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アルテイシアの熟女入門

2019.07.01 更新 ツイート

老アベンジャーズに憧れるJJが、ジェネレーションギャップについて考えた アルテイシア

映画館で『アベンジャーズ エンドゲーム』(上映3時間)を見た時、私は中盤でトイレに全力疾走した。宇宙一抱かれたいアライグマぐらいのスピードで走ったと思う。
一方、20代女子から「私はトイレに行かなかったです」と聞いて、膀胱力の差を実感した。

そんな頻尿のJJ(熟女)がジェネレーションギャップについて考えてみた。

ファッション面でいうと、JJはシャツをインするのに抵抗がある。「シャツのイン=ダサい」という刷り込みがあるため「本当にこれで合ってるのか?」と疑心暗鬼になりがちだ。

疑心暗鬼になりつつ、シャツイン+ワイドパンツで出かけると、裃(かみしも)で正装したお侍さん気分に。月代(さかやき)にして、殿中でござる! と討ち入りしたくなってくる。

 

とはいえ、オーバーシルエットが流行なのはありがたい。若い頃は試着室でジャンプしながらタイトな服に体をねじこんでいたが、JJは締めつけが無理なお年頃。
おしゃれは我慢というが、我慢が死に直結するので、快適でおしゃれな服が増えたことを喜んでいる。

若者がフリック入力する指さばきに「高橋名人みたい!」と感動する私は、昭和生まれの43歳。ノロノロとスマホを打ち、無人レジにオロオロする自分を旧人類だと感じている。

20代女子と旅行した時は、彼女がお店も地図も全部ササッと調べてくれて、へっぴり腰で後ろをついていくだけだった。
若い人の情報感度と情報収集力はすごい。「若い奴はものを知らない」とディスる老害よりも、よっぽどものを知っている。

若い女子から「ツイッターとインスタのアカウントを7つ使い分けている」といった話をよく聞く。リアル垢・趣味垢・オタク垢・美容垢・フェミ垢・鍵つき日記垢・仕事の情報収集垢……などを使いこなしているそうだ。

そんな彼女らを見ていると「呼吸するようにツイートするなあ」「短文をまとめるのが上手だなあ」と感心する。

一方、シニアに人気のフェイスブックでは、ぎっしり長文派が多い。私はフェイスブックのおじさん仕草につい注目してしまう。

阪急電車の地獄のミサワ系広告が炎上したが、おじさんは「全力で駆け抜ける」「魂を引き継ぐ」とか、プロジェクトXっぽいこと書きたがる。そういうのを見ると「バブルっぽいなあ」としみじみ思う。

若者にとってはミソもクソも一緒だろうが、43歳の私は氷河期世代で、その上がバブル世代にあたる。バブル世代はウェイ感が強く、ゴルフ・スキー・車・ハワイ・サザンが好きなのが特徴だ。

59歳で死んだ母親も「サザンの桑田くん、最高!」みたいなことを言っていた。これだけ長く活動しているサザンはすごい。チェッカーズみたいに金で揉めなかったのだろう。

中学教師をしている女子から「最近の中学生はサザンどころか、あゆも知らない」と聞いて驚いた。「そもそもみんなテレビを見ないんですよ。時代劇を見たことない生徒が多くて、江戸時代の説明とか苦労します」とのこと。

私が子どもの頃は家でいつもテレビがついていて、『暴れん坊将軍』や『遠山の金さん』が流れていた。一方、今の子どもや若者が見ているのはユーチューブだ。
小中高生の子をもつ親は「本当にずっとユーチューブばっかり見てる」「小学生の息子はユーチューバー教室に通ってる」と話していた。

「街で人だかりができていて、人気のユーチューバーたちが撮影してたんですよ。若い子はキャーキャー言ってたけど、私は誰も知らなくて、自分は旧人類だと思いました」と30歳女子が話していたが、それなら私はアウストラロピテクスだ。

だがこのアウストラロピテクスにも「自分の見たい情報・見たくない情報をフィルタリングしたい」という感覚はわかる。私も最近はめったにテレビを見ないが、つまらないだけじゃなく、不快なものが多すぎるからだ。

テレビをつけると、老害・セクハラ・パワハラ・ジェンダー差別をじっくりことこと煮つめた地獄が流れてくる。「そんなもの見たくない」と若者がテレビ離れするのは、時代が進んでいる証拠だろう。

以前も書いたように、大学で教員をする友人たちは「今の学生は『女だから』『男のくせに』みたいな感覚は本当に薄くなってる」と声をそろえる。「りゅうちぇるみたいなジェンダーレス男子が人気なのもよくわかる」とのこと。

若者にヒアリングすると、アラサー男子は脚や腕の毛の処理しているし、20代はヒゲや脇毛の永久脱毛に通う男子も珍しくないんだとか。
全身毛ダルマの夫を持つJJとしては、床に毛が散らばらなくていいなと思う。

「うちのバイトの男子大学生は、日焼け止め+ファンデを塗ってる子やSK-II でスキンケアしてる子もいますよ」とのことで、私より意識が高いし金もかけている。それも「異性にモテたい」とかじゃなく「自分自身が満足したい、快適でいたい」というマインドのようだ。

男女共に、若者のモテ離れも進んでいる。私の20代は絶賛モテブームで、エビちゃんOLや愛され女子が流行っていた。一方、今はパーソナルカラーや骨格診断が人気で、モテや男受けより「自分に似合う恰好、好きなファッションをしたい」という女子が多い。

「それだと恋愛にならんじゃないか」と嘆くお年寄りがいるが、「若者は恋愛するべき」という発想が老害なのだ。そんなものは個人の自由で、他人が口出しすることじゃない。

私の周りを見回すと、しっかり者の30代女子が20代男子と結婚するケースが増えている。
彼女らいわく「年上の方が合うと思ってたけど、いざ付き合うと男尊女卑で無理だった」「年下はリベラルで付き合いやすいし、とにかく素直で優しくてカワイイ」とのこと。

年下のパートナーはお弁当とか作ってくれるそうだ。俺も源次郎のこさえたカネモチを食いてえな(やっぱり毛ダルマが好きなJJ)。
若い世代の男性ほど「男も家事育児して当然」という意識が高く、そういう面で時代はよくなったと思う。

当コラムの担当JJは、新人時代に上司から「焼き鳥を串から外さない女は気がきかない」と言われて「焼き鳥は串から食うのがうめーんだよ!」と暴れたくなったという。軟骨がうめーんだよ軟骨がァ~ッ!!
軟骨とか砂肝とかめっちゃ外しにくいし、下手したらスポッと飛んでいくし、そういう悪しき文化がなくなったのもよかった。

中学教師も大学の教員も「今の子たちは男女の垣根がなく、仲がいい」と声をそろえる。

私の大学時代は「お前みたいなブスに勃起する男はいない」とか平気で言う男がいた。「女をディスる俺、イケてる」的な感覚があったと思う。

小学生の時は、男子が女子をいじめたり叩いたりするのが日常の風景だった。女性読者から「男子にいじめられたトラウマで男性恐怖症になってしまった」といった相談もよくもらう。

一番ムカつくのは「男は相手が好きな子だからいじめる」とほっこりした話にする奴だ。それは「相手がセクシーだから痴漢した」「魅力的だからストーカーした」と、男の加害の責任を女に押し付けるのと同じだろう。

小学生の子を持つJJたちから「昔に比べたら、女子をいじめる男子はすごく減ってる」「乱暴な男の子は少ないよ」と聞いて安心した。我々の子ども時代は「男の子は腕白な方がいい」「ナヨナヨするな」というジェンダー意識がもっと強かった。

かつ、体罰や暴力を容認する空気があった。私の通っていた小学校にも、生徒を殴る教師が何人かいた。いずれも男性教師で、忘れ物をしたとか些細な理由で子どもに暴力をふるっていた。

もし今そんなことをしたら、保護者がグレッチとベンジーを手に乗り込んでくるだろう(ベンジーはおそらくシンナー系の劇物だと思う)

中学受験のために通っていた塾では、点数の悪い生徒が並ばされてビンタされるルールがあった。戸塚ヨットスクールもびっくりだ。戸塚ヨットスクールがわからない若者はフリック入力でググってほしい。

大の男にビンタされるたび、私は「死にたい」と思っていた。私を殴った奴らがまだ存命だったら、一列に並べて介錯したいナリ☆とブッコロ助は殺る気まんまんだ。

「昭和はよかった」と振り返る老人がいるが、あんな人権意識のない時代がいいわけあるか。

体罰のニュースが話題になった時、フェイスブックで体育会系出身のおじさんたちが「愛のある体罰なら許される」と投稿していた。

条件つきで暴力を許すことが、虐待、DV、性暴力、いじめの容認につながるのだ。虐待する親は「子どもを愛しているから、しつけのために手を上げた」と主張する。
そもそも暴力で人をコントロールすることが間違っているし、子ども達にもそう教えるべきだろう。

そして、体罰したのが女の指導者だったら「ヒステリー」「女は感情的」と批判されるんじゃないか。男の怒りや暴力を「男らしさ」のように語るのはもうやめよう。

「男は強くあれ」というプレッシャーが、弱い者を叩いて、己の強さを証明したい心理につながるのだ。

そう考えると、ジェンダーレス男子やフェミニンなオトメンの増加は寿ぐべきだろう。地獄が見える化したクソゲ-社会でも、若者はアップデートしているのだ。

20年前、私が新人だった頃も「最近の若者は根性がない」だの「打たれ弱い」だの言われていたし、子どもの頃は「ファミコンばかりして本を読まないから、文章力がない」と言われていた。

どの時代にも若者批判したい老人はいて、「最近の若者はなっとらん」とロゼッタストーンにも刻まれている。
自分より下の世代を叩いて、「自分の方が優れている」と優越感を満たそうとする、そんな老害のオナニーに付き合ってやる必要はない。

広告会社時代、上司に「お前は何のために働いてるんだ?」と詰められたが「給料と社会保険のためです」とは絶対言えない空気だった。「魂を引き継ぐため」とかが模範解答だったのだろう。

かつての私は『働きマン』の松方弘子のような仕事人間になれない自分にコンプレックスを抱いていた。一方、今の若い子たちは「私が働いてるのは、推しのためです」とキッパリ宣言して「だから定時で帰ります」と趣味やオタ活を楽しんでいる。

そんな姿を見ると「頼もしいな」と励まされる。去年、仕事人間だった父親が自殺して「仕事を生きがいにすると、人生詰むな」と実感した。仕事以外に打ち込む趣味や推しがあれば、彼も死なずにすんだのかもしれない。

バブル時代に「24時間戦えますか? ジャパニーズビジスマン!」というCMが流行ったが、その話を若者にすると「24時間働いてる間、誰が家事や育児をするんですか?」「そんなブラックな会社ヤバいでしょ、そりゃ過労死しますよ」との感想だった。まったくその通りだし、若い人が離れていく会社に未来はない。

大学の教員の友人が「今の学生は『無理してでもド根性でがんばる』みたいな意識は薄いよね」と言っていたが、私もド根性大根みたいなガッツはないし、もっと遅く生まれたかったと思う。

日本人は無理しすぎ・我慢しすぎ民族でやってきたから、それもポジティブな変化だろう。自分を大切にしないと、他人も大切にできない。
ド根性でがんばる人はすごいと思うが、部活のしごきのように「俺と同じ苦しみを味わえ」と押しつけるのは、絶対に間違っている。

私もシニア側のJJだが、老害にならないように気をつけたい。そして老害に苦しめられる人々がいたら、助けになりたいと思う。

その時は全身ヒョウ柄に溶接工っぽいサンバイザーを装着して、ママチャリで駆けつける。右手にハンマー(日傘)、左手にガントレット(UV手袋)で武装して、最強の部族「関西のおばちゃん」になりたい。

それって超クール! と憧れるJJは、老アベンジャーズの一員として共に闘ってほしい。アライグマや木の参加も大歓迎だ。

 

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アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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