読んどいたほうがいい本があります。恋より楽しい学問がここに!

 

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著者の三宅香帆さんは、幻冬舎プラスで「>ラブコメ!萬葉集」も連載しております!こちらも要チェックです。

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三宅香帆『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』

「○○なとき」→こんな本を処方、という形式で書評していきます。 《効用一覧》 ディケンズ『荒涼館』→「まっとうに生きよう…」と仕事へのやる気が起きます。 司馬遼太郎『坂の上の雲』→おじさんおばさんであることを受け入れられます。 浅田彰『構造と力』→恋のエネルギーを学問へのエネルギーに変換できます。 高野文子『るきさん』→残業で疲れきった夜も、なんだかご機嫌になれます。 風呂にはいりたくないとき→さくらももこ『たいのおかしら」、怒られた日の夜→豊島ミホ『夏が僕を抱く』、合コン前→『風と共に去りぬ』『アンナカレーニナ』、死にたいとき→立花隆『臨死体験』ほか。 ※効果には個人差があります。

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副作用あります!?人生おたすけ処方本

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三宅香帆

1994年生まれ。高知県出身。文筆家、書評家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。大学院にて萬葉集を研究する傍ら、2016年天狼院書店のウェブサイトに掲載した記事「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」が2016年年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位に。選書センスと書評が大反響を呼ぶ。著書に外国文学から日本文学、漫画、人文書まで、人生を狂わされる本を50冊を選書した『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)がある。

Blog:https://m3myk.hatenablog.com/
Twitter:@m3_myk

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