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もう怒らないレッスン

2023.05.07 公開 ツイート

こまめに怒れば、大爆発しない 和田秀樹

世の中の「怒りの種」は、探そうと思えば尽きることがありません。怒りとの付き合い方を間違えると、体調を悪くしたり、心を病んでしまうことも。怒りの上手なコントロール法をまとめた『もう怒らないレッスン』(和田秀樹著、幻冬舎文庫)から、また始まる忙しない日々のなかでもご機嫌に過ごせるためのメソッドをご紹介します。

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私自身、もともとの性格はけっこう短気なほうです。今でも、社会の矛盾に対しては「これでいいのか!」と感じることが少なくありません。

「このままでは、世の中はどんどんと悪くなっていく」「こんなこと許していていいのか!」なんて、思うこともしばしば。それは別の本で書くとして、とにかく、人は怒りを感じるようにできているのです。しかし最近は、私は怒りで人を傷つけることはなくなりました。怒りで体調を崩したこともありません。いたって、健康的です。

そのコツのひとつは「小出し」です。日ごろから適度に、そして上手に怒っているからだと思っています。ポイントは3秒だけ怒ること。ダラダラと長く怒り続けていると、不快な気持ちが持続してしまいます。サッと怒って、後くされなくしたいもの。

(写真:iStock.com/Goroda)

部屋の掃除にたとえるといいかもしれません。

毎日、こまめに掃除をしておけば、ゴミもあまりたまりません。来客があるときや、年末などに、慌てて大掃除をすることもありません。

怒りも同じで、日々、とにかく小出しにしていくことです。心にも許容量がありますから、放っておくと、あるとき怒りの大洪水が起こったりします。誰かに暴言を吐いたり、ひどいときには暴力を振るうことにもなってしまいます。怒りが内側に向くと、体調を崩したり、精神状態に問題が生じたりすることもあります。

皮肉や嫌味も立派な怒りの表現

もうひとつのコツがあります。それは言葉選びと表現方法です。

「へえ、そういう考え方もあるんですね」

「なるほど。でも、ちょっと賛成できないね」

どう考えても相手に同意できないときには、そんな言葉を選んで怒りを出すのもいいでしょう。イラついていることを言外に伝えることもできます。

皮肉や嫌味でもいいでしょう。これも立派な表現方法です。

「ユニークでシンプルに考えるんだね。忙しそうだから、他人の感情なんか考えているヒマなんかないよね。じつにうらやましいね」

「やさしく教えてくれてありがとう。勉強になったよ。ところで、『釈迦(しゃか)に説法』という言葉、知っているよね」

相手の的外れな言葉には、そんな言い回しでもいいでしょう。ほんのちょっぴりスパイスを効かせた言葉で対応してもいいでしょう。

ただし、怒りの小出しの際には、ちょっとがんばって、怒りの表情は抑えること。これが効果的です。怒りの表情では、せっかくの小出しや皮肉、嫌味も逆に相手の怒りを買うことにもなりかねません。冷静になれば、「もっと効く言葉」が浮かんでくるかもしれませんよ。効果的に自分が怒りを感じたということを、発信していくことです。

怒りを文字化すれば、冷静になれる

私は、怒りを文章を書くことによって解消しています。

文章のいいところは、感情に振り回されることが少ないことです。口先だけの言葉なら、「このやろう!」「バカやろう!」と叫んでしまえば、それで怒りを表現できます。けれども文章となると、読んだ人に理解してもらうために、そのときのシチュエーション、自分の感情、主張を冷静に再現しなければなりません。

つまり、文字化するには冷静さや論理性が求められます。その作業の中では、怒りの感情はいったん脇におかなければ、他人に伝える文章は書けません。

「彼の口から発せられる言葉に知性のひとかけらも感じられない。相手の感情への想像力がない。ただただ湧いてきた言葉を垂れ流すばかり。私の脳は、ぴくぴくと痙攣(けいれん)しはじめる……」

これは極端な例ですが、たとえば、「このやろう、このバカ」を、こうやって冷静に表現してみる。人は誰でも、文章を書いていると、「何なのだろう、この怒りは?」と、自分の感情を分析しはじめます。分析しているうちに、怒りの種を冷静に見つめることになります。もはや「生まれたての怒り」ではなくなってしまいます。

そんな方法で、小出しに言葉にしたり、文章にしたりしていけば、あなたも怒りの処理の達人になれます。

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もう怒らないレッスン

ためない。爆発しない。翻弄されない。怒りをコントロールできる大人になる24のメソッド。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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