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純喫茶図解

2025.05.18 公開 ポスト

担当編集の取材レポート!家族の温かさが滲む 西荻窪【それいゆ】塩谷歩波

『銭湯図解』でおなじみの画家・塩谷歩波さんが建築の図法で描く『純喫茶図解』。約1年間の連載を経て、大型店舗5軒の描き下ろしを加え、書籍になりました! その発売を記念して、担当編集の目線から取材の裏側をお届けします。

*   *   *

取材2店舗目は、西荻窪の「それいゆ」。

こちらのそれいゆさんは、私もプライベートで訪れたことがあるお店。そして、まだ『純喫茶図解』がスタートする前に、塩谷さんと初々しい(?)打合せをした場所でもあります。塩谷さんの粋な計らいで、図解のなかに打合せする私たちが描かれています。

そんな思い出深いお店に取材できる日がくるなんて……。感慨深い気持ちに浸りながら、お店を訪れたのは6月の雨の日のこと。

まだシャッターの閉まったお店の前でしばらく佇んでいると、ママチャリに乗った店主の廣田さんが颯爽と現れました。かごには大きなシフォンケーキを積んでいて、豪快にシャッターを引き上げて店内に招き入れてくれました。その登場シーンがなぜだか強烈に印象に残っています。(廣田さんはその後、お人柄もユニークで素敵であることが判明)

店内に入るや否や、さっそく実測を始める塩谷さん。 入り口付近のショーケースには美しいケーキが並んでいます。

実測する塩谷さんと、テーブルを整える廣田さん。
両サイドには、4本のサイフォンが存在感を放ちます

お花のランプやバラ柄の床など、 どこかロマンチックで温かみのある店内。棚にある文庫本や絵本などは、自宅に置ききれなかった本を持ち出したのが始まりなのだとか。

店内を印象づけるロマンティックな床模様

取材中とくに印象に残っているのが、キッチン前に貼られていた「お小さい人達用」 という袋。聞くと、小さなお子さんが来店した際にシールをプレゼントすることがあると言います。そんな細やかな心遣いに、こちらまでほっこりしていまいます。

そして、店名の「それいゆ」は、昭和を代表する画家でデザイナーの中原淳一さんが創刊した雑誌のタイトルから由来しています。廣田さんのお母様が「それいゆ」の愛読者だったそう。何を隠そう、私も昔から中原淳一の大ファンで、前職では本も作ってしまったほど。

1952年の「それいゆ」(担当編集私物)

ひと通り廣田さんのお話を伺った後、いただいたのは創業時からあるというパンプキンパイ。優しい甘さで、かぼちゃの味がしっかり感じられます。ほかにもキャロットケーキやチーズケーキなど、日替わりでさまざまな手づくりケーキが楽しめます。家の近くにあったら通うだろうなぁ。

連載時の記事にもありますが、それいゆは家族で大切に紡がれてきた純喫茶。店内のインテリアやメニューの一つ一つに、その思いが感じられて温かな気持ちに浸れます。私もまた足を運んで、温泉に浸かるようにゆるりと心をほぐしたいと思います。

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純喫茶図解

深紅のソファに煌めくシャンデリア、シェードランプから零れる柔らかな光……。コーヒー1杯およそワンコインで、都会の喧騒を忘れられる純喫茶。好きな本を片手にほっと一息つく瞬間は、なんでもない日常を特別なものにしてくれます。

都心には、建築やインテリア、メニューの隅々にまで店主のこだわりが詰まった魅力あふれる純喫茶がひしめき合っています。

そんな純喫茶の魅力を、『銭湯図解』でおなじみの画家、塩谷歩波さんが建築の図法で描くこの連載。実際に足を運んで食べたメニューや店主へのインタビューなど、写真と共にお届けします。塩谷さんの緻密で温かい絵に思いを巡らせながら、純喫茶に足を運んでみませんか?

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塩谷歩波

1990年、東京都生まれ。2015年、早稲田大学大学院(建築専攻)修了。設計事務所、高円寺の銭湯・小杉湯を経て、画家として活動。

建築図法”アイソメトリック”と透明水彩で銭湯を表現した「銭湯図解」シリーズをSNSで発表、それをまとめた書籍を中央公論新社より発刊。

レストラン、ギャラリー、茶室など、銭湯にとどまらず幅広い建物の図解を制作。

TBS「情熱大陸」、NHK「人生デザイン U-29」数多くのメディアに取り上げられている。

2022年には半生をモデルとしたドラマ「湯あがりスケッチ」が放送された。

著書は「銭湯図解」「湯あがりみたいに、ホッとして」

好きなお風呂の温度は43度。

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