

(写真:齋藤陽道)
Titleは店の奥に小さなカフェがあり、「ブックカフェ」として、雑誌などに紹介されることがあります。そのことは別に間違いではないのですが、「ブックカフェ」と呼ばれることには、個人的に少し違和感もあります。
どのような店を「ブックカフェ」と呼ぶかについては人によりイメージが違い、一概にひとまとめには出来ません。しかしそれが店の蔵書(私物)であれ、販売している本であれ、カフェで店の本を自由に読みながら飲食が出来るという店も多く、そこにTitleとの違いがあると思っています。
Titleでは、お客さまには出来るだけきれいな本を購入していただきたいと思っているので、会計前の本をカフェに持ち込んで読むことは出来ません。そこでゆっくりと本を選び、気に入った本を購入していただくことが、本を自由に持ち込むことが出来る元々の理由であったと思いますが、現状ではそのように活用されていない場合も多いのではないでしょうか。書店で販売される本はそれが売り物である以上、その価値を高めるようにするべきであり、「見た目のよいディスプレイ」や「コーヒーを飲むあいだの暇つぶし」という目的にされるものではないと思います。

Titleでは店を作る際、一つ屋根の下、本屋とカフェが独立していることが大事だと考えました。それぞれが一つの空間として独立することで、本はあるべき姿で店に並び、本を買いにくる人には本屋としての充分なサービスを提供出来ます。カフェも空間が区切られることで、そこに来る人には落ち着いた時間を過ごして頂けるのだと思っています。
もちろん、本とコーヒーの組み合わせは最強であり(ですよね?)、それが両方あることで店内での時間がくつろいだものになることは、何事にも代えられません。いまは本屋もカフェも、お客さんの方が様々な店を知っているので、それをただ併せただけではうまくいかないでしょう。まず「店をどのような場所にしたいのか」という考えがあり、それに合うサービスを含めながら、次第にその店のスタイルが出来上がっていくのだと思います。
今回のおすすめ本

全国の古道具屋で売られていた、卒業記念のレコード。それらを買い集め、校長先生が生徒に話したはなむけの言葉を集めた一冊。戦争に向かう時局、終戦後に広がった「戦争を繰り返してはならない」という意志、高度経済成長後に拡散していく話題など、そこで話された言葉は、時代の変遷の証言にもなっている。
◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます
連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2025年7月18日(金)~ 2025年8月3日(日) Title2階ギャラリー
「花と動物の切り絵アルファベット」刊行記念 garden原画展
切り絵作家gardenの最新刊の切り絵原画展。この本は、切り絵を楽しむための作り方と切り絵図案を掲載した本で、花と動物のモチーフを用いて、5種類のアルファベットシリーズを制作しました。猫の着せ替えができる図案や額装用の繊細な図案を含めると、掲載図案は400点以上。本展では、gardenが制作したこれら400点の切り絵原画を展示・販売いたします(一部、非売品を含む)。愛らしい猫たちや動物たち、可憐な花をぜひご覧ください。
◯2025年8月15日(金)Title1階特設スペース 19時00分スタート
書物で世界をロマン化する――周縁の出版社〈共和国〉
『版元番外地 〈共和国〉樹立篇』(コトニ社)刊行記念 下平尾直トークイベント
2014年の創業後、どこかで見たことのある本とは一線を画し、骨太できばのある本をつくってきた出版社・共和国。その代表である下平尾直は何をよしとし、いったい何と闘っているのか。そして創業時に掲げた「書物で世界をロマン化する」という理念は、はたして果たされつつあるのか……。このイベントでは、そんな下平尾さんの編集姿勢や、会社を経営してみた雑感、いま思うことなどを、『版元番外地』を手掛かりとしながらざっくばらんにうかがいます。聞き手は来年十周年を迎え、荒廃した世界の中でまだ何とか立っている、Title店主・辻山良雄。この世界のセンパイに、色々聞いてみたいと思います。
【店主・辻山による連載<日本の「地の塩」を巡る旅>が単行本になりました】
スタジオジブリの小冊子『熱風』(毎月10日頃発売)にて連載していた「日本の「地の塩」をめぐる旅」が待望の書籍化。 辻山良雄が日本各地の少し偏屈、でも愛すべき本屋を訪ね、生き方や仕事に対する考え方を訊いた、発見いっぱいの旅の記録。生きかたに仕事に迷える人、必読です。
『しぶとい十人の本屋 生きる手ごたえのある仕事をする』
著:辻山良雄 装丁:寄藤文平+垣内晴 出版社:朝日出版社
発売日:2024年6月4日 四六判ソフトカバー/360ページ
版元サイト /Titleサイト
◯【寄稿】
店は残っていた 辻山良雄
webちくま「本は本屋にある リレーエッセイ」(2025年6月6日更新)
◯【お知らせ】NEW!!
〈いま〉を〈いま〉のまま生きる /〈わたし〉になるための読書(6)
「MySCUE(マイスキュー)」 辻山良雄
今回は〈いま〉をキーワードにした2冊。〈意志〉の不確実性や〈利他〉の成り立ちに分け入る本、そして〈ケア〉についての概念を揺るがす挑戦的かつ寛容な本をご紹介します。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて本を紹介しています。
偶数月の第四土曜日、23時8分頃から約2時間、店主・辻山が出演しています。コーナータイトルは「本の国から」。ミニコーナーが二つとおすすめ新刊4冊。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。