ドーパミン中毒のガキにこそ読書を進めたい
「ドパガキ」という言葉を、ネットでよく見るなと思っていたのはもうかなり前の話。最近は仕事場や飲みの席で、肉声の「ドパガキ」を頻繁に聞くようになった。「ドーパミン中毒のガキ」って、正直語呂が良すぎるし、なんか可愛いし、この言葉を略して使用するっていう行為自体がもうドパガキって感じで気持ち良さまである。
自分を卑下しながら、でも同時に誇らしさも感じる「ドパガキなんでww」を聞くたびに、私は「何でドーパミン生成してるの?」と聞きたい衝動に駆られる。
やっぱりTikTok? それともYouTube? YouTubeショート? 倍速で見るアニメ? X? インスタのストーリー?
私もこれらをよく見る。親指を上下に動かし続けるだけの休日は、時間を捨ててるみたいで贅沢な気分になるし、どれだけ見ても永久に「まだ見ていないもの」が出現する世界に安心したりもする。
ドーパミンが出ているのかは正直わからない。だけど、とてもインスタントな快楽を得ていることは自覚している。
はい、そうです。私も立派なドパガキであります! そのことになんの抵抗もございません! やめられないっすよ、一度見始めると。気付けば二時間なんてザラっすよ。
始めたら最後、時間を忘れて呆然と続けてしまう行為には覚えがある。読書だ。私は、ドーパミン中毒のガキにこそ読書を進めたい。この世で一番ドーパミンが溢れ、目が離せなくなり、潜り込んだら浮上できなくなるものは、読書なんだよ!! 異論は認めます。
読書は違法になってもおかしくない
読書が生産するドーパミンはすごい。ゾーンに入ってしまっていると、全然眠れない。自分から皮膚を引き剥がすみたいに、死ぬ気で本を閉じ布団に入ったとしても、瞼の裏にはさっき読んだシーンの映像が延々再生され、先が気になり足がむずむずする。こうなるともう無理。気になりながら眠気を待つより、一思いに読みきったほうが早いのである。この「一度閉じた本に結局手を伸ばし」「さっきの続きの文字を追うと」「完璧に映像が立ち上がる」瞬間! 脳内を致死量のドーパミンが駆け巡る。もちろん睡眠時間は削れ、翌日はしんどい思いをするが、この失敗を止めることはできない。なぜならドパガキだから。
書店で本を選ぶ時のドーパミンもすごい。未経験の方は是非、ワンフロアの面積ができるだけ大きい書店に行って、ぼんやり歩き回ってみてほしい。
そこに並ぶ全ての本は金で買えます……! しかも全ての本が、あなたに触れられたがってます……!
こんなに求められることは生きていてそうそうない。しかも恐ろしいのが、そこに並ぶ大量の本のほとんどが、あなたのために書かれていない! あなたの存在を想起して書かれた文章はほとんどない! なのにいざそれを読んでみると、あなたは、あなたのために書かれていない本の中に、自分のために書かれたとしか思えない一節を見つけるのだ……!
やばいだろ、こんなん実質魔法じゃん。いつ違法になってもおかしくないレベルのドーパミン汁が出る。てか正直、同じ形状のものが大量にある空間の中で「好きなの買っていいよ」って言われる状態からもうドパガキ的にはやばい。一生かかっても使いきれない、底の抜けた自由が書店にはある。
集中力なんてなくたっていい
「だけどさ、読むのって集中力いるし、動画みたいに勝手に進まないし……そもそも本を読むって行為が無理なんだよドパガキは」と思ったあなた。でもあなたこれ読んでるじゃーん! 読めるじゃーん! Xの投稿もインスタのお気持ちストーリーもpixivの長編二次創作も、あんた読んでんじゃーん! 読めるじゃーん! 気付いてないだけで、あなたって超読めるんだよー?!?!
読めるのに読めないと思っているドパガキが多すぎる。それ結構思い込みで、あんた読めるよ!!! 読んでるよ!!!!! と、私は声を大にして言いたい。ネットで「ドパガキ 本 なぜ読めない」と検索したら「読書は報酬が遅いから」というアンサーがヒットした。じゃあ官能小説読もうや! 2ページ目からセックスあるよ! これはたぶん、映画やテレビドラマより断然掴み早いです。なんならアダルトビデオより早いんじゃないだろうか。登場人物の名前がこちらの頭に入るより、性器が性器に入るほうが早いです(うまい)(キモい)
あと、実は集中力とかなくてもいいんですよ、とも言いたい。TikTokくらい適当に向き合って大丈夫です。思うに、世界は読書という行為に対して姿勢が良すぎる。学校を思い出すからだろうか。周囲の「本が読めない」という人は大抵、読むという行為から何か学ばなければという義務感を感じるし、読み終われないことに罪悪感を感じている。そんなん気にしないでいいよと、声を大にして言いたい。気が進まなければ途中でやめて、サクッと別の本に移っていいのに。学びとかもなくて平気。わかんなくていいし。それなりに厚みのある文庫を読み終わって「なんかよくわかんなかったな」と思う時にしか感じない興奮もある。
「なんだかなぁ」と思いながら適当に読んでいた本が、ある瞬間から急激に面白くなった時。読み終わった時は「?」だった物語と日常が、突然コネクトする時。ゾーンに入って読む速度が際限なく上がっていく時。他にもたくさん。読書にはドーパミン生成チャンスが無数に埋め込まれている。
今世の中で、こんなにドーパミンが流行っているなら、読書ももっと流行っていいはずだ。マジで読書のドーパミンはエグい。だからこんなに長いこと、世界に蔓延り続けているのだとも思う。ドパガキのみんな、本読みませんか? マジで脳パチパチするよ。寝れないよ。読書のすすめとしては俗すぎる誘いかしらと思うけど、そもそも高尚なもんでもない。いつの間にか優等生みたいになってる読書という行為を、もっとリアルで猥雑なものへと引き摺り落とそう。読書ちょっと調子乗ってるから。その結果、本がもう一回流行る世界を夢見てながら、今日もあともう少しだけ読ませてください。
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キリ番踏んだら私のターン

相手にとって都合よく「大人」にされたり「子供」にされたりする、平成生まれでビミョーなお年頃のリアルを描くエッセイ。「ゆとり世代扱いづらい」って思っている年上世代も、「おばさん何言ってんの?」って世代も、刮目して読んでくれ!
※「キリ番」とは「キリのいい番号」のこと。ホームページの訪問者数をカウントする数が「1000」や「2222」など、キリのいい数字になった人はなにかコメントをするなどリアクションをしなければならないことが多かった(ex.「キリ番踏み逃げ禁止」)。いにしえのインターネット儀式が2000年くらいにはあったのである。
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