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アルテイシアの熟女入門

2019.09.01 更新 ツイート

死と隣り合わせのJJだって、40代の夏をエンジョイしたい☆アルテイシア

朝、豆腐屋よりも早く目が覚める。

これも43歳のJJ(熟女)あるあるだ。若い頃はいくらでも眠れたし、早朝覚醒なんて遠い星の話だと思っていた。

だがJJ星人が集まると「わかる! 起きたらまだ4時とかでガッカリする」「にがりを仕込む作業もないのに」と盛り上がる。

 

睡眠は健康に直結するため、いかに質の良い睡眠をとるか? はJJの命題である。「就寝前に10分ほど保冷枕で首と肩を冷やすと、ぐっすり眠れる」など情報交換する私たち。

ただでさえJJの肉体は「寝て起きただけなのに、左腕が痺れて動かない」などSF(すこし・ふしぎ)現象が起こりがちだ。寝返りを打って寝違えたりと、睡眠中もスリル満点の日々である。

おまけに夏は、体のあちこちが痒くなる。朝起きると股間に掻きむしった跡があり「心霊現象か?」とびっくりする。

その他の夏のJJあるあるとしては「暑いのに二の腕を出せない」がある。腕が太いだけじゃなく、年季の入ったヒジの黒ずみが陰部っぽくて、自主規制してしまう。

ついでに脚を出すのも抵抗がある。JJのヒザは「ヒザ小僧」よりも「ヒザ大僧正」と呼びたい貫禄だが、それだけじゃなく、全体的に生々しいのだ。

日焼けして締まった脚ならいいのだろうが、私の生白くてプヨプヨの脚は「ママー! ウ~ウウウ~♪」と郷愁をかきたてられる。お母さん感が生々しすぎて、こちらも自主規制が働く。

「でもま、若い頃にさんざん出したからいっか」と現状に特に不満はない。不満はないが、暑いものは暑い。夏は老人が死にがちな季節だが、JJだって他人事ではない。

若い頃は夏バテにワンチャンかけてダイエットしたが、JJが痩せると命の心配をされてしまう。
数年前、テレビで森公美子を見かけて「レーズンみたいになってる!」と衝撃を受けたが、先日見た時は「よかった、巨峰に戻ってる」とホッとした。

JJはパーンとしてる方が元気ハツラツで良き。そう己に言い聞かせて、ダイエットも運動もせず、家から出ない毎日を送っている。

それができるのは、私が子ナシのJJだからだ。子持ちの友人たちは子どもの夏休みにあわせて、海・山・プール・花火・旅行へと出かけている。

それらのSNS投稿を見て「夏休みっぽいな~」とほのぼのする私だが、本人たちは「つねに死と隣り合わせだ」と戦士のように呟く。

たしかに水着ではしゃぐ子どもらの隣りには、ムスリムの女性のような彼女らが映っている。灼熱の炎天下、UV対策して完全武装で臨む母親はみんな戦士だ。

「子どもを預けて、アルの家に遊びに行っていい?」という彼女らを「どうぞどうぞ! ララバイ歌おうか?」と歓迎する私。戦士の休息所として使ってもらえれば、こんなに嬉しいことはない。

他人の子どもの成長で月日を感じる、は子ナシJJあるあるだ。「アンジェリーナ・ジョリーの息子、もう大学生か! そりゃ私も年をとるはずだわ」と実感する私。アンジーは1975年生まれの子沢山JJである。

同世代の友人の子どもたちは、高校生から乳幼児までと幅広い。去年2人目を出産した友人は、妻が43歳で夫が57歳、足して100歳の夫婦である。

「不妊治療してたけどできなくて、しばらく妊活を休んでたのよ。その間、たまたま酔った勢いでセックスしたら妊娠した」という話を聞いて「足して100歳の夫婦が酔った勢いでセックスするのがスゲー!」と友人一同、驚いた。

JJ仲間は9割方が「セックスってなんだっけ?」と遠い日の花火になっている。「うちはもう5年してないよ」「うちはもう思い出せない」とあっけらかんと語り、セックスレスに悩んでいる様子はない。

みんなセックスが人生の重要事ではないし、「セックスの有無と夫婦仲は関係ない」と実感しているからだろう。

これはJJだけに限らないと思う。2~30代の女子からも「パートナーとセックスしてないけど、お互い仲良いし満足してる」といった話をよく聞く。

ひと昔前は「セックスレスはよくない」「夫婦はセックスするべき」という価値観に悩む人が多かったが、今は「カップルの形は人それぞれ」「双方が満足してればヨシ」と多様性を認める方向に変わりつつある。

同調圧力の強い日本だが、少しずつでも変化を感じるのは嬉しいことだ。
足して100歳の夫婦でも、自身が満100歳でも、やりたい人はやればいい。恋愛もセックスも結婚も出産も個人の自由であり、他人が口出しすることじゃない。

多様性社会とは、異なる価値観・生き方・文化・属性をもつ人々が平和に共存できる社会である。「みんなちがって、みんないい」スピリットで、自分のできることをしながら、助け合って生きていきたい。

というわけで、我が家を休息所として開放している。先日、二歳児を夫に預けてうちに来たJJは「2人目の妊活で漢方を飲み始めたら、やたらムラムラする」と話していた。

「それは夫にムラムラするの?」と聞くと「夫にはしない」と即答。電車の中で見知らぬ男性にムラムラして「さすが中国三千年の歴史!」と感心してるんだとか。

彼女も夫とセックスレスで、1人目も体外受精で授かった。そういうケースは全然珍しくなく、今はセックスしなくても子どもができる時代だ。「我が日本の医療技術はァァァァァ世界一チィィ!」である。

周りの若い女子からも「恋愛やセックスに興味ないし、男と暮らしたくない」「そんな男いらずの自分だけど、子どもはほしい」「精子バンクも調べたけど、1人で子育てできるか不安」といった声を耳にする。

そういう女子たちが共同生活して子育てできる、デンデラができればいいと思う。実際、夫がいてもワンオペ育児している女子は「女同士で子育てするのがベストだ!」と力説する。

妻の夫への愛情が冷める一番の理由は「子育てに協力的じゃないこと」なんだとか。そりゃ大変な時に支えてくれない夫などいない方がマシだし、「夫 殺したい」「トリカブト」でググりたくなるだろう。

私はアマゾネス国家を建設したいわけじゃないが、女だけで安心してくつろげる場所はほしいと思う。ゆえに「アルテイシアの大人の女子校」を作って、平和にキャッキャウフフしている。

また、最近は女性向けのコラムを主に執筆しており、男性向けのコラムの依頼はほぼ断っている。というのも、過去に男性向けに恋愛やセックスのコラムを書いていた時、不快な思いをいっぱいしたからだ。

「どうせブスのババアだろ」的なクソリプが殺到したり、「いくらでやらせてくれる?」系のメールや、ペニスの画像が送られてきたり。特に汚棒画像を送られるのは本当に胸糞悪かった。

そうやってクソを投げてくるのは一部のクソであり、男がみんなクソなわけじゃない。実社会にはまともな男性の方が多い。と頭ではわかっていても、「男性のために書きたい」という気持ちがなくなってしまった。

そうして女性向けにシフトしたら、クソリプや嫌がらせメールが全然なくなって、すこぶる快適である。女が女だけの空間を求めるのは、べつに男嫌いなわけじゃなく、その方が居心地がいいからだ。

ちなみに「どうせブスのババアだろ」と言われても、こちらは1ミリも傷つかない。「フェミニストは男に相手されないブス」と言われても「てめえの相手なんかしたくねえ」が本音である。

吉田沙保里のワコールの広告に「鍛えた肉体、かっこええわ~」と惚れ惚れしたが、一部の男から「勃たない」「誰得」等のコメントがついていた。
そんな連中には、キャプテン・マーベルのキャロルの言葉を捧げる。

「I have nothing to prove you」、あなたに認めてもらう必要なんてない。

文句を言いたい奴は、吉田沙保里とキャロルの目の前で言うといい。2人で銀河の彼方までぶん投げてくれるだろう。

女がすっぴんでヒールを履かないこと、子連れの親がベビーカーで電車に乗ること、あらゆることに文句を言う奴がいるが、てめえの許可などいらねえのだ。

と、今日も元気にブリブリ怒って気分爽快である。こちらがスッキリしてるのに「そんなに怒ってばかりじゃモテないよ」とか言うてくる奴もいる。

そんな時は「I have nothing to prove you」とクールに返して、屁をぶっ放して銀河の彼方まで飛んでいこう。キン肉マンも宇宙を飛行していたし、やってやれないことはない。

私が40歳を過ぎて楽になったのは、モテや男受けの土俵から降りられたことだ。
若い頃に比べて、恋愛や性欲の対象として見られる機会は減った。それを「女じゃなくなる」と寂しく思う人もいるのだろうが、私はすごい解放感だった。

「女」じゃなく「人間」として存在できた、10代の女子校時代に帰ったような気がした。

女子校の全てが最高なわけじゃないし、多感な思春期は悩むことも多かった。それでも男のいない世界、「女」として見られない世界は居心地がよかった。

夏にはプールの授業があって、私はいつも楽しみにしていた。太ってようが無駄毛が生えてようが、からかわれたり、品評されたりしなかったから。もし共学に通っていたら、理由をつけてサボっていたと思う。

夏休みには「学校のプールで泳ぐ」という課題があった。その時は先生がいなかったので、友達と水中キン肉バスターやサボテンバランスをして、のびのび遊んでいた。

そんな10代の夏休みを、豆腐屋より早く起きた朝に思い出す。「あの頃は、鼻に水が入っても元気だったなあ」と。

JJが集まると、誰かが必ず誤嚥(ごえん)する。普通に飲み食いしてるだけなのに、なぜか気管に入っていくのだ。
これも老化現象らしいが、神が設計をミスったとしか思えない。「食事や水分は口から、呼吸は尻から」とか、もっとやりようはなかったのか。

ゲホゲホするたび「このまま死ぬんじゃないか」と不安になるが、鼻に水が入ったらもっと死にそうである。

そんな死と隣り合わせのJJだって、40代の夏をエンジョイしたい☆
というわけで、女子校時代の同級生たちと、和歌山まで推し(パンダの彩浜)に会いにいくツアーを計画している。

推しを存分にペロペロした後は、山奥にある宿に泊まって、近くの滝つぼで水遊びする予定だ。

10代の頃は水着で全身丸出しだったが、40代の我々はスピードスケートの選手のような格好で臨むだろう。それでも水中キン肉バスターやサボテンバランスをする楽しさは変わらない。

熱中症や心臓麻痺に注意しつつ、JJの夏休みを目いっぱい満喫したいと思う。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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