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アルテイシアの熟女入門

2019.02.07 更新

金田淳子のJJ書評

40代がこんなにラクだなんて思っていなかった。金田淳子

この度、大人気連載「アルテイシアの熟女入門」が文庫『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』として発売されました!JJ(=熟女)のゆる楽しい生活が満載の1冊ですが、ここでは発売を記念して、JJの先輩でいらっしゃるところの金田淳子さんに読みどころを存分に語って頂きました。

*   *   *

本書(『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』)のタイトルを見て、「オッ、面白そうじゃん」と興味を持ってくれているのは、まさに今、または数年後、40代に突入せんとするJJ(熟女)の皆さんではないかと思う。ようこそ、四十路の世界へ。1973年生まれ、公称17歳の45歳、JJど真ん中の私が、著者のアルテイシア氏とともに、まずは歓迎したいと思う。

とはいえ、私も20代の頃は、こんなに40代がラクだなんて思っていなかった。むしろ「女は若いうちが花」といった有害な言説に惑わされて、加齢に極度の不安を感じていたと思う。10代の頃などは、20代になることすら、可能性が狭まる気がしてやや恐ろしく感じていた。

しかし実際にJJになってみたら、なんてことはなかった。精神的な側面では、若い頃よりも格段にラクになった。アルテイシア氏と同じく、私もそう思っている。実体験に基づくそんな発見と知恵が、本書には溢れている。そういう意味では、「40代なんて想像できない。想像したくない」という、10~20代の若い方々にも、ぜひ本書をオススメしたい。

とはいえ(二度目)先にも書いたように、私も若い頃ほど加齢を恐れていたし、40代と聞いて恐れをなしてしまう気持ちもわかる。特に肉体の衰えは、どうしても避けられないものだろう。私の場合は運動ぎらい・出不精も重なり、30代に入ったあたりから、身体能力がぐんぐんに落ちていった。30を過ぎたころ、旅行先で船から陸への40~50㎝ほどの幅を飛び越えるとき、余裕をもって飛んだつもりなのに、2回連続で落ちたことは、今も忘れられない。40代ともなると、全身の肉が地球の重力に逆らえなくなったし、常に身体のどこかが故障している状態である。また最近、自分の頭皮が臭いような気がしていたが、これが加齢臭から来るものであり、おそらく確実に臭い(気のせいではない)ということを、この本を読んで初めて知らされた。フリーランス文筆業あるあるだが、私はあまり家から出ないため、自分の老化についてかなり鈍感なのだ。おそらく他にも自分が気づいていない老化現象、小じわ、シミが100は下らないだろう。

なんだ悪いことだらけじゃないか、と思うかもしれないが、本書を読んでいると、そんな数々のJJあるあるを発見し、「あったよ!」「でかした!」と、皆で共有するのが不思議と楽しくなってくる。例えば、アルテイシア氏が明かした「小陰唇が乾燥してかゆくなる」というJJ現象の新規性には、年齢的に先輩である私も衝撃を受けた。私も陰部がかゆいこと事態は日常茶飯事だが、天然の密林地帯なのでムレているだけだと思っていた。しかしすでに述べたように、私は自分の老化についてすこぶる鈍感なため、乾燥に気づいていないだけだったのだ。熱帯雨林がいつの間にか砂漠になっていたことに対する、突然の気づき。これぞJJ特有の「ディスカバー自分」である。小陰唇砂漠をはじめ、アルテイシア氏の、コロンブスばりの探検心、ディスカバー能力には驚かされる。

このようなJJポイントの発見と知識の共有について、意識の高い人々は「そんな恥ずかしいことをよく話せるものだ」と眉をひそめるかもしれない。しかしJJは、若い女性と比べると、周囲からそのような指図を受ける頻度が格段に下がっている。また加齢とともに「いのちだいじに」「すきにやらせろ」というアルゴリズムが生物として優先されるので、世間の目をそれほど気にしなくなっていく。

本書でもしばしば語られているが、肉体が衰えているのに、それでもJJがラクだとしたら、それは若い時よりも周囲の評価や詮索、興味から自由だから、という点が大きいと思う。特に40代になると、恋愛、結婚、出産についてあれこれ詮索されることが減るし、異性から性的な対象として見られることも減る。これだけでも相当ラクに感じる女性は多いのではないか。肉体の衰えや、経済的な不安を差し引いても、周囲から余計な干渉をされないこと、また若さだけが目当ての男が近寄って来ないことが、人生をラクにしてくれるのだ。

私自身も、この意味での「意識の低さ」に磨きがかかり、身近なところでは、体型を気にしてフィットネスを試みる以前に、ウエストにゴムが入っているゆるゆるのズボンを買うようになった。加えて、私は昨夏から少年マンガ「刃牙」にハマっているので、100㎏以下である時点で「ウェートが足りない」「闘えない」とすら感じている。こういう意識の低まりが、生活習慣病に直結している気もするが、3~4㎏に血道をあげていた20代の頃(そのわりに、ファッションセンスが穴居人だったので夏に冬の服を着、冬に夏の服を着ていた頃)と比べて、ラクであることは事実だ。

このほかにも、アルテイシア氏はJJ、そしてRJ(老女)が人生を楽しむための知恵として、気の合う女友だちをつくること、趣味を持つことを提案している。私も人生の大半を、オタク女性のコミュニティと、二次元キャラ、二次元のエロに依存して生きてきた者として、これには完全に同意だ。日々のJJあるあるを共有し、笑い合える仲間がいるのは心強いし、ふと「何のために生きるのか」と実存が脅かされたとき、「彼(彼女)のためです」と言える推しがいるのはもっと心強い。ここで老後の心強さランキングに触れてしまうと、ぶっちゃけ横綱は「金」だと思うが、私も含めてそれだけはあまり恵まれていないJJも多いだろう。しかし愛しさと切なさだけは、仲間や趣味で得られると胸を張りたいではないか。仲間のWJ(若い女性)、JJ、RJに文化的な最低限度の生活すら許さないような時代が来たら、『デンデラ』ばりに団結してイモータン・ジョーの砦を襲おうではないか。

本書について一点だけ心配な点があるとすれば、JJロードをかっ飛ばしすぎて、それ以外の世代や、少年マンガに疎い層には、せっかくの面白さが通じにくい表現が多々あることだ。しかしJJががんばりすぎて「まじ卍」とか言い出したらそれはそれで厳寒の空気になるので、生暖かく見守ってほしい。なお、30代半ばという若さでありながら、すでにJJ界の期待を一身に背負っているカレー沢薫氏が解説を担当しているので、こちらも要チェキ(死語)だ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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金田淳子 やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家、社会学研究者、フェミニスト

1973年富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学)。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見信哉編著、有斐閣)初収の「第七章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」、『オトコのカラダはキモチいい』(二村ヒトシ・岡田育・金田淳子、KADOKAWA)がある。
Twitter: @kaneda_junko

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