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キリ番踏んだら私のターン

2026.01.28 公開 ポスト

歳取っても、ウチらは「厄災化」しないで生きていこ!長井短(女優・モデル)

嫌な思いをしたら、脳内で友人たちに呼びかける。

誰か聞いてくれ~! 意地悪されちゃったよ~! SOSだよ~!

不思議なことに、嫌な思いをする日というのはあらかじめ直後に友達との予定が入っているもので、私は来るべきパーティーに向け、不快感を調理。食べやすい大きさに切り分け、小匙いっぱいのユーモアを振りかけておく。居酒屋で、公園で、誰かの家で、この手土産を振る舞うと、友人たちは顔を顰め「いるんだよそういう奴」と言う。選手交代。友人が振る舞ってくれる手土産こととっておきの愚痴は、驚くほど私の経験と似ていて、結局どこにいても同じだねと笑い合う。

 
夫の亀島くんが舞台の海外公演で不在だったから、テレビ電話しまくり。時々画面がフリーズしちゃう。どうか変な顔でフリーズしてませんようにと願う自分の精神、結構可愛いじゃんと思いました。

バラバラの場所で、それぞれの仕事をしている1993年生まれ、もしくは1994年生まれ。私の同級生たちは、オフィスにいて、飛行機にいて、郵便局にいて、ラジオ局にいる。お店屋さんにもいるし、自宅にもいる。そこで時々、意地悪される。20代とは違う開放感の中でご機嫌に過ごしている私たちに爪を立ててくるのは、なぜか同性が多い。言葉の選び方や視線、醸し出される圧から滲み出る、そこはかとない敵意と悪意。それを「気のせいじゃない?」と言う友達はもはやいない。みんな「気のせいじゃない」と確信する程度には、嫌な思いをして生き延びてきたからだ。他人からの悪意は博多ラーメンくらい臭い。店舗が見えなくても確実に存在を認識できる博多天神と同じである。臭えもんは美味くあれよ。

 

10代、20代の頃味わっていた意地悪は、今思うと理解しやすく、傷の浅いものだったように感じる。あの頃起きていた意地悪のほとんどは、同世代間でのどんぐりの背比べであり、能力が自分よりわずかに優れている相手の足を引っ張りたいとか、なんか目立ってて鼻につくとか、その程度のことだった。相手の人間性というより、外側から見て目視できる範囲での「持っているもの」が羨ましい~みたいな、ライトな意地悪である。もちろんそれにだって傷付いてはきたけれど、悪意の刃が傷つけるのはあくまで表層だったように思う。

30代になるとどうだろう。同世代間での意地悪は一気に減った。子供時代に流行っていたアニメのリバイバルグッズが延々発売されている今、かつて肩をぶつけ合っていた同世代たちは「敵」ではなく「同志」になったのである。「きのうの敵はきょうの友」と歌っていたポケモンがここにきて伏線回収、お見事です。

じゃあ今、私たちに意地悪をかますのは誰か。

私の世界で観測している中で最も多いのは10歳以上歳の離れた同性たちである。私たちよりよっぽど成熟しているであろう人生の先輩たちは「最高の先輩」と「最悪の先輩」の二極化が激しい。お兄さんお姉さんたちからかまされる意地悪には凄まじい迫力があり、同世代で起きていた意地悪なんてただのじゃれあいだったんだなとすら感じる。意地悪という言葉で表現するのも失礼かもしれない。あれは厄災。かつての「意地悪」とは似て非なるものだ。「厄災」は、存在そのものを否定しにくる。「ちょっと足引っ掛けてやろう」みたいな出来心ではなく「お前を絶対に認めない」という強い意志を持っている。

なぜそこまでの憎悪が? 一体いつの間に? 私何かした?

東葛スポーツで共演した川上友里さんに影響されて編み物を始めた。これは最初に編み始めた円。円の接写。こえーだろ?

このような疑問に答えてもらえることはおそらく永遠にない。存在を否定されてるので……会話とかしてもらえないよ……一気に高度で草。おまけに、年齢差によって生じる圧もある。こんなに歳が離れてるし、今座っている椅子の立派さだって違うんだから、そんな全力で……わざわざマウントポジション取らずとも……ワンパンでKO勝ちできると思いますよ……? 床に転がされタコ殴りにされながら笑顔を浮かべそう言っても相手の耳には届かない。存在が認められていないので(笑)

マジ笑うしかない。憎悪ってすげえのな! って、笑うしかできないっすよ。それなりの収入や地位を持っているにも関わらず、なぜ年下の存在を抹消する必要があるのか私にはまだわからない。だけどきっと「私」という存在そのものが「あなた」の人生を踏み躙っているのでしょう。私の何が、あなたをそこまで揺るがしてるのか知らないけど、きっとそんな感じなのでしょう。

厄災は恐ろしいものであると同時に、悲痛にも見えるのが不思議だ。「この人の存在を認めたら、自分のこれまでの人生が、努力が、壊れてしまう」こんな強迫観念に、厄災人間たちは駆られている? 実際のところはわからないけれど。少なくともこちら側からは、そういう風に見えてはいる。数年後の自分も、あの人たちみたいに強迫観念に駆られてしまったりするんだろうか。それで、自分よりずっと若い子の存在を踏み潰そうと大きい声を出すんだろうか。そんな人間に成り下がってまで守りたい自分なんてねーよと今私が思うのは、守るものが少ないから? もっと増えたら厄災化する?

いや、厄災化せずに生きていくことは可能なはずだ。絶対可能。だって、かっこよくて優しくて、憧れる先輩たちの方がたくさんいるんだから。あの人たちは、自分の守りたいもののために他人を踏みつけにしたりしない。そんなことせずとも静かに起立できている。どこで命運別れるのだろう。どうしたら厄災化せずに歳を重ねられるんだろう。不安で仕方ないけれど、お陰様で「絶対になりたくない姿」は具体的にイメージできてる。

だから、同級生のみんな! うちら絶対絶対、優しい先輩になろうね。若い子追い詰めて自分を守ってる厄災予備軍同級生見つけたら、うちらの中で注意し合おう。絶対もっといい世界にしよ!!

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キリ番踏んだら私のターン

相手にとって都合よく「大人」にされたり「子供」にされたりする、平成生まれでビミョーなお年頃のリアルを描くエッセイ。「ゆとり世代扱いづらい」って思っている年上世代も、「おばさん何言ってんの?」って世代も、刮目して読んでくれ!

※「キリ番」とは「キリのいい番号」のこと。ホームページの訪問者数をカウントする数が「1000」や「2222」など、キリのいい数字になった人はなにかコメントをするなどリアクションをしなければならないことが多かった(ex.「キリ番踏み逃げ禁止」)。いにしえのインターネット儀式が2000年くらいにはあったのである。

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長井短 女優・モデル

1993年9月27日生まれ、A型、東京都出身。

ニート、モデル、女優。

恋愛コラムメディア「AM」にて「長井短の内緒にしといて」を連載中。

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