
アイスを食べながら帰る。
これがいまの贅沢な時間。
日によってコースが変わる。アイスを食べながら歩きたいがために、一駅前で降りたりする。
疲れていればいるほど、1人でのお散歩タイムが必要なのは、相変わらずのようだ。
夜のお散歩が好きなのは、ずっと昔から。静かになった街を歩くのが、安心するのだろうか。
せかせかしていない世界で、自分の存在を確かめているのだろうか。
これまで何度かメンタルが不安定になってしまったことがあったけれど、1番はじめに心がキャパオーバーになってしまった時は、昼夜逆転どころか、2日間寝て1日起きているみたいな生活になってしまったことがあった。
1日中起きていても、昼間に外に出る気にはならず、でも部屋に篭りっきりという状態は自分にとって無理で、夜中になるとそっと散歩に出掛けていた。夜中と言っても東京は明るく、色んなネオンが光っていた。
ただ、人は少ない。その世界が私を落ち着かせてくれた。
深夜営業のお店の店員さん、終電に乗り遅れたであろうスーツの人、部屋着でコンビニに来たカップル、同じように1人で歩いている人。
あの頃はまだシェアバイクなんてなかったなぁ。大通り沿いにひたすらずーっと歩いて、突然満足したかのように引き返していた。無駄と言われれば無駄。でも、その無駄が、心を包んでくれることもある。どれだけあの時間に救われていたのだろう。
あの頃から夜の散歩は、ずっと身近だ。自分に戻る時間。自分と寄り添う時間。不思議とそんな気持ちになるから好きなのかもしれない。
最近のアイスタイムは、圧倒的にサッパリ系の棒アイスに惹かれる。あっという間に食べ終わってしまうから、アイスの棒を持ったまま歩いている時間の方が長い。
なんとなくその棒が、リズムを与えてくれる。手の振りに合わせて、自然と楽器のようになる。
それがなんだか小気味よく、夜風と合わさると気持ちがいい瞬間の完成だ。
この気持ちよさがずーっと続けばいいのになぁ。
そう思いながら歩いていると、なんだか自分は満たされている気になる。寂しさはこれっぽっちもなく、この時間にこうやって歩けることが、どれだけ贅沢なんだろうと噛み締める。
帰って残りの仕事をしなきゃなぁと思いつつ、夜風があれば、ここで呼吸が出来る。
窮屈だった頃は、こんな風に呼吸が出来ていなかった。それでも、十分な助けになってくれていた。
きっとこれからも好きだし、メンタルが良かろうが悪かろうが、戻ってくるだろう。
夜のお散歩の世界。
良い時も悪いときも、いつでもそっと。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。