
車の窓を開けて風を迎え入れる。この道を自転車で何度通ってきただろうか。寝坊して髪を乾かす暇もなく、ペダルをこいていると、風で髪は乾いていく。そうか、blue hourの一節はこの道で生まれたのだ。その頃のイーグルは自転車の後ろに荷台をつけてマーシャルアンプを自転車で運んでいた。カーブを曲がりきれず飛んでいくアンプ。「先言っといてや。」体くらいある大きなアンプを荷台に乗せ直すのを待たずに追い越していく風。その尻尾が揺れるのを追いかけるようにわたしたちの車は進んでいた。
47集炎ツアーの初日、難波ベアーズにつき階段を降りると懐かしさがなだれ込んでくる。この地で下山で初ライブをした。下山は今回の人生では最初のバンドなので、わたしにとって本当に初めてのライブハウスだった。近年のライブでは八年前にVoyage Kidsの周年パーティでKID FRESINOとツーマンをやって以来だった。FRESINOを見にきたギャルがここにいた痕跡を残そうとインスタ用に何度も撮影するが店内は暗くほとんど何も映らないことに文句言ってる後頭部越しにライブを見ていた記憶がある。難波ベアーズには照明は三パターンしかない。白と赤、そしてそのスイッチを左右に手動で動かすストロボだ。この環境下でギャルが満足いく写真を撮ることはiPhoneがいかに進化したとはいえど難しい。
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*マヒトゥ・ザ・ピーポー連載『眩しがりやが見た光』バックナンバー(2018年~2019年)