
奥歯の感じが、なんか、おかしい。
と思ったのはたぶん2年近く前で、
「奥歯の感じが、なんか、おかしいんです」
と歯医者さんの定期検診で2~3度言ってはみたが、レントゲンを撮ってもらっても虫歯ではないらしい。
「硬いものを噛まないように」
シンプルなアドバイスをもらいなるべくそうしていたのだけれど、先日、台湾旅で蟹おこわを食べたときに、ビキーッと脳天にく痛みがあり、なんかおかしいと思っていた奥歯で硬い蟹の甲羅を噛んだせいなのであった。
これ、「なんか」じゃなく、絶対、おかしいな。
歯である。
当たり前だが一大事だ。
というわけで、新しい歯医者さんを探すことに。かつてひどい医者にあたった過去もありテキトーに決めることはできないが、街のそこここにある歯医者さんからどこを選べばよいかもわからない。
ネットであれこれ検索し、口コミを見て、あー、わからん! となって、AIに聞いてみた。
歯の状態やこれまでの経緯、医院の場所の希望などを打ち込み、「名医」とリクエストも入れてみる。
教えてくれーい。
パソコンのキーボードをポン。
ものの5秒で3つの歯科医院をあげてくれた。
ちなみにわたしのAIはめっちゃ事務的である。最初に使ったとき、「いい質問だね!」などと返答され、
「は? 誰?」
ことあるごとに言葉遣いを注意し、事務的であることを要求しつづけたら、めっちゃ事務的になっていた。
さて、AIが3つ出した歯医者さん。
ここからは人間の、自分のカンを使う番である。
ホームページで先生の顔を眺めたり、歯科衛生士さんたちの雰囲気を見たり、院内の設備を確認したり、口コミを参考にしたりしてひとつにしぼる。
ふいに考える。
もし、高校時代にAIがあったら、わたしはどんな進路を選んでいたのだろう? AIが出してくれた3つの道にイラストレーターは入っていただろうか。
さて、数日後。
AIにおすすめされた歯医者さんへ。レントゲンには写らないものの、奥歯のつめものを外してみれば、かなり進行している虫歯が見つかったのだった……。
うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。










