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アルテイシアの熟女入門

2019.08.01 更新 ツイート

ハイヒールもラブグッズも断捨離した43歳のJJ事情アルテイシア

先日、健康診断で病院に行ったら、待合室は老老男女でぎっしりだった。「胃が悪くてな、顔はええんけど」「そら眼医者いかなあかんわ~」と老人ギャグが飛び交う中、ひさびさに若手気分を味わった。

健康診断では「すこぶる健康」と太鼓判を押されたが、昔に比べると当然、体の内も外も老化している。最近は深酒すると二日酔いになり、肝機能の衰えを実感している。

老化を実感する瞬間は切ないが、そこで「逆に考えるんだ」と脳内のジョースター卿が囁く。「老化したことで、むしろ自分の命を守っているのさ」。

 

たまに深酒することもあるが、普段は二日酔いになるのが怖くて、酒量をほどほどに控えるようになった。昔はこの「ほどほど」ができなくて、どこまでも飲み続けてフラフラになり、帰り道ですっ転んだりしていた。

だが、いまや素面でも転ぶお年頃。転んだ時に受け身もとれないし、打ちどころが悪くて死ぬかもしれない。ゆえに「注意一秒、怪我一生」を標語に生きている。

43歳のJJ事情を話すと、深酒も無理だが、ヒールも無理になった。「わかる! 昔は9センチヒールで闊歩してたけど、今は絶対無理だわ」と周囲のJJたちも同意する。

筋力の衰えによって、高いヒールを履くと秒で足が疲れて痛くなるし、何より転んで死ぬのが怖い。若いお嬢さんがピンヒールで階段を駆け下りる姿を見ると「くノ一かしら?」と感動する。

そんなJJにとって、フラットシューズの流行は福音である。昔は「おしゃれは我慢」と言われたが、今は快適でおしゃれな靴がいっぱいある。エフォートレスブーム万歳だ。

#KuToo運動の石川優実さんに「スニーカーで仕事する気か?」とクソリプが殺到していたが、「女の靴を見たことないんか」という話である。わざわざ言うまでもないが、きちんとしたデザインのフラットシューズはいくらでもある。

「ハイヒールを履きたい女性の権利ガー」とテンプレのクソリプもついていたが、「ハイヒールを履くな」じゃなく「ハイヒールの強制をやめろ」と言っているのだ。

そんなこともわからないなんて、頭蓋骨の中身はウンコなの? と問いたいが、クソリパーは声を上げる女が気に入らなくて、叩きたいだけなのだ。

女叩きすることで、男の優位性をアピールしたい。そんなミソジニー族はジョジョリオンの鳩ちゃんに駆除してもらいたい。
(※かかとが硬質化して伸びるスタンド能力を持つ。敵の頭蓋骨をヒールでぶち抜く等の攻撃が可能)

また「男も窮屈なネクタイで我慢してるんだぞ!」と言うなら、ネクタイの強制をやめるように運動すればいい。そもそも「高齢者も死ぬまで働け」というこの国で、不自由な格好で働き続けるなんて無理である。

#KuTooの広がりによって、ヒールの強制をやめる企業も出てきた。NTTドコモはドコモショップの男女の店員の靴をスニーカーに切り替える方針だそうだ。

そのニュースに「やるじゃねえかドコモ」と女性陣から称賛の声があがっていた。何より称賛されるべきは、石川優実さんだろう。かつて莫大なコストをかけてクールビズが拡散されたが、今回は1人の女性がツイッターで社会を変えたのだ。

そもそも地震や災害の多いこの国で、ハイヒールを強制するなど馬鹿げている。緊急時に高いヒールだと動けないし、「生きねば」という気力すら失う気がする。

そんなわけで、生きるためにクローゼットの9センチヒールを断捨離して「思えば遠くへ来たものよ」と呟いた。

遠くへ来たものよと言えば、先日、20年来の付き合いの女友達と飲みに行った。
5歳年上の彼女は「バブルと寝た女」を自称しており、「若い頃はディスコでナンパしてきた男と、高層ビルの谷間で立ちバックをキメたわ~」と超バブルっぽい話を聞かせてくれる。

独身主義の彼女は「男に求めるものは遊びとセックス」と宣言して、セフレが途切れない女だった。それが先日「ついに生理が上がったらしい」と閉経宣言されて、ひとつの時代が終わった気がした。

ついでに彼女は「もう死ぬまでセックスはいらない」と性欲ゼロ宣言もしていた。その気持ちはよーくわかる。
私も20代はタッパにつめておすそわけしたいほど性欲が余っていたが、今や逆さに吊るしても出てこないぐらいカッサカサだ。

カッサカサのJJ同士で「性欲に振り回されずにすむって、解放感あるよね」と喜び合った。私はオナニーの回数も激減しており、今はirohaを肩や首にあてて使用している。

セックスコラムを書いていた頃、メーカーさんからラブグッズをもらう機会が多かった。「とはいえ性欲も減ったし、膣は1つしかないしな」と数年前にバイブの断捨離を行った。

こんまり流に1つ1つバイブを手に握りしめ、「これはときめく……のか?」と選別したところ、デザインがおしゃれなものが残った。JJになって性欲は死すとも、おしゃれ魂は死せず☆と板垣退助も言っている。

バブルと寝た彼女は「生理のない生活、めちゃめちゃ楽!」と喜んでいたが、その点は私の方が先輩である。40歳の時に子宮全摘手術を受けて、私の人生の幸福度は爆上りした(詳細は『アルテイシアの夜の女子会』に載ってます)

私は鼻くそをほじってティッシュがないと「食っちまうか」と思うぐらい、面倒くさがりな人間だ。そんな人間にとって、生理のあれこれは死ぬほどウザくて面倒だった。しかも手術前は、月の半分以上は股から大量出血している状態だった。

生理に苦しんだ者として、「生理は我慢するもの」という価値観が変わってきたのは嬉しい。

オンラインサロン「アルテイシアの大人の女子校」のガールズも「月経カップは便利で快適」「シンクロフィットはトイレに流せていい」「ピルを飲んで生理痛とPMSが軽くなった」「ミレーナを入れて生理のストレスから解放された」等など、情報交換している。

余談だが、私はタンポンを鼻に入れたことがある。特に理由はなく、ふと「入れてみようかな?」と思いついたのだ。
それでグッと押し込んでみたら、鼻の穴が裂けそうになった。膣と違って伸縮性がないので、鼻からスイカは絶対出ない。

そんな知見を得ながら、紐がぶら下がった状態でニッコリ笑って自撮りした。スマホのアルバムを開いてその画像が出てくると「何してんねん?」とギョッとする。

鼻つながりのJJ事情といえば、先頃、1本だけ長い鼻毛を発見した。定規で計ったら14ミリもあってびっくりした。

「鼻毛 1本だけ長い」でググると、こちらも加齢が原因らしい。加齢によるホルモンの減少により、毛周期のコンロールが効かなくなり、1本だけ長い鼻毛や眉毛が生えるという。

ホルモンの減少と聞くと、JJは「更年期……?!!」と戦慄する。30代後半は「更年期かしら~」とネタっぽく言っていたが、40を過ぎるとガチである。

産婦人科医の友人によると、7月を過ぎると「やたら汗が出るんですけど、更年期でしょうか?」とJJたちが病院を訪れるそうだ。「この季節はみんな汗が出ますよ」と答えるのが、夏の風物詩なんだとか。

友人いわく「今はホルモン治療が進化してるから、更年期をそこまで恐れなくていいよ」とのこと。こういう専門家の意見はありがたい。

その他のJJ事情としては「ウンコをきばるのが怖い」がある。脳の血管が切れるんじゃないかと不安になるし、もちろん痔も怖い。

痔に関しても、加齢による肛門付近の筋肉や周囲の組織の衰え、および運動不足による便秘などから、リスクが高まるそうだ。

拙者は毎日快便侍でござるが、たまにウンコが硬い侍になる。鋼のウンコを錬成しながら「アナルが裂けるかも」と恐怖して「ウンコが硬い」でググったところ、肛門科医のコラムがヒットした。

その記事によると、便の水分不足によって、肛門の手前でウンコが固まってしまうそうだ。歯磨き粉の先端がカチカチになって出なくなるのと同じらしい。

水分補給はアナルを守るためにも大事ナリ☆とJJ手帳に刻みつつ、「人が肛門科医になる理由」について考えた。

もちろん人を助ける立派な職業だが、「肛門科医に、俺はなる!」と志したキッカケは何だろう? 家業を継ぐ以外だと、ウンコが好き、アナルが好き……? 私のコラムもウンコやアナルが頻出するので、わかりみがある。

勝手にわかるのもアレなので、医者の女友達に聞いてみると「外科から肛門科に移る人が多いんですよ。というのも、痔で死ぬ人はいないから」とのこと。

「人の生死に関わる大手術をずっとやってると、だんだんキツくなってきて、ゆったりした働き方に変えたくなるんでしょうね」

その気持ちはよーくわかる。私も無理がきかなくて、ゆったりした働き方しかできない。この「無理がきかなくなる」を自覚するのは、大事だと思うのだ。

日本人は「がんばれ! 諦めるな! 忍耐! 努力!」と教育されてきたため「いやもう無理やし」と認めるのが苦手だ。がんばらないことに不慣れなため、限界までがんばり続けて、ぶっ壊れてしまう人は多い。

それに自分が我慢していると「おまえらも我慢しろ」と他人に対して厳しくなる。「うまくいかないのは本人の努力不足」と自己責任論を刷り込まれると、政治や社会の問題にも気づけない。

日本人はもう少し「がんばらないこと」を学んだ方がいい。無理や我慢が苦手な方が自分を守れるし、自分に合った居場所を見つけやすいと思う。

私はアスファルトをぶち破るド根性大根じゃなく、割れ目自慢のセクシー大根になりたい。メッシュ状に生えた股白髪がチャームポイントだ。

陰毛に白髪が混じるお年頃なのに、若い頃と同じようにがんばるのは無理である。私は「JJだもの、いろいろ衰えるのは自然なこと」と受け入れて生きている。むしろ「若い奴に負けてたまるか!」みたいな年寄りの方が、面倒くさいだろう。

私はもともと先輩風(かぜ)を吹かすのが苦手で、おばあさん風を吹かしている。「アタイについてきな!」じゃなく、ガールズの後ろをへっぴり腰でついていき、積極的に頼っていくスタイルだ。

「これわからないから教えて」「できないから助けて」と頼ると、みんな優しい孫のように助けてくれる。年寄りが「べ、べつにあんたの助けなんていらないんだからね!」とツンデレぶってもスベるし、自分の首を締めるだけだ。

うちの父親が自殺した原因もそこにあると思う。彼は昔みたいにバリバリ働けない自分がみじめで、他人に頼ること、助けを求めることを情けないと思っていたのだろう。

私は幼い頃から、人一倍できないことが多かった。他人と比べて落ち込んだりしたけど、今は逆によかったと思う。「人に頼るな、自分で努力しろ」と言われても、できないものはできないし、そのお陰で人に頼ることを学んだから。

年をとるとできないことが増えて、誰でも助けが必要になる。そんな時、優秀ながんばりやさんはできない自分を責めるだろう。

自分を責めがちな人は「まあいっか」を口癖にしてほしい。「まあいっか」と声に出して言ううちに、本当に「まあいっか」という気分になるから。

私は1日30回ぐらい「まあいっか」と唱えて生きている。本日も「部屋が散らかってるけど、まあいっか」と床に寝転がって、irohaで肩や首をマッサージしようと思う。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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