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本屋の時間

2017.09.01 更新 ツイート

第19回

ネットとリアルの交わらない話辻山良雄

 ここ最近、本や本屋を特集する雑誌の発売が続いています。先日発売になった『POPEYE』も「君の街から、本屋が消えたら大変だ!」という特集でしたが、その号がネット書店のAmazonで売れているということが、SNS上でちょっとした話題になっていました。

 タイトルからすれば、もちろん皮肉なことです(この特集号だけは、本屋限定で発売すれば面白かったと思いますが、そうもいかないのでしょう)。しかしネット上には、現実の世界とは違う人のふるまいがあり、そのズレを理解しておかないと、大きな勘違いが起こる時もあります。

 

 Titleでは、その日入荷した本をTwitterで紹介していますが、何かの拍子にそれが大きく拡散されることがあります。ではそうした本が、Titleの店頭やWEBSHOPから数多く売れるのかといえば、残念ながら「少し売れた」という程度です。出版社に聞くと、その本の売り上げは伸びたらしいので、役に立ってはいそうなのですが。紹介文を「面白そうだからポチった」と、引用されることもしばしばあります。

 SNSで「いいね」を押すのは気軽に出来ますが、その人がそこから実際に店まで足を運び、本を買うということまでは、大きな飛躍があります。本屋の立場からすれば、売上に関わる〈リアル〉はウェブ空間にはなく、その店の店頭(他にはその店が運営するWEBSHOP)で起こることにあります。自分が発信した情報を、多くの人に知ってもらえることは嬉しいのですが、それと本屋の経営とは別に考えておく必要があります。

 個人的には、Amazonを利用することはありません。それは、そのサービスが必要な状況にあるわけではないということと、自分のお金は、その活動を支援したいと思うような場所で使いたいと思っているからです。そしてこのことは、自分で店をやるようになって、より強く考えるようになりました。

 ある店がなくなり、それを「本当に」惜しむことができるのは、実際その店にお金を使った人だと思います。

 

今回のおすすめ本

『創作』著者不明 版元:円盤

 これも最近Titleで売れている本。高円寺で「円盤」というレコードショップを経営している田口史人さんが、偶然拾った一冊の日記。1973年に書かれたというその内容は、無名である文学青年の心情が細やかに綴られており、時代を超えてそれを読むことの不思議を感じる。
 ページをめくる手が止まらなくなる一冊。

 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年7月9日(木)19時30分~ オンライントーク 参加費無料

本の世界をめぐる夜会
『学びのきほん 本の世界をめぐる冒険』刊行記念 オンライントーク

「学びのきほん」シリーズと連動するイベント、今回は『本の世界をめぐる冒険』の刊行記念。登壇者は、著者のナカムラクニオさん、この本の校正を担当した牟田都子さん、店主辻山良雄の3人。司会進行は「学びのきほん」編集担当の白川貴浩さん。各々が経験してきた「本をめぐる冒険」をざっくばらんに語り合います。オンラインのアドレス等、詳細はTitleホームページへ。

◯2020年7月2日(木)~ 2020年7月27日(月) Title2階ギャラリー

OTHERS
中山信一個展

コロナウィルスの影響により延期となった中山信一個展「OTHERS」を、7月2日より開催。新作『OTHERS』に収録されている原画30点を展示販売する他、Titleでの展示のために制作した、店主・辻山との合作短編小説「ねこのひかり」(文・辻山良雄 絵・中山信一)の原画も合わせて展示します。


 

◯朝日新聞(耕論)2020.6.18
自粛要請と自由 新型コロナ 辻山良雄さん、戸羽太さん、青井未帆さん

◯nippon.com インタビュー 2020.5.4
たたかう「ニッポンの書店」を探して
本を自分で紹介し、売ることに賭ける-東京荻窪「Title」


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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