
まあまあ……。
読者の皆様が感じていることは皆まで言わずともわかっている。
ここでゆっくりと話をしようではないか。
前回の記事にて、妖(あやかし)の輪入道の正体を屋代警備部長(高橋克典)だと断言した。それはもう言い逃れできないほどに。
……違ったみたいだ。
あそこまで自信満々に断言し、なんなら顔の作りからも分かりやすすぎるとやや煽ってしまったことに対して、ここにお詫びを申し上げます。
というのも先日放送された『放送局占拠』(日テレ)第6話にて、屋代警備部長が裏社会の殺し屋“のっぺらぼう”に記者の殺害依頼をしていることが判明した。
そんな闇を抱えている側の人間が、“闇を見つめ真実を暴く”がキャッチコピーの妖党に所属している輪入道の正体であるはずがない。
屋代警備部長は輪入道ではないと確定したと言っても過言ではないのだ。(断言してしまうとまたお詫び案件になってしまうため、ここは屋代=輪入道の可能性も少しばかり残しておこう。)
人間の先入観というものは恐ろしい。一度そうだと思い込んでしまったら、それ以外の可能性を閉ざしてしまう。しかし、違う扉が開いた途端に今までの先入観は完全に消失し、そう見えていたことが笑えてしまうほど的外れだったということに気づく。
ではその新たに開いた扉……真の輪入道候補は一体誰なのか?
今回は最終結論と題して見解を述べていく。
第1話には沢山のヒントが隠されている
第1話冒頭、緊迫した場面からこのドラマが始まったことを覚えているだろうか。お笑いコンビFUJIWARAの原西孝幸氏が演じるバスジャック犯:八丈と武蔵三郎(櫻井翔)の死闘が繰り広げられた末、八丈が爆弾を起爆させたことによりバスは大爆発。
その中から出てきたのはバスに取り残された幼い子供を抱えた武蔵。バスジャック犯の八丈はその爆発により命を落としてしまった。
ほとんどの視聴者は、あの冒頭シーンをドラマのオープニングセレモニーかの如く、何も考えずに興奮して観ていたことだろう。しかしあのシーンに、このドラマの核心が詰まっていたと言っても過言ではないのだ。
なぜなら、このバスジャック犯、八丈こそが輪入道だったのだから。
以前の記事でも、輪入道を象徴するそれぞれの部位である車輪=バス、炎=爆発、男性の生首=バスジャック犯が第1話冒頭の事件と全て当てはまると述べたがそれは間違っていなかったのだ。
どう考えてもあのひょうきんなギャグでお馴染みの原西氏が厳粛な妖党に所属しているとは到底考えることが出来ず、「まさかな……」と思ってしまった。
しかし『放送局占拠』においては原西氏ではなく、何らかの事情を抱えたバスジャック犯であり輪入道の正体である八丈なのだ。現実世界の“一兆個のギャグを持つ原西氏”とは完全にセパレートして見ていかなければいけない。
ではなぜ八丈が輪入道であると言い切れるのか。
上記で述べたように妖怪:輪入道を連想させる事柄がバスジャック犯:八丈と重なることがまず大きな一因と言える。
“疫病封じの妖怪”として言い伝えられているアマビエの中身、津久見沙雪(ともさかりえ)の職業が薬剤師だったように、与えられた妖の面とその中の人物は何かしらの共通点があるため、それに準えると輪入道と八丈の関連性も十分だと言える。
さらには第1話で八丈が左手首につけている黄色いブレスレットが、輪入道の左手にも確認できるのだ。これが輪入道=八丈を裏付けるかなり大きな要因と言えるだろう。
当然、八丈のバックボーンについてほとんど明かされていない故、結局は見た目で判断出来る部分での裏付けが大きくなってしまう。見た目で予想を外した私が言っても何の説得力もないが……。
しかしこの黄色のブレスレットの共通点は、他に説明しようのない裏付けと言えるだろう。
とは言え、ここで一つの疑問が浮かぶ。
占拠事件を間近に控えた輪入道は、なぜバスジャック事件を起こしたのか?(バスジャック事件は6月、放送局占拠事件は7月)
輪入道こと八丈も、誰かへの復讐のため、隠蔽された真実を白日の下に晒すため、妖党へ加入したことだろう。
それであれば放送局占拠の決行日を待っていればよかったにも関わらず、その選択をしなかった。あのバスジャックが何の目的だったかは不明にせよ、占拠事件を決行する前にバスジャック事件で命を落としてしまった輪入道の真意とは……。
その真意を探る上で重要なピースが第6話で登場した。
かつての病院占拠事件の首謀者:青鬼こと大和耕一(菊池風磨)が監禁されているという衝撃の事実。
彼は病院占拠事件により逮捕された。その後、妖の天狗とがしゃどくろの手を借りて脱獄に成功。
妖党を結成し、新たな占拠事件を計画し、まだ残されている真実を白日の下に晒そうとしていた。しかし大和が監禁されている現状と第7話の予告を見る限り、どうやら大和と妖党のリーダー般若(加藤清史郎)はその方向性を巡り意見が対立したようだ。
なんだかバンドの解散理由のようでかっこいい。
その意見の対立は、この占拠事件において“人を殺めるべきか否か”が争点となったと考えられる。裏社会の殺し屋“のっぺらぼう”に大事な人を殺されてしまった般若は、彼らを殺害したくて仕方なさそうな様子であった。そして黒焦げとなった遺体はのっぺらぼうとその信仰者であったため、おそらく般若が手を下したのであろう。
しかし一方の大和は、「恨みのある者を殺害することは彼らと同じレベルに下がってしまう」と考えているため、般若と考えの違いの埋め合わせが出来ずまた新たな火種が生まれ、大和が監禁されるに至ったのだろう。
その意見の対立の際に、輪入道は大和側についたのではないだろうか。
その大和の理念のもと、般若主導の占拠事件の前にバスジャック事件を起こし、自身の形で復讐を果たそうとしたのではないだろうか。しかしその作戦も失敗に終わり、輪入道こと八丈は帰らぬ人となってしまった。
八丈の復讐の内容は、般若の交際相手が犯人としてでっち上げられた“鎌鼬(かまいたち)事件”に由来していることが考えられる。
というのも輪入道の面には鎌鼬事件に関する新聞記事の切り抜きがはられているため、その関係者と考えるのが妥当だからだ。
そして大和が再び鬼になるきっかけとなった“あの人”こそが輪入道:八丈であり、鎌鼬事件の関係者であれば、「“あの人”はあなた(般若)にも関係がある」という大和の発言にも繋がる。おそらく八丈は般若の交際相手:高津風花の父親なのではないだろうか。(高津側が母親の旧姓を名乗っているか何かで苗字が違う)
以上を踏まえて第1話冒頭のバスジャック事件を観ると、まるっきり見方が変わるだろう。銃弾を放った伊吹の手が震えていたのも、燃え盛るバスの炎を呆然と見つめていたのも、志半ばで別れた仲間が亡くなってしまったことに対する悲しみから来るものだったのかもしれない。
武蔵と大和との共闘に期待
前回の記事では占拠シリーズの様式美を絶賛したが、ここに来てかつての敵が仲間になる(なりそう)という良い意味で様式美に反した新たな展開が期待できる。いや、大和が亡くなってしまう可能性もかなり高いのだが……。
今後も続くであろう占拠シリーズにおいて、大和耕一と武蔵三郎は永遠のライバル関係であって欲しい。シリーズによっては共闘、ある時は敵対……。を繰り返す、そんな2人の戦いをずっと見ていたい。
そして度重なる占拠シリーズでトライアンドエラーを繰り返したもの同士、2人が組めば“最強の占拠”が実現可能なはずなので、あまりにも身内に恵まれない武蔵が自暴自棄になって占拠の首謀者になり、大和と共に過去一大きな施設を占拠する側の“武蔵のifストーリー”も観てみたい。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『放送局占拠』( 毎週土曜夜10時~)
出演:櫻井翔、比嘉愛未、加藤清史郎、曽田陵介、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、齊藤なぎさ、ソニン、高橋克典、片岡礼子、福澤朗、戸次重幸、菊池風磨 他
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
脚本:福田哲平
演出:大谷太郎、茂山佳則(AX-ON)、西村了(AX-ON)
音楽: ゲイリー芦屋
主題歌:Snow Man「W」
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
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