
オッス、謹賀新年!!
今年もJJ(熟女)コラムをよろしくお願いします。
年末に歯のかぶせが取れたけど、私は元気です。本年も皆さまの歯と歯ぐきの健康をお祈りしています。
そんなわけで私の2023年を表す漢字は「歯」だが、2022年を表す漢字は「壺」である。
これには多くの国民が膝パーカッションするんじゃないか。
7月に安倍元総理の銃撃事件があり、政治とカルトの関係が報道されて、宗教2世の存在が注目を集めた。
私の20代の友人Sちゃんも宗教2世である。
子どもの頃の彼女は母に愛されたくて、宗教活動をがんばっていたそうだ。
でも思春期になると宗教の教えに疑問を抱くようになり、信仰の強要に耐えられなくなって、家から逃げ出したという。
「“女は良妻賢母たれ”という教えを守って、母は家事育児も完璧にやり、モラハラ夫にも尽くし、宗教活動にも熱心に取り組み、いつも疲れ果てていました」とSちゃんは語る。
ところがここ数年、お母さんに大きな変化があったそうだ。
「母が50歳を過ぎてパートを始めたんですよ。そしたら宗教勧誘で鍛えた営業力で契約を取りまくって、正社員にスカウトされたんです」
「母は今フルタイムでバリバリ働いて、会社の同僚とも仲良くやってます。稼ぐようになった妻にビビって父はおとなしくなったそうで、こんなに元気で楽しそうな母を始めてみました」
そのうちお母さんは宗教の話をしなくなり、母娘は普通に付き合えるようになったんだとか。
家事育児宗教のマルチタスクをこなしていたお母さんは、もともと超優秀な女性だったのだろう。
そんな女性を認めてくれる居場所が宗教しかなかった。そのことを思うと悔しくなる。
お母さんに宗教以外の居場所があれば、Sちゃんもあんなに苦しまずにすんだのに。
『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』の著者である菊池真理子さんも、インタビューでこう話している。
菊池:どんなに苦しくても、毎日泣いて暮らすほど心のバランスを崩しても、「脱会する」という選択を母がしなかったのは、居場所がなくなってしまうことへの恐怖や不安だったのではないでしょうか。もし、家や友達が居場所になっていたら、母は別の人生を生きられたのかもしれないと、今になって思います。
菊池さんが14歳のとき、お母さんはみずから命を絶ってしまう。
菊池:私の「宗教2世」としての苦しみのいちばんは、そこかもしれません。母が信じている宗教が、母を苦しめている元凶に見えるのに、決して母がそこから離れようとせず、そして私もただそれを見ていることしかできない……。そういう状況が子どもながらに苦しかったのかもしれません。
菊池さんと私は親が自死した毒親育ちフレンズとして、以前から親しくしていた。
2年半ほど前に「宗教2世のノンフィクション漫画を描こうと思ってる」と聞いたとき「ものすんごい覚悟で決めたんだろうな」と思った。
そんな漫画を描いて世に出したら、宗教団体からどんな圧力がかかるかわからない。嫌がらせや脅迫を受けて、自分の生活や生命さえ危険にさらされるかもしれない。
私だったら怖くてとても無理だ。カルト宗教にはなるべく近づきたくない。
そんなふうに腰が引ける私みたいな人間が多いから、宗教2世の苦しみは「無いもの」にされてきたのだ。
菊池さんは穏やかで優しい人だけど、やると言ったらやる「スゴ味」がある。
「覚悟とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!」というジョルノ・ジョバァーナみたいなJJである。
へっぴり腰のJJである私は、その勇気と覚悟に痺れて憧れながら、『「神様」のいる家で育ちました』の連載を読んでいた。
しばらくして、宗教団体からの抗議により連載中止に追い込まれたときは「ああ、やっぱりか……」と落胆しつつ「集英社のバカ! いくじなし!!」と思ったけど、私もいくじなしなので人のことは言えない。
その後「まさに拾う神」と菊池さんも描いているように、連載中止になった漫画は文藝春秋から出版されることになる。
「うちは何があってもビビらないから」と出版のオファーをくれた文藝春秋の島田さんは、漫画ではメガネのおじさんとして描かれているが、私にはブチャラティに見えた。
こうして書籍化が決まり、すべての下描きを終え、描き下ろし回のペン入れをしていたとき、元総理の銃撃事件が起きたそうだ。
本作に興味を持った方は、ぜひ本を買って読んでほしい。そして願わくばベストセラーになってほしい。
この本が売れることが「宗教2世の苦しみを無いものにしてはいけない」というメッセージになると思うから。
私は本作を読んで、カルト宗教って毒親と同じだなと思った。
「自分の言うことを聞かないとひどい目に遭うぞ」と脅して、恐怖で支配して服従させる。まさに毒親の手口である。
Sちゃんも「良いことがあると神様のおかげだし、悪いことがあると信仰心が足りないせいだと思わされるんですよ。そうやって洗脳されて思考力を奪われるんです」と話していた。
カルトに洗脳された親によって、その子どもは苦しめられる。
第一話に出てくる男性の母親は「ハルマゲドンは近い」「神を信仰するものだけが救われる」「パラダイスで永遠の命が与えられる」と教える宗教を信じていた。
幼い彼が集会の途中に居眠りすると、母親に聖句を書いたムチで血が出るまで殴られた。
音楽との出会いをきっかけに「宗教をやめる」と決意した15歳の息子を「悪魔! おまえはサタンだ!」と母親はののしる。
第二話に出てくる男性は幼い頃からひどいアトピーに苦しんでいた。
彼の母親は薬は悪だと教える宗教を信じていたため、治療を受けられなかった。
宗教の道場に行くと「アトピーの人は前世で人を焼き殺してるの、その罪が回ってきてるのよ」「しっかりお参りしなさいね」と言われる。
大学生になった彼は、友人の勧めで病院に行く。病院でもらった薬を塗ると症状はおさまり、彼はたまらず嗚咽する。
「なんでこれ使ってくれなかったんだ、昔からどれだけつらかったか、なんでこれ禁じられてたんだ」
「前世で人を殺したなんて、そんな嘘の責任、誰がとってくれるんだ、母さんか? 宗教か?!」
息子から宗教をやめると告げられた母は悲しそうな顔をする。
「そういう顔させたくなくて、子どもの僕は頑張ってきたんだ」
「宗教のことなんて何もわからないまま、ただあなたを喜ばせたかった、あなたを笑顔にする方法は宗教しかなかった」
わかる、なんて軽々しく言えないけど、毒親育ちとして共感する。
幼い子どもにとって親は世界そのものだ。親からされたことを「虐待」「被害」だと認めることは、世界を否定することになる。
私も親を喜ばせたくて、スパルタ塾で殴られながら勉強をがんばった。親の期待に応える良い子になれば、愛してもらえると思ったから。
思春期になって何度も親をぶっ殺したいと思ったけど、ぶっ殺せないから家から逃げ出した。
本作に登場する2世たちは、必死の思いで宗教から抜け出した人たちだ。
一方、今も宗教と家族という檻から逃げられない人はたくさんいる。
「誰も救ってくれない、自分は一人ぼっちだ」と苦しむ人たちに、この本がどうか届いてほしい。
そして自分はカルト宗教とは無関係だと思っている人にも読んでほしい。すると「この国がカルト宗教と同じなんだな」と気づくんじゃないか。
国のトップにいる政治家が「このままじゃ戦争になるぞ」と国民を恐怖と不安で支配して、税金という名の小布施を搾り取ろうとする。
政治批判すると潰されるから、メディアは沈黙している。そして政府の広告塔のような有名人やメディアが国民を洗脳する。
私はそんなカルトに洗脳されるのはまっぴらごめんだ。このままじゃドツボにはまって思う壺じゃないか。
敵基地攻撃能力? 防衛費増額? 国民自らの責任? 財源は増税? 復興税から転用? ふざけんなクソが!!
こっちは奴隷やなく主権者やぞクソが!!
糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞ッ!!!
フー、スッとしたぜ。
新年から言いたいこと言ってスッキリしたので、餅を食べよう。これ以上、歯のかぶせを持っていかれないよう気をつけて。
餅やミルキーも油断禁物だが、実は一番危険なのがフロスである。歯と歯ぐきの健康のためにフロスをしていたら歯のかぶせを持っていかれるのはJJあるあるだが、歯の話はもういい。
「神や仏に愛されるよりも 私たち親に愛されたかったんだから」
菊池さんのこの言葉を読んで、Yくんのことを考えた。
Yくんとは、私のネトウヨの従兄である。
子どもの頃は元旦にYくんの家に挨拶に行き、凧あげや駒といった昭和の子どもらしい遊びをした。
素直でかわいい少年だったYくんは今、口を開けば韓国中国と共産党の悪口を言うおじさんになっている。
その姿はまるで父親のコピーである。
彼の父親は反共右翼おじさんで、男尊女卑のDVモラハラ野郎だった。
そいつは妻や子を殴るクソジジイだったが、それでもYくんは父親に愛されたかったのだろう。だから父の好きなものを好きになり、父の嫌いなものを嫌いになったのだろう。
子どもとはせつない生き物であるよ。
私はその叔父のことが嫌いで「おまえ左巻きにはなるなよ」とか言われて「誰がおまえじゃジジイ!!」と内心ガチギレていた。
そのため「このジジイがけなすってことは、逆に良いものなのでは?」とむしろ共産党のイメージアップにつながった。
今度Yくんに会うのはジジイの葬式だろうと思っていたが、ひさびさに年賀状でも出してみようか。
「オッス、謹賀新年!!
Yくん、元気にしてますか? 今も小林よしのりの漫画を読んでますか?
私は今フェミニストとして、共産党の議員さんと痴漢撲滅アクションやジェンダーしゃべり場をやってます。ファック家父長制」
それにもし万一返事がきたら、一度腹を割って話してみたい。
『「神様」のいる家で育ちました』を読みながら、感想を話し合いたい。
そしたら親に苦しめられた子ども同士、膝パーカッションできるかもしれないから。
* * *
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人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!
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