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もう怒らないレッスン

2023.05.01 公開 ツイート

待つ時間を「自分時間」にすればイライラしない 和田秀樹

世の中の「怒りの種」は、探そうと思えば尽きることがありません。怒りとの付き合い方を間違えると、体調を悪くしたり、心を病んでしまうことも。怒りの上手なコントロール法をまとめた『もう怒らないレッスン』(和田秀樹著、幻冬舎文庫)から、この連休中にもなるべくご機嫌に過ごせるためのメソッドをいくつかご紹介します。

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「待つ」も「待たせる」もイライラの種

最近は、待ち合わせのときの緊張感がなくなりました。携帯電話の普及がそうさせたのかもしれません。私も若いころは、約束の時間に相手の姿が見えないと、「時間を間違ったかな」「場所が違ったかな」と不安になったものです。キョロキョロしたり時計を何度も見たりして、無事に会えるまで落ち着かない時間を過ごしました。

約束の時間に大幅に遅れそうになると、連絡が取れませんから、気が気ではありません。電車の中でも、走り出してしまいたいと思うほどでした。

携帯電話全盛の現代は、ちょっと遅れても電話をすればいいやと、軽く考えてしまう人も多くなってきています。

そんな風潮からかどうかはわかりませんが、仕事でも遊びでも、相手を待たせても平気でいるという迷惑な人がいます。約束の時間に10分、20分遅れるのは当たり前。やっと来たと思ったら、「どうも」のひと言ですませてしまう。

でも、どうせ遅れるだろうと思って、こちらが遅く行ったときにかぎって、時間通りに来ていたりする。そして、時計を見ながら、「10分待ちましたよ」。そんなことを言われたら、やっぱり怒りが込み上げてきますよね。

待ち時間は「ムダ時間」ですか?

私は、誰かと待ち合わせをするときには、早めに待ち合わせ場所へ行って、本を読みながら待っています。そうすれば、待つことがそれほど苦になりません。

その本が面白ければ、もっと先まで読みたくて、退屈な(失礼)その後の打ち合わせよりはずっと充実した時間が過ごせます。遅れてもらったほうがありがたいという気分にもなるのです。待ち時間は「ムダ時間」ではないのです。

(写真:iStock.com/Valeriy_G)

ですから、怒りも湧いてきません。遅れてくれればもう少し先まで本が読めたのにと、逆のことで怒りたくなったりします。いずれにしても、時計を見ながらイライラしているのは、それこそもったいない時間です。本でなくてもいいでしょう。仕事の資料をチェックしても、知り合いにメールを送っても、ネットで興味あることを調べても、いくらでも時間をうまく利用する方法はあります。

ものは考えようです。待つ時間は一人でいられる貴重な時間と考えてみてはどうでしょうか。たとえ5分10分であっても、それは自分の時間です。自由に使うことができます。待ち合わせに遅れてくる人は、そんな時間をプレゼントしてくれる人です。そんなありがたいことを、怒りに変えてしまうのは、本当にもったいないし、愚かなことと思えばいいでしょう。

たとえば、私は国内、海外を問わず、出張の移動時間をとても大切にしています。有能かつ多忙なビジネスマンはそれができる人だと思います。

待たされることで「貸し」が生まれる

とはいえ、人を待たせること自体は決して褒められることではありません。人を待たせて平気だという人も、どこかで「しまった」「またやってしまった」という気持ちがあるはずです。だからこそ、平静を装っているということも考えられます。どんな人でも、人を待たせれば相手に対して負い目を感じているのです。逆にいえば、待てば相手よりも優位に立てるということです。

ビジネスで成功している人は、ほぼ例外なく、約束の時間に遅れません。つねに早めに行って待っていることを心がけています。そういう人にとっては、待つことも、ひとつの作戦かもしれません。人間関係において、待つのは「貸し」、待たせるというのは「借り」です。ですから、遅れたからと、怒りをぶつけたり、不愉快な表情を露わにせずに笑顔で「いいわよ」と、寛容さをアピールしましょう。

私は、日ごろから、待ち合わせには早めに行くことにしています。それは待たされるトレーニングにもなるからです。相手を待ちながら、どうしたらイライラせずにいられるか、あれこれ試すことができます。

「待ち時間」を「自分時間」にすることで、短気な私も我慢強くなりました。

決闘で待たされてイライラし、宮本武蔵に負けてしまった佐々木小次郎になってはいけません。

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もう怒らないレッスン

ためない。爆発しない。翻弄されない。怒りをコントロールできる大人になる24のメソッド。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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