
夏の終わり。
東京から片道2時間ほどで行けるところへ旅したいなぁと、まずは「時間」で旅先選び。箱根、鎌倉、熱海、日光いろいろあるが、久しぶりに新潟はどうや? と観光地を検索していたら、
「これはいったいどういう状況?」
トンネルのような場所に水が溜まっていて、そこに人が立っている写真が出てきた。
すごくきれいだ。
清津峡渓谷トンネルというところらしい。
それがナニかはわからぬが、行ってから知るのもいいじゃないか。上越新幹線・越後湯沢駅前から清津峡渓谷トンネルまでのツアーバスが出ていたので、早速、地元のツアー会社に電話で予約。その後、新潟へ足を延ばして一泊することに。
一泊旅は普段の生活と地続きである。今日出かけて明日にはもう家。サクッと出かけてサクッと帰宅。冷蔵庫のつくり置きの惣菜を帰宅後に食べることもできる気楽さなのに旅の思い出は長く胸に残りつづける。
さて、当日。
越後湯沢駅前からマイクロバスに乗り、30分ほどで渓谷沿いの駐車場に到着。そこから10分ほど歩けば清津峡渓谷トンネルがあるという。バスは約1時間半後に迎えにきてくれるので、それまで自由行動である。
道は整備されていて、土産物屋や食事処がちらほら。途中、お弁当が食べられるような川沿い広場もあった。
清津峡渓谷トンネル入口が見えてきた。
一見、ごく普通のコンクリートのトンネルだ。ツアー料金に入場料も含まれているのでチケットを渡す。とにかく入ってみようではないか。ちなみにバスの送迎とチケットがついて5千円ほどだった。
もらったリーフレットには全長750メートルとある。入り口には車椅子が用意されていて、長く歩くのに不安がある方も楽しめるように。
中はひんやり。自分の足元が見にくいくらい暗い。そして、その暗さが妙に心地いい。と同時に、ずっと先に存在するであろう光への期待が膨らんでくる。
途中、清津峡渓谷トンネルがなんなのかがわかる展示スペースがあり、この長い長いトンネルが清津峡を見るためだけに作られたものということがわかり、
「え、マジで?」
思わず独りごと。
以前は清津川沿いの遊歩道を通ってその景色を楽しむことができたそうだが、落石事故のため通行禁止となり、1996年にこのトンネルができたのだという。
暗がりをずんずん進んで行った先に、ようやく写真で見た水の空間が見えてきた。
なるほど、こういうことか。
半円のトンネルが鏡効果で丸く見えるよう床に薄く水が張ってある。水面の両端はスニーカーを履いたままでもギリギリ歩くことができる深さだ。そーっと水の上を進み、突き当たりのガラスの柵まで行くと清津峡の絶景が広がっているのだった。
逆光のせいで人々の姿は黒いシルエットになり影絵のよう。
人間のかたちっておもしろいな。
自分が生き物であることを実感できる空間だ。絶景と人間影絵を満喫し、750メートルのトンネルを引き返した。涼しい中での軽いウォーキングである。
ところで、越後湯沢駅構内の土産屋のなんと楽しいことよ。とにかく広い。ツアー終了後、新幹線の時間までのんびりと見てまわり、長岡醤油赤飯の素と新潟産の餅米を自分土産に。赤飯は小豆ではなく大きな金時豆で、帰宅後早速、炊いて食べたらホクホクとおいしかった。
うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。










