幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
清水ミチコ『カニカマ人生論』
一方こちらは、人気タレント・清水ミチコさんのエッセイ。
岐阜県で自営業の実父と継母(この母親との愛情あふれる関係がとても素敵)に育てられ、やがてテレビ等で活躍するまでがつづられている。
今の活躍ぶりからは想像できないが、子どものころの著者は、小学校に入ってもハキハキしている周囲の子たちに馴染めない……、高校受験もプレッシャーに負けて失敗。やがて東京に出てきて舞台やテレビに出るようになっても、誰かにちょっとダメ出しされては落ち込む日々。さらには、ある番組の収録の前日に、どうしてもネタが自分では面白いと思えず、プロデューサーに降板を直談判するような始末……。
書かれていることの8割(たぶん)は、失敗した経験や、自分がダメだったというエピソードばかり。でも、そんな失敗もすべて明るく笑えてしまうのが、本作の面白さであり、筆の巧みさである。
タイトルにあるカニカマとは、高級食材のカニのいわば「モノマネ」食品。「本物の『カニ』の持つ旨味こそありませんが、B級グルメだからこその味わいや、ちょっと情けないテイスト」なのだ。とにかくゆるく読めるのがいい。このエッセイ、読むほどに(噛みしめるほどに)その旨さがしみ出してくるのだ。
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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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