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貘の耳たぶ

2017.05.07 更新 ツイート

最注目の気鋭作家、渾身の書き下ろし『貘の耳たぶ』刊行記念特集 その9

山田詠美さんや村上龍さんは本当のことを言ってくれてる感じがした。対談:芦沢央×はるな檸檬芦沢央

 

「新生児の取り違え」事件を題材に『貘の耳たぶ』を書き下ろした芦沢央さんと、『れもん、うむもん!』で、妊娠・出産の辛さを正面から描いたはるな檸檬さん。出産のリアルや共通の読書体験を、爆笑しつつも深く語り合いました。
「小説幻冬」5月号より(インタビュー/河村道子)


四歳の娘はウルトラマンオタク、その気質は……

はるな 今、息子が可愛くて、死にそうなんです。
芦沢 二歳ですよね。イヤイヤとかは?
はるな ちょっと大人しい子で。あんまり暴れたりはしなくて、ただ床に伏せて、イヤイヤしてる(笑)。

芦沢 かわいい~(笑)! うちは娘が四歳で、息子が一歳なんですけど、上はよく喋って、面白いんです。ウルトラマンオタクなんですけど。
はるな 斬新!
芦沢 ビームがどこから出て、何色だとか、私が間違えると怒る。で、ウルトラマンを見せたがる。“お母さん、テレビから目を逸らさないで”って。そんな娘がかわいくて、ウルトラマンよりもよっぽど面白いから、娘の方を見てると、“いいから! 見て!”と。
はるな ははは(笑)。ウルトラマンを見ろと。

芦沢 夫は“すごい気持ちわかる”って言ってます。“オタクってのは、好きなものを好きな人に見せたいんだよ”って。
はるな ご主人オタクですか?
芦沢 オタクです(笑)。

山田詠美に夢中だったあの頃
“この世界の本当のことが読みたかった”

芦沢 『れもん、よむもん!』も大好きです。いかに本に救われて、生きていく中で刺激を受けてきたかってことがすごく伝わってくる。本好きなら誰もが経験してきたであろうその感動が鮮やかに表現されていて。
はるな わぁ、うれしい。

芦沢 しかも、はるなさんとは学年がひとつしか違わないから。読んでいるものも一緒で。山田詠美ー!
はるな だよねー! 憧れるよねー! 妄想が育ちますよね。
芦沢 殊に恋愛。私、少女マンガから一足飛びに山田詠美さんだったので。少女マンガって、初恋の人と添い遂げるみたいなのが多いじゃないですか。
はるな うんうん。

芦沢 でも、本当にそうなのかなって。私、コバルト文庫も好きで読んでいたんですけど、その中の須賀しのぶさんの作品で、王子様の身代わりになったり、海賊にさらわれたり、と激動の人生を歩んでいく少女の話があるんです。で、その子は初恋の人とは結ばれなくて、冒険する先々で別の人たちと子どもを作っていく……。
はるな はははは(笑)。

芦沢 先程、はるなさんは本当のことしか描きたくないとおっしゃっていましたけど、私も本当のことが読みたいというのが強くて。これがリアルじゃないかと。人がどんどん成長していくのに、好きな人が変わらないっておかしいよねって。
はるな そうですね。たしかに山田詠美さんや村上龍さんは本当のこと言ってくれてる感じがしました。
芦沢 そうなんです!

はるな 怖くて嫌な話もあるけど、これが現実にはあるんだって、貪るように読んでた。芦沢さんはどういう読書遍歴を?
芦沢 まとめてあるんです(と、びっしり書き込んだリストを取り出す)。
はるな あ、『姫ちゃんのリボン』!
芦沢 小学生時代は星新一とか。
はるな ああ、いいですね。あ、『BANANA FISH』! ガラカメ(『ガラスの仮面』)も!

芦沢 中、高時代に、それこそ本当のことが知りたいみたいな気持ちから、心理学の本やドキュメンタリーも読んで。同時に純文学とかミステリとか、今でいうライトノベル・レーベルの作品もバシャバシャ読んでいきました。

孤独に読んでいたことが
今に繋がっているのかも

芦沢 『れもん、よむもん!』の、友だちと本を共有していたエピソードも素敵でした。これ、よかったとか、わかんないぞーとか言い合って。
はるな 人生の中央にあるような悩みとか、ちょっとわかんないモヤモヤみたいなものを、本を真ん中に共有できたのは、高校生になってから。はるなちゃんって同じ名前の友達ができてからですね。

芦沢 羨ましかった。私、ひとりで図書館に入り浸ってましたから。毎週、二十冊くらい借りて。読んでいる本を見られるの恥ずかしかったんですよね。
はるな 何を読んでいて、恥ずかしかったんですか?

芦沢 何を読んでいたから、とかではなくて小学校の時、星新一を読んでたら、“字のちっちゃい本読んでる”ってバカにされたんです。自分が好きな世界をバカにされるのがすごい嫌で。もう知られたくない! みたいな思いが強かったんでしょうね。でも作家になってから、こういう作品が好きでしたというのをインタビューで答えたら、当時の友達が連絡をくれて、“あれ好きだったの? 私もあの頃、すごい好きだったのに”って。
はるな 言っときゃよかったねぇ。
芦沢 みんな好きだったんだ、言ってもバカにしなかったんだって。

はるな でも星新一のトラウマが(笑)。
芦沢 そう(笑)。だからずっと孤独で読んできた。
はるな でも孤独に読んだというのが、創作に繋がった気がしますね。感想を言う人がいないと、自分のなかで何回転もして熟成するじゃないですか。
芦沢 何度も、何度も読んで。
はるな 発散どころがないということが、芦沢さんの今のクリエイティブに繋がった気がします。

はるな檸檬:1983年宮崎県生まれ。漫画家。漫画家アシスタントなどを経て、2010年デビュー。著書に『れもん、よむもん!』『れもん、うむもん!ーそしてママになるー』『ZUCCA×ZUCA』など。


 

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芦沢央

1984年東京生まれ。千葉大学文学部卒業。2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。他の著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『許されようとは思いません』『雨利終活写真館』がある。「許されようとは思いません」で第68回日本推理作家協会賞(短篇部門)、同作を収録した『許されようとは思いません』で第38回吉川英治文学新人賞の候補に。

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