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アルテイシアの熟女入門

2019.06.01 更新

女の園を愛するJJは棺桶に百合の花を入れてほしいアルテイシア

私は女子校が好きである。中高と女子校育ちで、現在も「大人の女子校」というサロンを主催しているし、老後は女だけのデンデラを作りたいと夢見ている。

共学出身でも女子校マインドの濃い女子はいて、私はそういうタイプと仲良くなりやすい。
女子校マインドとは「異性より同性に親しみを感じて、仲間意識がある」「異性より同性といる方が楽しいし、居心地がいい」といったマインドだ。

 

中高時代は、男のいない環境でのびのびと過ごせた。男受けやモテといった概念が存在しない世界。「男にどう思われるか」を忖度しなくていい、「女のくせに生意気、出しゃばるな」と叩かれない世界。

そんな世界では「女」じゃなく「ただの人間」として生きられた。結果、私はパンツが見えても平気な人間になったが、最近は「JJ(熟女)のパンツを見る人が気の毒」と配慮するようになった。40を過ぎてたしなみが身についたのかもしれない。

「スカートを両手でバサバサして、ブラはスケスケ」が女子校の夏の風物詩だ。女子校出身者たちは「当時は『隠す』という概念がなかった」と振り返る。

「体育祭には父兄も来ているのに、グラウンドで堂々と着替えていた」「教室の窓のカーテンを開け放って着替えるため、近隣住民から苦情がきた」といった体験談も寄せられた。

ちなみに「体育の後は制汗剤をシューシューしまくって、教室がアヘン窟みたいになる」も女子校あるあるだ。

そんなアヘン窟育ちが共学の大学に進むと、男子の前で脇に制汗剤をシューッとやってギョッとされる。
同級生はサークルの合宿で「隠れて着替えたら意識してるみたいで変かな?」といきなり服を脱いで「そこは意識しようよ!」と周りに注意されたという。

女子校時代の自分は「ただの人間」だったし、ブラや乳は「ただの衣服」「ただの体の部品」だった。性的対象として見られない世界は、気楽で安心な楽園だった。

女子校には大和撫子的なイメージがあるが、実際は「豪放磊落」「自由闊達」といった四字熟語が似合う。

我が母校ではクラスメイトが教室の後ろで相撲をとって、後ろの黒板に勝敗表を書いていた。別の女子校出身の友人も「昼休みは教室の後ろでレジャーシートを広げてピクニックする子や、枕を持参して昼寝する子もいた」と語る。

「2時限目が終わると一斉にガツガツ早弁を始める」「冬場はストーブでスルメイカや焼きおにぎりを焼いていた」「廊下を歩きながら納豆を食ってる子もいた」など、カオスである。

カオスであるが、時には儀式も行われた。推しのバンドが解散したり二次元キャラが死んだりすると、教室で葬儀が行われて、ファンじゃない子も参列して遺族を慰めていた。
その際は後ろの黒板に遺影が飾られ、花やお菓子が供えられた。後ろの黒板がめっちゃ活躍している。

「うちの女子校はオタクが多かったけど、オタク差別がなかったかだらと思う」という意見もよく耳にする。

たしかに、中高時代は自分の好きなものを隠さなくてよかった。大学進学後、漫画家のサイン会に行った話を男子にしたら「うわ、お前オタクだな!」とバカにされて驚いた。自分がわからないものをバカにするってバカじゃねえかと。

大人の女子校のメンバーからも「うちの母校もみんなロッカーに同人誌を入れて自由に読めて、同人図書館って感じでしたね」「BL本をクラス中で回し読みして、『純情ロマンチカ』は学級文庫になってました。うちのクラスは『腐女子のF組』と呼ばれてましたよ」との声が集まった。

そんな開けっ広げな世界は、風通しがよかった。うちのクラスは『シティーハンター』が学級文庫になっていて、みんな後ろの黒板にXYZを書きまくっていた。そこではオタクもギャルも優等生も、同じ漫画を読んでキャッキャしていた。

もちろんケンカや仲違いはあったし、嫌いな子や気の合わない子もいた。けれども、ヒエラルキーやカーストは存在しなかった。女子校が海だとすると、いろんな島々が存在して、文化が違っても認め合って、平和に共存している感じだった。 

「わかる! うちもそんな感じでした」と女子校育ちは同意する。女子校には多様性を認める寛容さがあったと。かつ、そこには百合があったと。

「女子校って男がいなくて退屈だろ?」と退屈な男に聞かれたりするが、私は共学に憧れたことはなかった。女の園には百合が咲き乱れていたからだ。

中高時代は憧れの先輩にキャーキャーいって、文通や交換日記をしていた。
中1の時は軽音部の先輩に憧れて、せっせと手紙を書いていたなあ。「by the way」とか習いたての英語を使って、ルーズリーフの折り方に凝ってたっけ。安物のコロンを手紙につけたりもしたなあ。

これらは黒歴史じゃなく、麗しの百合歴史である。大人の女子校のメンバーからも様々なエピソードが寄せられた。

「体育祭で高3が造花をもってワルツを踊り、その花を後輩にゆずる伝統がありました。後輩からすると、好きな先輩に『花をください』と公開告白するイベントで、ワルツが終わると後輩たちが『キャアアアアアーーーー!!!!』と絶叫しながら走ってきました」

怒号と土煙をあげて突進するJK軍団、古代スパルタ軍のような迫力である。

「毎年、クリスマスの生誕劇の配役は全校投票で決まりました。ヨセフ・マリア・ガブリエルは高3がやるんですが、ヨセフは学年1のイケメン、マリアは学年1の可愛い子、ガブリエルは学年1の美人が選ばれる人気投票になってました。私は中3の時に羊飼いのおっさん役に選ばれて、ヨセフ先輩とからめて胸キュンでした」

そんな話を聞くだけで胸キュンが止まらない。誰か救心をください! 
女子校育ちは百合魂が宿っているため、卒業後も女子愛が強い。美人に対する嫉妬とかもなく、「ありがてえ」「なんまいだぶ」と素直に尊ぶ。

私も素敵な年上女性には「お姉さま…トゥンク」となるし、さらに年上の女性には「ママ~~~! ウーウウウー」とフレディのようにオギャる。年下女子には「なんでこんなに可愛いのかよ」と孫という名の宝物気分だ。

このように女子愛の強い私は、男尊女卑アレルギーもきわめて強い。
前々回も書いたが、「共学の大学に進んでショックを受ける」は女子校育ちあるあるだ。私も女の園を飛び出した瞬間、男尊女卑にぶん殴られた。

大仏を建立するわけでもないのに、クラスでもサークルでも「男がリーダーで女がサブ」が当然だったし、「女は男に従い男を立てろ」という暗黙のルールがあった。

女子校ではそれぞれが個性や得意分野を発揮していたのに、共学では「モテないブス=最下層」として扱われた。

女子校にはそんな身分制度はなく、みんな平等な「人間」だった。母校は自主自立系のリベラルな女子校だったので、保守的な国立大学とのギャップが大きくて、最後までなじめなかった。

でも、なじめなくてよかったと思う。男尊女卑アレルギーが強いと、鼻水や目やにが止まらなくて苦しいのは事実だ。だが「こういうものだ」と無意識に性差別やミソジニーを受け入れずにすんでよかった。
そうじゃなければ今こんなコラムも書いてないし、大人の女子校も作ってないだろう。

「置かれた場所で咲きなさい」というが、私はド根性大根みたいなガッツはないし、自分に合った場所で生きたい。ゆえに、デンデラである。

老後、共学の老人ホームには絶対入りたくない。ババアになってジジイに偉そうにされたら「どうせすぐ死ぬし、KILLナリよ」とブッコロ助になるだろう。

私は毒親育ちで家族運は悪かったが、女運には恵まれたと思う。新卒で入った広告会社も周りはサラッとサラサーティーな女性が多く、女子校マインドが濃厚だった。
私はポンコツだったので仕事はつらかったが、いつも女の先輩がかばってくれて、相談に乗ってくれたから、なんとか続けることができた。

20代女子にヒアリングすると「女の先輩たちが『若い子は社長から離れて! セクハラは我々が受けて立つから!』と守ってくれた」「妊娠がわかった時に『産んだら戻ってきてね! 待ってるからね!』と言ってくれて心強かった」といった声が寄せられた。

私自身も女性に救われてきたから、自分もそうしたいという思いが強い。なので「女の敵は女」的な発言を聞くと、ドラゴン殺しを振り回したくなる。それは剣というにはあまりにも大きすぎたナリ。

女子校時代も意地悪な子はいたが、それは性別じゃなく人間性の問題だ。女も男もいろんな「人間」がいるのに、「女子校ってドロドロしてそう」と嬉しげにいう輩がいる。

女の敵は女、女はドロドロして陰湿、女の本性は醜い。そういった女ディスこそが最大のミソジニーである。かつ、そうやって女を同士討ちさせれば、真の敵から目をそらせられる。

敵はmetooのように女たちが連帯して声を上げるのが怖いのだ。それをされると、女を差別して搾取できなくなるから。

女たちが「性差別と戦って社会を変えるぞ! スパールター!!」と挙兵すれば、自分たちは権力者の玉座にいられなくなる。だから女を分断させようとする、そんな策略に乗せられてなるものか。

そんな連中にシスターフッドを邪魔されてなるものか。

ゆえに、デンデラである。価値観の合う仲間でつながって、怒りや傷つきをシェアして、HPを回復させないと戦えない。そのために私は大人の女子校を作った。

とはいえ熊を屠って血の盃で乾杯してるわけじゃなく、みんなで芋ほりやお花見やバーレスクに出かけてキャッキャウフフしている。来月は牧場遠足で羊やうさぎと触れ合う予定だ。

思い返せば、私は物心ついた頃からデンデラ願望が強かった。小学1年の時に「少女だけの泥棒一味が共同生活する物語」を書いていたし、中学時代は『クララ白書』や『アグネス白書』に憧れて「将来は女子寮を作る!」と友人に宣言していた。

前世はガチでデンデラ住みだったのかもしれない。または尼寺で薫尼(くんに)と名乗っていたか。

なんにせよ、私は置かれた場所で咲くのではなく、自分で居場所を作りたい。老後、足腰が弱って相撲はとれなくても、同人図書館があれば退屈しないだろう。こまめに萌えを摂取していれば、認知症予防になりそうだ。

私には子どももいないので、遺産はデンデラに寄付したいと思う。女子校メンバーには弁護士もいるので、遺言状の作成もバッチリだ。

そしていざ死亡した暁には、後ろの黒板に遺影を飾って、葬儀を行ってほしい。棺桶にバターとニンニクを仕込んで「めっちゃ美味しい匂いがする??」と火葬場をどよめかせたいが、ハンニバルみが強いのでやめておこう。

やはり私の棺桶には百合の花を入れてほしい。それで「ラッセーラー!!」と皆が陽気に棺桶をかついでくれたら、最高のフィナーレになるだろう。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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コメント

aghhvffdf  女の園を愛するJJは棺桶に百合の花を入れてほしい|アルテイシアの熟女入門|アルテイシア - 幻冬舎plus https://t.co/zJ4zD2DtmS 2日前 replyretweetfavorite

1026mymkmr  女の園を愛するJJは棺桶に百合の花を入れてほしい|アルテイシアの熟女入門|アルテイシア - 幻冬舎plus https://t.co/oMqmuodFsH 2日前 replyretweetfavorite

でぼら  私多分「同世代しかいない空間」が苦手なので、女子校も大学もきつかったんだな…って思った。→女の園を愛するJJは棺桶に百合の花を入れてほしい|アルテイシアの熟女入門|アルテイシア - 幻冬舎plus https://t.co/RY5FWNd9Uy 4日前 replyretweetfavorite

アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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